蜻蛉(18) 六条院の秋、薫と女房たち

p110-116
18.六条院の秋 薫、女房らと戯れる
 〈p211 もう涼しくなったからと、明石の中宮は、〉

 ①六条院の秋、中宮が里下がりしてて春の町にいる。
  「秋の盛り、紅葉のころを見ざらんこそ」
  水に馴れ月をめでて御遊び絶えず、常よりもいまめしければ、この宮ぞ、かかる筋はいとこよなくもてはやしたまふ。

  池に舟を浮かべて楽を奏し月を愛でる。
  →第一部では必ず春秋の楽宴が描かれていたが宇治十帖ではさほど書かれていない。
  →匂宮は源氏の血を引いて音楽や和歌・漢詩も得意であろうに。
  →今や六条院の主として夕霧も夏の町にいるのに(六の君も)。

 ②かの侍従は、ものよりのぞきたてまつるに、いづ方にもいづ方にもよりて、めでたき御宿世見えたるさまにて、世にぞおはせましかし、、、、、
  →侍従も中宮に仕えて六条院に居る。匂宮と薫を見て浮舟を偲ぶ。

 ③薫と女房たちの戯言。
  薫「なにがしをぞ、女房は睦ましく思すべきや。女だにかく心やすくはあらじかし、」
  →薫もこんな冗談が言えるんだ。前々からなのか、近頃変わったのか?

 ④弁のおもととて馴れたる大人、「そも睦ましく思ひきこゆべきゆゑなき人の、恥ぢきこえはべらぬや。、、」
  →名にし負う中宮の局、色々な女房がいるのだろう。
  →物馴れている古参女房、源典侍を思い出す。

 ⑤薫「恥づべきゆゑあらじと思ひさだめたまひてけるこそ口惜しけれ」
  →薫も負けていない。さすがですなあ。

 ⑥薫 女郎花みだるう野辺にまじるともつゆのあだ名をわれにかけめや
  中将のおもと 花といへば名こそあだなれ女郎花なべての露に乱れやはする
  →女郎花を題材に古歌を引用したいわばお遊びであろうか。

 ⑦弁のおもと 旅寝してなほこころみよ女郎花さかりの色にうつりうつらず
  薫 宿かさばひと夜は寝なんおほかたの花にうつらぬ心なりとも
  →何とも露骨な挑発の歌である。紫式部も書いていて恥ずかしかったのではないか。
  →小宰相の君の所で中宮がコメントしていたが、薫にはこのようなあけすけな対応は似合わないであろうに。

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2 Responses to 蜻蛉(18) 六条院の秋、薫と女房たち

  1. 青玉 のコメント:

    六条院の秋もさほどは源氏の頃の華やぎは感じられないですね。
    それでもこの場に浮舟がいたらと侍従の無念の気持ち、解らないでもありません。

    薫と女房たちの応酬、新たな薫の一面をみる思いです。

    女郎花みだるる野辺にまじるともつゆのあだ名をわれにかけめや
    花といへば名こそあだなれ女郎花なべての露に乱れやはする

    中将のおもとの返歌、なかなか見事なものですね。

    一方弁のおもとの挑発の和歌、古参の女房らしいですね。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      この年から遡ると源氏が六条院を完成させ暮に女君たちに正月用の晴着を配った(衣配り)のは丁度40年前になります。築40年、六条院も少し古びて来ていたのかも知れません。六条院が舞台となる最後の場面です。

      女房たちとの和歌の応酬、多分に言葉のお遊びであり左程色めいた感じはしません。それでも気分が合えば「ご一緒する」こともあったのでしょうが。。小宰相の君に中将のおもと、弁のおもと、それに侍従もいる。華やかな局の様がよく分かります。

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