蜻蛉 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

蜻蛉のまとめです。

和歌

103. 橘のかをるあたりはほととぎす心してこそなくべかりけれ
      (匂宮)   おい薫!お前がやったんだろう!

104. ありと見て手にはとられず見ればまた行く方もしらず消えしかげろふ
      (薫)    はかない世、嘆く薫

名場面

106. また、かれも、なにがし一人をあひ頼む心もことになくてやありけむとは
      (p42 薫、匂宮にあてこすり)

107. 「いな、持たらじ、雫むつかし」とのたまふ、御声いとほのかに聞くも
      (p87  薫、女一の宮をかいま見)

[蜻蛉を終えてのブログ作成者の感想]

蜻蛉を終えました。いかが感じられましたか。浮舟の登場しないこの帖、私は薫、匂宮の様子を見て何だか空しい気持ちになりました。喪失感でしょうか。

薫も匂宮も互いに浮舟を京へ迎え入れようと躍起になっていた。その矢先に突如浮舟がいなくなってしまう。元気だった浮舟が病気で死ぬわけもなかろうに、一体何が起こったのか?二人とも狐につままれた気持ちだったことでしょう。当然事の真相を知るべく手立てを尽す。そして分かってきたのは二人に言い寄られ板挟みになって切羽詰まり宇治川に身を投げた、、、ということ。

浮舟入水を知って二人はどんな気持ちだったのでしょう。以下私の全くの推測です。
 薫、「それ程までに匂宮とデキていたのか! チクショーめ」
   →匂宮への怒りと浮舟への白け。浮舟に可哀そうなことをしたとの感情は余り感じられない。

 匂宮 「何故死んだ!薫のプレッシャーか。ケシカラン!もっと早く救い出しておくべきだった」
   →浮舟を死なせてしまった。すまないことをした、、、自責の念に駆られたことだろう。

そして四十九日が過ぎる。去る者は日々に疎し。二人とも浮舟のことは段々と忘れていく。人間いつまでも過去を引きずって生きてはいけない。浮舟への想いが薄れていくことは仕方なかろう。ただすぐ小宰相の君だの宮の方だのと言われるとちょっと待ってくれ!と言いたくなるし、ましてや女一の宮と同じコスチュームを女二の宮に着せて氷で戯れさせる、、、など見せられると「薫って男は人間としておちるのでは!」と思ってしまいます。

 ありと見て手にはとられず見ればまた行く方もしらず消えしかげろふ

 →はかない蜻蛉をこそ、しっかり捉え決して手離さず愛を貫いて欲しかった。

さていよいよ最終月に入ります。
 手習  14回(9/1-19) プラス 総括(9/22)
 夢浮橋  4回(9/24-29) プラス 総括(9/30)
の予定です。有終の美を飾るべく頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
   

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蜻蛉(21・22) 薫、宇治の姫たちを想う

p122-126
21.薫、宮の君を訪い、世間の無常を思う
 〈p222 宮の君は、女一の宮のおいでになるこの西の対に、〉

 ①宮の君は、この西の対にぞ御方したりける。
  →普通の女房の局よりはちょっとましな居場所でももらったのであろうか。

 ②親王の、昔心寄せたまひしものをと言ひなして、そなたへおはしぬ。
  →この時宮の君でももらっておけばよかったのに。

 ③並々の人めきて心地なのさまやとものうければ、
  →女房が宮の君に取り次がないのはよくない。
  →でもよく考えてみると宮の君も女房ではないのか。

 ④宮の君「松も昔の、とのみながめらるるにも、もとよりなどのたまふ筋は、まめやかに頼もしうこそは
  →薫に血筋のことを言われると宮の君も「そうだ、私だって、、」と思ったことだろう。
  →「松も昔の」百人一首No.34 藤原興風
    誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

 ⑤ただ今は、いかで、かばかりも、人に声聞かすべきものとならひたまひけんとなまうしろめたし
  →深窓の姫君なら直に声など聞かせはしない。女房になれば声も顔も人にさらすことになってしまう。哀れである。

22.薫、宇治のゆかりを想い、わが人生を詠嘆
 〈p224 「この方こそは、高貴な父宮が掌中の珠として大切に〉

 ①「これこそは、限りなき人のかしづき生ほしたてたまへる姫君、また、かばかりぞ多くはあるべき、、、」
  →宮の君も宇治の姫たちも父は皇子。
  →宮の君に対すると薫はどうしても宇治の姫たちとのことを想う。

