[お知らせ]
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→万葉さん、いつもながらありがとうございます。
p117-122
19.薫、女房らへの感想につけ中の君をしのぶ
〈p217 薫の君は東の高欄に寄りかかって、〉
①東の高蘭におしかかりて、夕影になるままに、花のひもとく御前の草むらを見わたしたまふ
→脚注11 花のひもとく 花が開く、女性が下紐を解く。何とも色っぽい雰囲気である。
→どうも薫は徒然に共寝の女房を求めて東の寝殿あたりをうろついているらしい。
②薫「中に就いて腸断ゆるは秋の天」
→白氏文集 断腸の天=秋 薫の愁いはとどまらない。
③なほ、あやしのわざや、誰にかと、かりそめにもうち思ふ人に、やがてかくゆかしげなく聞こゆる名ざしよ
→これは薫の嫉妬ではないか。別に名前を告げるくらいごく当たり前ではなかろうか。
④宮には、みな目馴れてのみおぼえたてまつるべかめるも口惜し。、、、
→薫は匂宮のように奔放に振舞えない、嫉妬である。
⑤まことに心ばせあらむ人は、わが方にぞ寄るべきや、されど難いものかな、人の心は、
→物事を分かる人(女)は自分を分かってくれる筈。。。これが独りよがり。
⑥対の御方の、かの御ありさまをば、ふさはしからぬものに思ひきこえて、いと便なき睦びになりゆく、、
→これも薫の思い込みではなかろうか。中の君は匂宮を疎ましくは思っていないのでは。
20.薫、女一の宮を想いつつわが宿世を思う
〈p219 それにしても薫の君が、〉
①例の、西の渡殿をありしにならひて、わざとおはしたるもあやし。
→西の渡殿、先日女一の宮が氷と戯れるのを垣間見た所。
②薫「など、かくねたまし顔に掻き鳴らしたまふ」
中将のおもと「似るべき兄やははべるべき」
薫「まろこそ御母方のをぢなれ」
→唐の小説「遊仙窟」を引用した会話。どれほど有名な小説かは知りませんがとてもついて行けません!
③琴を鳴らし女房と戯れる薫。
→中将のおもと、いい女ではないでしょうか。小宰相の君はいなかったのでしょうか。
④薫「わが母宮も劣りたまふべき人かは、后腹と聞こゆばかりの隔てこそあれ、、、、」
→確かに女三の宮も帝が大切にした皇女である。だが、、、薫の実の父は、、、、。。。結局薫はこの出生の秘密に立ち戻らざるを得なかったのではなかろうか。
⑤わが宿世はいとやむごとなしかし、まして、並べて持ちたてまつらばと思ふぞいと難きや。
→薫の自負と劣等感。
→オレの宿世からいって女一の宮を持ててもいいのではないか、、、う~ん、でも無理だろうな。
→そんなこと考えるだけ却って落ち込むのではなかろうか。
ここにきて薫の憂愁は病的にまで思えてきました。
心の内に秘めた強烈な自負心と陰湿な嫉妬心が複雑に入り混じっている姿があちこちに見えてきます。
私にはこのような男の複雑な心境はちょっと解りにくいです。
むしろ匂宮のあっけらかんとした陽性の人間の方が解りやすい。
中の君の本心も真に理解しているとは言えず勝手な思い込みに感じられますね。
そして女一の宮への思慕に苦悩する薫。
なんでこうも次々と欲望に悩み続けるのでしょう?
薫よ、際限なき欲望に苛まれずに謙虚に己を知りなさい!!
ありがとうございます。
全く薫の憂愁の物思いにお付き合いしているとこちらまでおかしくなってしまいそうですよね。
薫の心内が色々書かれていますが人の心を隅から隅まで書き尽くすということは難しいでしょうね。匂宮に嫉妬を感じたり、中の君への未練心を捨てきれなかったり、明石一族に対抗して女一の宮への妄想を抱いたり。そんな思いがふと薫の心をよぎるとしても不思議ではありません。
でもそれを作者の筆で書かれてしまうとそれが一人立ちして、読者は薫が四六時中憂愁の思いに沈んでしまっていると思ってしまう。実際には普段薫は普通に女房と冗談を言い合い、チャンスがあればいちゃついたりと自然に振舞っていたのではないでしょうか。でも時折ふと「ああ、オレは!」と考えてしまう。まあ人間としてさほど異常な男でもないんじゃないでしょうか。
→紫式部はこのように書けば読者は薫という男に拒否反応を起こすだろうと計算づくで、敢えて薫の心内の一部をフラッシュさせているのかも知れません。
と言う事は私も紫式部の巧妙な筆致に嵌められているのかも知れませんね。
薫とて普通に女性に恋する若者、大将という立場での日常もあるでしょうし四六時中憂愁にふけっている訳にもいかないでしょうね。
薫の深層心理は強い自負心と劣等感が表裏一体の関係にあるようですね。
そうですねぇ。薫にはユーモラスなところ、滑稽さを感じさせるところがありませんよね。いつも真面目で深刻で一途で、、、。ホッとする所がない。源氏や頭中には思わず吹き出してしまうような場面が多かったし、あの真面目な夕霧も雲居雁に手紙を取り上げられたり女二の宮を塗籠まで追っかけたり結構笑わせてくれました。そんな点でも読者は薫に共感を覚えにくいのでしょうかね。
→そしてそれも紫式部の仕掛けかも知れません。