末摘花(14・15・16) 事後の末摘花

p158 – 170
14.貧しい門番に同情 末摘花の鼻を連想する
 〈p50 御車を寄せてある中門がたいそうひどく歪んで倒れかかっていて、〉

 ①荒れた屋敷の佇まいはまさに葎の門。場所はよかったのだがあいにく居たのは想像していたような女性ではなかった。がっかりしつつ、でも源氏は末摘花を見離さない→エライ!

 ②鍵の預かり(門番の老人)とその娘・孫のリアルな光景。松と雪。常套の取り合せ。
  君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ(古今集・東歌)
     ↓
  契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪こさじとは(百人一首No.42 清原元輔)
15.末摘花の生活を援助、空蝉を思い出す
 〈p52 世間並みな、別に珍しくもない平凡な御器量なら、〉

 ①世の常なるほどの、ことなることなさならば、、、、
   →面白い表現、余程の基準はずれであると言ってるのですね。 
 
 ②空蝉が引合いに出される。不美人だったが品があった。それに比較してこの姫君は、、、。

16.歳暮、末摘花、源氏の元日の装束を贈る
 〈p53 その年も暮れました。〉

 ①大輔命婦の登場。この人狂言回しなので舞台が変わる毎に登場する。源氏とはいい仲なので冗談を言い合っている。末摘花とのコトも含め相当際どい冗談も飛び出したのであろう。

 ②末摘花の歌。
  からころも君が心のつらければたもとはかくぞそぼちつつのみ
   末摘花の歌は今後いくつも出てくるが都度紫式部は末摘花になりきってこういう歌をひねり出したのかと思うと滑稽であります。

   源氏のつぶやき なつかしき色ともなしに何にこのすゑつむ花を袖にふれけむ
    
    すゑつむ花=紅花が登場する。姫君の呼称はこの歌から。
    源氏の素直な感想だろうが、そりゃあないでしょうと思いますけどね。。。

 ③大輔命婦と源氏 & 宮中の女房との軽妙なやりとりが続く。
  この辺、古歌の知識がないとついて行けない。
  源氏はp142に続いてまたもうちうめきたまふ。うめく=ため息の絶えない源氏であります。

 ④この段、源氏が末摘花に贈った正月衣装のことが語られてますが、ここはさっぱり分かりません。ゴメンナサイ。

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末摘花(12・13) 雪の夜 ~ 朝 名場面です

さて好き嫌いはあるでしょうが物語中でも有名な滑稽場面です。

p148 – 158
12.雪の夜に訪れ、女房たちの貧しい姿を見る
 〈p43 あの藤壷の宮のゆかりの若紫の姫君を〉

 ①行幸も過ぎやや暇になった雪の夜、末摘花邸へ。
 ②今までの逢瀬では暗くて容貌が分からない。手さぐりでの反応は今イチだがひょっとしてすごい美人かもとの希望的観測から思い切って末摘花邸に侵入する。
 ③垣間見ている室内の侘しい描写が細やかである。女房の会話も哀れそのもの。

13.翌朝、末摘花の醜い姿を見て驚く
 〈p45 侍従は、賀茂の斎院にも御奉公している若女房でして、〉

 ①雪を舞台に持ってきたのがすばらしい。今まで何回か夜は過ごしたのだが明るくなる前に帰っていて、姫君の容貌を知らない。雪降る夜荒れ果てた屋敷でなにがしの院での夕顔との出来事を思い出しながら緊張気味に一夜を明かした早朝、その雪明りの中で、、、。

 ②まづ、居丈の高く、を背長にみえたまふに、さればよと胸つぶれぬ。うちつぎて、あなかたはと見ゆるものは鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物とおぼゆ。、、、、、、袿の裾にたまりて引かれたるほど、一尺ばかり余りたらむと見ゆ。

 ユーモア滑稽な表現と見るか、残酷無比な許しがたい表現と見るか。
 でも、これほどインパクトのある書き方ができるってすごいなあとつくづく思います。普賢菩薩の乗物が出てくるところが何とも言えない。「ハンニバルのアルプス越えの乗物とおぼゆ」だったら更に面白かったでしょうに(冗談です)。

 でもさすがに髪の毛だけは見事なものであった。寂聴さんも「それでも、紫式部は、この古風で、人を疑うことを知らぬ素直で誠実な姫君に、豊かで丈よりも長い見事な黒髪を与えることを忘れない」とこの点は評価しています。

 ③更にもの言ひさがなきやうなれどと断りながら、末摘花の流行遅れの服装を容赦なくこき下ろしている。でも、でも源氏は姫君にちゃんと礼をつくしている(うわべかも知れないが)。偉いなあと思います。