  宮の君(父式部卿宮)=嫁きそびれて今は女一の宮の女房
  大君(父八の宮)=死亡 中の君=匂宮の第二夫人 浮舟=失踪

 ②何ごとにつけても、ただかの一つゆかりをぞ思ひ出でたまひける。
  →薫にとって宇治の姫たちは何であったのだろう。皆それぞれ愛おしく思い、自分のものにしようと考えたのだが結局は三人とも自分のものにすることができなかった。

 ③あやしうつらかりける契りどもを、つくづくと思ひつづけながめたまふ夕暮、蜻蛉のものはかなげに飛びちがふを、
  ありと見て手にはとられず見ればまた行く方もしらず消えしかげろふ
 代表歌
  →あるのかないのか、、はかない蜻蛉に因んだ素晴らしい歌ではないでしょうか。
  →薫の心情をよく言い表していると思います。

 ④あるかなきかの」と例の、独りごちたまふとかや。
  →強烈な終わり方ではないでしょうか。
  →源氏物語はこの巻で終わっていると考える説もあるようです。 
  
 ⑤余談 源氏物語に出てくる昆虫
  ・蛍=夏の象徴として随所に出てくる。勿論最有名なのは「蛍」の巻
  ・蝉=「常夏」「空蝉」
  ・蜩=「若菜下」「幻」「夕霧」「宿木」(鳴き声に特徴があったからか)
  ・蟋蟀(きりぎりす)=「夕顔」「総角」
  ・鈴虫、松虫=「桐壷」「賢木」「鈴虫」
  ・蜻蛉
  ・蝶=「胡蝶」

かくて蜻蛉は終わりいよいよ最終月、手習に移ります。

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蜻蛉(19・20) 薫の憂愁

[お知らせ]
 1.カテゴリー、月別アーカイブ、検索結果の記事の並び順が古い順番になりました。この方が初めから読めて分かり易いと思います。
 2.検索でコメントの記事も拾ってもらえるようになりました。単語一つ入れるとその単語が入った記事(投稿&コメント)を全てリストアップしてくれます。どうぞご活用ください。
  →万葉さん、いつもながらありがとうございます。

p117-122
19.薫、女房らへの感想につけ中の君をしのぶ
 〈p217 薫の君は東の高欄に寄りかかって、〉

 ①東の高蘭におしかかりて、夕影になるままに、花のひもとく御前の草むらを見わたしたまふ
  →脚注11 花のひもとく 花が開く、女性が下紐を解く。何とも色っぽい雰囲気である。
  →どうも薫は徒然に共寝の女房を求めて東の寝殿あたりをうろついているらしい。

 ②薫「中に就いて腸断ゆるは秋の天」
  →白氏文集 断腸の天=秋 薫の愁いはとどまらない。

 ③なほ、あやしのわざや、誰にかと、かりそめにもうち思ふ人に、やがてかくゆかしげなく聞こゆる名ざしよ
  →これは薫の嫉妬ではないか。別に名前を告げるくらいごく当たり前ではなかろうか。

 ④宮には、みな目馴れてのみおぼえたてまつるべかめるも口惜し。、、、
  →薫は匂宮のように奔放に振舞えない、嫉妬である。

 ⑤まことに心ばせあらむ人は、わが方にぞ寄るべきや、されど難いものかな、人の心は、
  →物事を分かる人(女)は自分を分かってくれる筈。。。これが独りよがり。

 ⑥対の御方の、かの御ありさまをば、ふさはしからぬものに思ひきこえて、いと便なき睦びになりゆく、、
  →これも薫の思い込みではなかろうか。中の君は匂宮を疎ましくは思っていないのでは。

20.薫、女一の宮を想いつつわが宿世を思う
 〈p219 それにしても薫の君が、〉

 ①例の、西の渡殿をありしにならひて、わざとおはしたるもあやし。
  →西の渡殿、先日女一の宮が氷と戯れるのを垣間見た所。

 ②薫「など、かくねたまし顔に掻き鳴らしたまふ
  中将のおもと「似るべき兄やははべるべき
  薫「まろこそ御母方のをぢなれ
  →唐の小説「遊仙窟」を引用した会話。どれほど有名な小説かは知りませんがとてもついて行けません!

