蜻蛉(15) 薫、半生を回顧

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 →万葉さん、ありがとうございました。

p102-104
15.薫の女一の宮思慕と、わが半生の回顧
 〈p203 その後女一の宮のほうから、〉

 ①その後、姫宮の御方より、二の宮に御消息ありけり。御手などのいみじううつくしげなるを見るにもいとうれしく、、
  →中宮への訴えが功を奏し女一の宮から女二の宮に手紙が来る。
  →女一の宮の自筆の文を見て薫は嬉しかったことだろう。

 ②薫 荻の葉に露ふきむすぶ秋風も夕ぞわきて身にはしみける
  →久しぶりに歌が詠まれる。ただ薫の独唱、つぶやきである。
  →振り返ってみるとこの巻では季節の風景描写が殆どない(真夏に女一の宮が氷と戯れるシーンはあったが)。

 ③さやうなるつゆばかりの気色にても漏りたらば、いとわづらはしげなる世なれば、はかなきことも、えほのめかし出づまじ。
  →どう考えても薫が女一の宮に恋を仕掛けるなどあり得ない。
  →あり得ないことにあれこれ悩むのは無用というものである。

 ④もの思ひのはては、昔の人ものしたまはましかば、いかにもいかにも外ざまに心を分けましや、、、、
  薫は自分の半生を回顧する。
  ・何と言っても大君の死が大きい。
  ・女二の宮を得ても心は晴れない。
  ・中の君のことは未だに忘れなれない。
  ・自分のプレッシャーもあってか浮舟を死なせてしまった。

  →薫の思考回路では物事を前向きにいい方に向かって進めることができないのでは。
  →大君には気の毒なことをした。でも女二の宮を得て救われた。中の君も匂宮と幸せになってくれている。。。。そんな考えでおれば浮舟を失うこともなかったのでは。

 ⑤重りかなる方ならで、ただ心やすくらうたき語らひ人にてあらせむと思ひしには、いとらうたかりし人を。
  →薫が浮舟を召人、愛人として扱おうと考えていたこと自体は理解できる。
  →ただ世間体だの表の世界だのを気にしすぎて自縄自縛、結局浮舟をも失うことになってしまった。

薫が内面を披露すればするほど読んでいる方は、「キミ、もうちょっとなんとかならんのかね」と言いたくなります。 

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2 Responses to 蜻蛉(15) 薫、半生を回顧

  1. 青玉 のコメント:

    女二の宮のせいにして女一の宮からの手紙を催促したような形で手紙が来る。
    それを見て密かに喜ぶ薫は何だか気持ちの悪い男です。
    現状に満足できず手の届きそうもない相手に懸想してあれやこれや悩む薫。
    自ら悩みを作っているような感じがします。

    ここで思うのは浮舟の死を覚悟してまでの決意は一体何だったのでしょう。
    二人の男に翻弄されて犠牲になったとしか思えません。

    もううんざり、本当に「キミ、もうちょっとなんとかならんのかね」と言いたいですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。
      ご指摘いただいた浮舟の死の決意について考えてみました。

      薫、匂宮にとって浮舟は何だったのでしょう。

      薫にとっては所詮は愛人。薫の表の世界のストレスを癒してくれる慰み者という位置づけでしょう。匂宮は薫よりは情熱を持って愛してくれるかも知れないが、どこか隠れ家に隠されて時々ひっそり通ってくるのを待つ日陰者ということでしょうか。冷静に考えればその内(心ならずもかも知れないが)捨てられるのでしょう。
       →こう考えると空蝉・末摘花・花散里を最後まで面倒みた源氏は聖人であります。

      何れにせよ薫・匂宮二人とも浮舟を命をかけて愛してくれ守ってくれる男たちではないでしょう。そんな二人の板挟みにあって浮舟は自ら命を絶とうとした。そんな必要あったのか。死ぬことはなかったでしょう。成り行きに任せ成るようにしたたかに生きる、そんな生き方もあったのでは、、、、う~ん、浮舟の性格からはできなかったのでしょうね。
       →逆にそんなしたたかな心の持ち主なら薫も匂宮も心を動かされることはなかったでしょうから。

      歯切れが悪いコメントになりましたがおっしゃる通り「二人の男に翻弄されて犠牲になった」浮舟が可哀そうであります。

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