p108-110
17.宮の君、女一の宮に出仕 匂宮、懸想する
〈p208 この春お亡くなりになりました式部卿の宮の姫君に対して、〉
①この春亡せたまひぬる式部卿宮の御むすめ
「宮の君」として女一の宮の女房に入る。
→式部卿は源氏の異母弟即ち八の宮と同じ
→従って宮の君と浮舟(中の君も)は従姉妹
→宮の君も父に死なれた没落皇族、浮舟と境遇が似ている。
(但し浮舟は父八の宮に認知されていないが)
②姫宮の御具にて、いとこよなからぬ御ほどの人なれば、やむごとなく心ことにてさぶらひたまふ。限りあれば、宮の君などうち言ひて、裳ばかりひき懸けたまふぞ、いとあはれなりける。
→東宮に入内する可能性も薫に嫁ぐ可能性もあった(或いは匂宮にも)。今や女房、気の毒である。
③兵部卿宮、、、、人ゆかしき御癖やまで、いつしかと御心かけたまひてけり。
→匂宮が目をつけるのは当然だろう。ただ父が死んで後ろ楯のない今となっては内室としては迎えられない。召人がせいぜい。
④大将、もどかしきまでもあるわざかな、昨日今日といふばかり、春宮にやなど思し、我にも気色ばませたまひきかし、かくはかなき世の衰へを見るには、水の底に身を沈めても、もどかしからぬわざにこそ、、
→この感慨、身分万能社会にあっては止むを得ない感慨であろうか。
→生きていくことこそ尊い。現代はいい時代である。
⑤この宮、例の御心ならば、月ごろのほどに、いかなるすき事どもをし出でたまはまし、こよなくしづまりたまひて、人目にはすこし生ひなほりしたまふかなと見ゆるを、このごろぞ、また、宮の君に本性あらはれてかかづらひ歩きたまひける。
うるさい母は六条院に里下がり。匂宮にとっては自由に振舞うチャンス。
ところが浮舟のことで意気消沈してガールハントもしばしお休み。
でも生来の癖は治る訳もなく宮の君の出現で色めきたっている。
→匂宮のよからぬ癖が治ったらお終いでしょうよ。
この段いきなりに「宮の君」と言われてもちょっと感情移入のしようがありませんね。
新しい姫君が登場するたびに懸想する匂宮。
この癖は終生治らないでしょうね。
おっしゃる通りです。匂宮が宮たる所以です。
人間の運命は何処でどう変わるやら予想もつきません。
その運命を切り開きも修正もできるのが現代ですがこの時代ではそうはいかなかったでしょうね。
ましてや女性であればなおさらのことです。
宮の君も世が世なら、父宮が生きておられたなら又違った道もあったことでしょう。
ありがとうございます。
読者としては浮舟が失くなってこれからどう物語を展開してくれるのかとちょっと心配している矢先に突然新しく宮の君の登場。それに匂宮も薫も興味を示す。オイ、オイ! 浮舟のことはどうなってんの? という感じです。物語が終盤と分かっているのでさらりと行かせてもらいますが、連載物として読んでいた読者は戸惑ったのかも知れません。
宮の君の生母のことは語られていませんが式部卿宮の側室でもう亡くなっているんでしょうか。中宮の計らいで中流貴族馬頭に嫁ぐのをやめて女一の宮の女房として出仕した訳ですが、中流貴族の正室になって大事にしてもらって生きるという手もあったのかも知れませんね。
紫式部自身が女房仕え(宮仕え)を耐えがたいこと、嫌なこと、できればやりたくないことと考えていたというのが物語のあちこちでわかりますね。
後ろ盾を亡くした皇族の姫君のなんと多いことか・・ その姫が高貴な女房として出仕することを悲劇とばかりとらえるのはどうでしょうね。
教養があり人間的にも立派な姫たちは、環境の激変にも立ち向かって、いい仕事をしたのではないかと思います。
いつも後ろ向きで泣いて過ごしていたはずはありません。
高貴な姫ではありませんが、清少納言など女房仕えに誇りをもって楽しんで生き生きと過ごしたように思います。
紫式部、清少納言クラスの身分でも考え方はいろいろです。
高貴な姫君であっても、考え方ひとつで充実した人生が送れたのではないでしょうか。
ありがとうございます。
確かに後ろ楯をなくした皇族の姫君は多かったのでしょうね。おっしゃる通り求められた職場で前向きに仕事に取り組める人は自分を生かせるいい仕事ができたのでしょう。その意味でも姫たちをどう教育するのかが大事だったと思います。
思えば八の宮も娘たち(大君、中の君)に宇治を離れるなだの結婚するななど言わず、積極的に生きる力を植え付けるべきだったかも知れません。
→それができれば苦労はないでしょうが。
一方紫式部や清少納言のような受領階級の娘にとっては宮中や上流貴族の女房になって手腕を発揮するのは女としての立身出世であり親にも本人にも喜びだったのでしょう。(その中でも清少納言や和泉式部は積極派だったが紫式部は消極派だったということですかね)