 ③琴を鳴らし女房と戯れる薫。
  →中将のおもと、いい女ではないでしょうか。小宰相の君はいなかったのでしょうか。

 ④薫「わが母宮も劣りたまふべき人かは、后腹と聞こゆばかりの隔てこそあれ、、、、」
  →確かに女三の宮も帝が大切にした皇女である。だが、、、薫の実の父は、、、、。。。結局薫はこの出生の秘密に立ち戻らざるを得なかったのではなかろうか。

 ⑤わが宿世はいとやむごとなしかし、まして、並べて持ちたてまつらばと思ふぞいと難きや。
  →薫の自負と劣等感。
  →オレの宿世からいって女一の宮を持ててもいいのではないか、、、う~ん、でも無理だろうな。
  →そんなこと考えるだけ却って落ち込むのではなかろうか。

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蜻蛉(18) 六条院の秋、薫と女房たち

p110-116
18.六条院の秋 薫、女房らと戯れる
 〈p211 もう涼しくなったからと、明石の中宮は、〉

 ①六条院の秋、中宮が里下がりしてて春の町にいる。
  「秋の盛り、紅葉のころを見ざらんこそ」
  水に馴れ月をめでて御遊び絶えず、常よりもいまめしければ、この宮ぞ、かかる筋はいとこよなくもてはやしたまふ。

  池に舟を浮かべて楽を奏し月を愛でる。
  →第一部では必ず春秋の楽宴が描かれていたが宇治十帖ではさほど書かれていない。
  →匂宮は源氏の血を引いて音楽や和歌・漢詩も得意であろうに。
  →今や六条院の主として夕霧も夏の町にいるのに(六の君も)。

 ②かの侍従は、ものよりのぞきたてまつるに、いづ方にもいづ方にもよりて、めでたき御宿世見えたるさまにて、世にぞおはせましかし、、、、、
  →侍従も中宮に仕えて六条院に居る。匂宮と薫を見て浮舟を偲ぶ。

 ③薫と女房たちの戯言。
  薫「なにがしをぞ、女房は睦ましく思すべきや。女だにかく心やすくはあらじかし、」
  →薫もこんな冗談が言えるんだ。前々からなのか、近頃変わったのか?

 ④弁のおもととて馴れたる大人、「そも睦ましく思ひきこゆべきゆゑなき人の、恥ぢきこえはべらぬや。、、」
  →名にし負う中宮の局、色々な女房がいるのだろう。
  →物馴れている古参女房、源典侍を思い出す。

 ⑤薫「恥づべきゆゑあらじと思ひさだめたまひてけるこそ口惜しけれ」
  →薫も負けていない。さすがですなあ。

 ⑥薫 女郎花みだるう野辺にまじるともつゆのあだ名をわれにかけめや
  中将のおもと 花といへば名こそあだなれ女郎花なべての露に乱れやはする
  →女郎花を題材に古歌を引用したいわばお遊びであろうか。

 ⑦弁のおもと 旅寝してなほこころみよ女郎花さかりの色にうつりうつらず
  薫 宿かさばひと夜は寝なんおほかたの花にうつらぬ心なりとも
  →何とも露骨な挑発の歌である。紫式部も書いていて恥ずかしかったのではないか。
  →小宰相の君の所で中宮がコメントしていたが、薫にはこのようなあけすけな対応は似合わないであろうに。

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蜻蛉(17) 宮の君、女一の宮に出仕

p108-110
17.宮の君、女一の宮に出仕 匂宮、懸想する
 〈p208 この春お亡くなりになりました式部卿の宮の姫君に対して、〉 

 ①この春亡せたまひぬる式部卿宮の御むすめ
  「宮の君」として女一の宮の女房に入る。
  →式部卿は源氏の異母弟即ち八の宮と同じ
  →従って宮の君と浮舟(中の君も)は従姉妹
  →宮の君も父に死なれた没落皇族、浮舟と境遇が似ている。
   (但し浮舟は父八の宮に認知されていないが)

 ②姫宮の御具にて、いとこよなからぬ御ほどの人なれば、やむごとなく心ことにてさぶらひたまふ。限りあれば、宮の君などうち言ひて、裳ばかりひき懸けたまふぞ、いとあはれなりける。
  →東宮に入内する可能性も薫に嫁ぐ可能性もあった(或いは匂宮にも)。今や女房、気の毒である。

 ③兵部卿宮、、、、人ゆかしき御癖やまで、いつしかと御心かけたまひてけり。
  →匂宮が目をつけるのは当然だろう。ただ父が死んで後ろ楯のない今となっては内室としては迎えられない。召人がせいぜい。

 ④大将、もどかしきまでもあるわざかな、昨日今日といふばかり、春宮にやなど思し、我にも気色ばませたまひきかし、かくはかなき世の衰へを見るには、水の底に身を沈めても、もどかしからぬわざにこそ、、
  →この感慨、身分万能社会にあっては止むを得ない感慨であろうか。
  →生きていくことこそ尊い。現代はいい時代である。

 ⑤この宮、例の御心ならば、月ごろのほどに、いかなるすき事どもをし出でたまはまし、こよなくしづまりたまひて、人目にはすこし生ひなほりしたまふかなと見ゆるを、このごろぞ、また、宮の君に本性あらはれてかかづらひ歩きたまひける。
  うるさい母は六条院に里下がり。匂宮にとっては自由に振舞うチャンス。
  ところが浮舟のことで意気消沈してガールハントもしばしお休み。
  でも生来の癖は治る訳もなく宮の君の出現で色めきたっている。
  →匂宮のよからぬ癖が治ったらお終いでしょうよ。   
  
この段いきなりに「宮の君」と言われてもちょっと感情移入のしようがありませんね。

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蜻蛉(16) 匂宮と侍従

p105-108
16.匂宮、侍従と語らう 侍従中宮に出仕
 〈p206 心が穏やかで、いつでも態度の落ち着いた薫の君でさえ、〉

 ①薫から転じて匂宮の様子
  宮は、まして、慰めかねたまひつつ、かの形見に、飽かぬ悲しさをものたまひ出づべき人さへなきを、
  →あわれな浮舟のことを語り合う人もいない。
  →いっそ薫と心を割って語り合えばいいのに(そりゃあ無理か)。

 ②対の御方ばかりこそは、「あはれ」などのたまへど、深くも見馴れたまはざりけるうちつけの睦びなれば、いと深くしもいかでかはあらむ、、
  →その後中の君と親しく語らってるところが書かれていない。
  →中の君は浮舟の姉、浮舟を偲ぶには格好の話相手であろうに(いやちょっと微妙かな)。

 ③かしこにありし侍従をぞ、例の迎へさせたまひける。
  →「そうだ、あの侍従だ!」匂宮は目をつけた女性を忘れはしない。

 ④(宇治の様子)皆人どもは行き散りて、乳母とこの人二人なん、とりわきて思したりしも忘れがたくて、、
  →浮舟の失踪後宇治に残ったのは乳母・右近と侍従のみ。他は散り散りになった。
  →弁の尼もどこかへ行ってしまった。薫が面倒みている形跡もない。
  →乳母・右近ともこれで登場しない。

 ⑤二条院ではなく中宮の所に仕えたいという侍従
  匂宮「いとよかなり。さて人知れず思しつかはん
  →色好みの宮の本領発揮。侍従もまんざらではなかっただろう。

 ⑥いとやむごとなきものの姫君のみ多く参り集ひたる宮と人も言ふを、やうやう目とどめて見れど、なほ見たてまつりし人に似たるはなかりけりと思ひありく。
  →中宮の所には上流貴族の姫たちがひしめき合っていた。
  →そんな中、浮舟ならひけをとらない美貌であった。
   (匂宮が中宮の(或いは女一の宮)の女房にと考えたのも道理)  
  →今上帝の後宮はどうだったのだろう。中宮と麗景殿女御以外は出てこないのが不思議。

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蜻蛉(15) 薫、半生を回顧

[お知らせ]
式部さんの朗読、形式を新しくしてアップしてもらいました。これでiPadでもiPhoneでも聞けるようになりました。どうぞ試してみてください。
 →万葉さん、ありがとうございました。

p102-104
15.薫の女一の宮思慕と、わが半生の回顧
 〈p203 その後女一の宮のほうから、〉

 ①その後、姫宮の御方より、二の宮に御消息ありけり。御手などのいみじううつくしげなるを見るにもいとうれしく、、
  →中宮への訴えが功を奏し女一の宮から女二の宮に手紙が来る。
  →女一の宮の自筆の文を見て薫は嬉しかったことだろう。

 ②薫 荻の葉に露ふきむすぶ秋風も夕ぞわきて身にはしみける
  →久しぶりに歌が詠まれる。ただ薫の独唱、つぶやきである。
  →振り返ってみるとこの巻では季節の風景描写が殆どない(真夏に女一の宮が氷と戯れるシーンはあったが)。

 ③さやうなるつゆばかりの気色にても漏りたらば、いとわづらはしげなる世なれば、はかなきことも、えほのめかし出づまじ。
  →どう考えても薫が女一の宮に恋を仕掛けるなどあり得ない。
  →あり得ないことにあれこれ悩むのは無用というものである。

 ④もの思ひのはては、昔の人ものしたまはましかば、いかにもいかにも外ざまに心を分けましや、、、、
  薫は自分の半生を回顧する。
  ・何と言っても大君の死が大きい。
  ・女二の宮を得ても心は晴れない。
  ・中の君のことは未だに忘れなれない。
  ・自分のプレッシャーもあってか浮舟を死なせてしまった。

  →薫の思考回路では物事を前向きにいい方に向かって進めることができないのでは。
  →大君には気の毒なことをした。でも女二の宮を得て救われた。中の君も匂宮と幸せになってくれている。。。。そんな考えでおれば浮舟を失うこともなかったのでは。

 ⑤重りかなる方ならで、ただ心やすくらうたき語らひ人にてあらせむと思ひしには、いとらうたかりし人を。
  →薫が浮舟を召人、愛人として扱おうと考えていたこと自体は理解できる。
  →ただ世間体だの表の世界だのを気にしすぎて自縄自縛、結局浮舟をも失うことになってしまった。

薫が内面を披露すればするほど読んでいる方は、「キミ、もうちょっとなんとかならんのかね」と言いたくなります。 

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蜻蛉(14) 中宮、浮舟の入水を聞く

p98-102
14.中宮、浮舟入水の真相を聞き驚愕する
 〈p200 女一の宮は、中宮の御殿のほうにおいでになりました。〉

 ①姫宮は、あなたに渡らせたまひにけり。
  →女一の宮は中宮の所に居る。薫は空振りである。

 ②中宮「まめ人の、さすがに人に心とどめて物語するこそ、心地おくれたらむ人は苦しけれ。心のほども見ゆらんかし。小宰相などはいとうすろやすし」
  →中宮も小宰相を絶賛する。よほどできた女房だったのだろう。

 ③大納言の君「、、、宮をこそ、いと情なくおはしますと思ひて御答へをだに聞こえずはべるめれ。かたじけなきこと」
  →小宰相は匂宮をも相手にしない。「えっ、そんなのあり!」って感じですが。

 ④大納言の君が中宮に宇治の浮舟の一件を事細やかにご注進する。
  、、、その女君に、宮こそ、いと忍びておはしましけれ。、、、、宮も、いと忍びておはしましながら、え入らせたまはず、あやしきさまに御馬ながら立たせたまひつぞ、帰らせたまひける。女も宮を思ひきこえさせけるにや、にはかに消え失せにけるを、身を投げたるなめりとて、、

  →一部始終が全て語られている。中宮はびっくりしたことだろう。
  →可愛い匂宮のスキャンダル、その相手が入水自殺。
  →普通噂話は尾ひれがついたりウソが混じったりするものだがここでは物語に忠実に語られている。
  
 ⑤大納言の君「、、、かしこにはべりける下童の、ただこのごろ、宰相が里に出でまうできて、たしかなるやうにこそ言ひはべりけれ、、」
  →右近、侍従がひた隠しにしていたのが実は下々の者まで知っていた。
  →「浮舟が匂宮に心をかけていた」ことまで噂として広がっていた。
  →これでは薫の立場はないであろうに。

 ⑥中宮「さらに、かかること、また、まねぶなと言はせよ。かかる筋に、御身をももてそこなひ、人に軽く心づきなきものに思はれたまふべきなめり
  →中宮が口止めしてももう遅かろう。
  →大納言が語った事実は都で広く噂として囁かれていたと考えるべきであろうか。

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蜻蛉(13) 薫、女一の宮に想いをかける

p94-98
13.薫、女一の宮を慕い中宮のもとにまいる
 〈p197 その日は一日中女宮のお側でお過しになり、〉

 ①舞台は三条宮から転じて内裏、明石の中宮の所。
  →女二の宮には飽き足らない薫、中宮への伺候を口実に女一の宮に近づきたいとの気持ちであろうか。

 ②女の御身なりのめでたかりしにも劣らず、白くきよらにて、なほありしよりは面痩せたまへる、いと見るかひあり。
  →匂宮の様子。姉に劣らぬ美しさ。
  →女一の宮&匂宮、帝直系皇族の素晴らしさがこれでもかと描写されている。

 ③まづ恋しきを、いとあるまじきこととしづむるぞ、ただなりしよりは苦しき。
  →女一の宮をなまじ見てしまったが故の心の炎上。
  →あの時の柏木に似てますなあ。

 ④薫は女二の宮のことを中宮に訴える。
  薫「この里にものしたまふ皇女の、雲の上離れて思ひ屈したまへるこそ、いとほしう見たまふれ。、、」
  →宮中の女一の宮と薫に嫁ぎ三条宮にいる女二の宮、今や雲の上と下。

 ⑤薫と中宮の会話。女二の宮に冷たいじゃないですかと訴える薫に中宮はそんなことありませんよと否定する。
  →薫と中宮、女一の宮、女二の宮の血縁関係をつかんでおくことが大事
  →薫と中宮は姉弟、従って女一の宮は薫の姪。この三人は血が繋がっている(表向き)
  →女二の宮は中宮にとってはライバルだった麗景殿女御の娘。継母子関係である。
  →薫が女二の宮のことを卑下して中宮に語るのは中宮にとっても心地よかろう。

 ⑥、、、、、」と啓したまふを、すきばみたる気色あるかとは、思しかけざりけり。
  →そりゃあそうでしょう。柏木が源氏に嫁いだ女三の宮に想いをかけるのとは相手が全く違います。

 ⑦立ち出でて、一夜の心さしの人に逢はん、ありし渡殿も慰めに見むかしと思して、御前を歩み渡りて、西ざまにおはするを、、
  →小宰相の君に逢おうとは自分自身への口実でひょっとするとまた女一の宮を垣間見るチャンスがあるかも、、、と思ったのだろうか。

 ⑧渡殿の方は、左の大殿の君たちなどゐて、
  →改めて言うことでもないが夕霧の官職が右大臣か左大臣か混乱している。なぜこんなに混乱しているのか源氏物語七不思議の一つではなかろうか。作者は混乱などしてる筈なくその後の伝わり方の問題と思うのだが。
  
本段、薫が女一の宮にあらぬ思いをかける。こういう異常をはっきり書くところが紫式部のすごい所であります。 

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蜻蛉(12) 薫、女二の宮に飽き足らず

p90-93
12.薫、女一の宮と女二の宮を比べて嘆く
 〈p194 その翌朝、御一緒に寝んでいらっしゃった女二の宮の〉

 ①@薫が正室女二の宮と住んでいる三条宮
  
 ②つとめて、起きたまへる女宮の御容貌いとをかしげなめるは、これよりかならずまさるべきことかは、と見えながら、さらに似たまはずこそありけれ、、
  →女の優劣は全て身分で決まる。同じ姉妹であるが母の出自は女一の宮の方が勝る(何せ明石の中宮である)。
  →見る目でなく感じる心が優劣を決める。

 ③薫「いと暑しや。これより薄き御衣奉れ。女は例ならぬもの着たるこそ、時々につけてをかしけれ」
  →おしゃれ、ファッションとはそう言うことであろう。でもこの場合薫の心は薄汚い。
  →女二の宮に昨日の女一の宮と同じ恰好をさせようとする。やや変態趣味ではないか。

 ④手づから着せたてまつりたまふ。御袴も昨日の同じく紅なり。御髪の多さ、裾などは劣りたまはねど、なほさまざまなるにや、似るべくもあらず。
  →白い薄物に紅の袴。鮮やかである。どうせならお付の女房に黄色の生絹を着せればよかったのに。
  →「似るべくにもあらず」そんなこと初めから分かってたろうに。

 ⑤薫「一品の宮に、御文は奉りたまふや
  →姉妹の間柄、気兼ねなく消息し合えばよかろう。その通りなのだが薫の真意は別の所にある。
  
 ⑥本段末の薫と女二の宮の会話。 
  →薫には女二の宮への愛情が全く感じられない。
  →薫にとって女二の宮は落葉の宮であろうか。

   正室女二の宮を落葉の宮として貶め女三の宮に憧れる柏木
   正室女二の宮には心を通わせず女一の宮に憧れる薫

  因果は廻るということだろうか。
  浮舟の話をここで終えて、薫が女一の宮に絡んでいく、、、なんてストーリーも構想としてはあったのかも知れない。

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