 ④ただ「むむ」とうち笑ひて、いと口重げなるもいとほしければ出でたまひぬ。
  う~~ん、「むむ」はないでしょうにねぇ。もう少しなんとかならなかったのでしょうか。

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末摘花(9・10・11) 源氏逡巡 後朝の文も夕方に

p142 – 148
9.源氏、二条院に帰り、頭中将と参内する
 〈p36 二条の院にお帰りになって、〉

 ①末摘花との不可思議な一夜を終え帰った源氏、さてどうしたものかと苦慮する。
 ②頭中が誘いに来てからかい宮中へ連れて行く(友達感覚の会話が楽しい)。
 ③朱雀院への行幸に備え公務が忙しい→公務のこともちょこちょこ出てくる。

10.源氏、後朝の文を夕刻に遣わす
 〈p38 常陸の宮の姫君には、せめて手紙だけでも〉

 ①きちんとした男女関係とするためには帰った直後に後朝の文を送り、三日間続けて通い三日夜の餅を食べてお祝いしなければならない。これが常識であってこれを破れば不実と非難された訳だが、源氏は後朝の文もようやく夕刻に届け、雨を口実に二日目は遠慮させてもらった。

   →全くのルール違反だが糾弾する女房もいない。大輔命婦も気をもむだけ。これじゃあどうしようもない。深窓の姫君たる末摘花の無知ぶりもさることながらお付きの女房たちがひどすぎる。

 ②段末 我はさりとも心長く見はててむ と源氏は見離さないよと考えてるのだが相手方には伝わっていない。 →読者はやきもきするってとこですかね。

11.行幸の準備に紛れて、源氏訪れを怠る
 〈p40 夜になって、左大臣が宮中を御退出なさるのに伴われて、〉

 ①朱雀院への行幸の準備の様子(次巻紅葉賀の巻への布石)

 ②大輔命婦がやってきて「お見限りはひどいじゃないですか、、、、」ってな風に源氏をそそのかす。二人の会話が面白い。

 ③この御いそぎのほど過ぐしてぞ、時々おはしける  
  この段末の一行は意味深。頻度はともかくけっこう末摘花邸を訪れ契りを交していたのです!姫君の応対ぶりは変わらなかったのでしょうかね。

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末摘花(7・8) 源氏、末摘花と ♡♡ 暗がりでよく分からず

p130 – 142
7.いらだつ源氏、命婦に手引きをうながす
 〈p25 いつのまにか秋になり、〉

 ①手紙を出しても返事が来ない。源氏の思い込みは益々膨らむ。
  (「恋は押さば引け引けば押せ」を一人でやっている)

 ②大輔命婦の苦し紛れの口上が源氏の想像を更に掻き立てる。

 ③かの御ゆるしなうともたばかれかし
  何が何でも手引きしろ、、、いやはやご無体なことを。。

 この段ややくどいなあと思います。

8.源氏、常陸宮邸を訪れ、末摘花邸に逢う 
 〈p28 八月の二十日余りのことでした。〉

 ①G18年8月 ちょうど夕顔が取り殺されてから1年後のこと

 ②末摘花邸の様子、大輔命婦の取り持ちの様子
  源氏の伝言として末摘花に伝える言葉「みづからことわりも聞こえ知らせむ」→これは露骨ですねぇ。

  末摘花の言葉「人にもの聞こえむやうも知らぬを」→これは深窓の姫君らしい言葉だと思います。

 ③源氏が歌を詠みかける。女房の侍従が代返する。源氏は末摘花からの返歌と思う。その後やりとりをしようとしても反応がない。

   何やかやとはかなきことなれど、をかしきさまにも、まめやかにものたまへど、何のかひなし 

 ④源氏は業を煮やして侵入する。大輔命婦は責任回避逃げ出してしまう。

 ⑤二十日の月は出ていたのだろうが部屋の中は暗闇、「う~ん、何だこれは、ちょっと違うなぁ」ってことでしょうか。
   うちうめかれて、夜深う出でたまひぬ  
  この一言で全てを言い表してますね。

 源氏はさぞ頭の中混乱して帰ったのではないでしょうか。
 
 この件も窯変はどう書いてあるのか知りたいですね。

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末摘花(4・5・6) 頭中との恋の鞘当て

p120 – 130
4.頭中将、源氏の後をつけ、おどし戯れる
 〈p18 寝殿のほうへ行けば、〉

 ①源氏の恋のライバル頭中の登場。この場面の作り方素晴らしいと思うのですがいかがでしょう。人間は一人でやっているより競争者が出て来た方が負けてはならないと依怙地になる(子供のおもちゃの取り合いは粗方競争者の出現に起因する)。源氏の末摘花への想いはこれで決定的になったことでしょう。

 ②源氏・頭中 若い二人の悪ふざけ、問答がすごく滑稽。
  「人の思ひよらぬことよ」と憎む憎む。。。。
  この「憎む憎む」と憎むを二回重ねた語り手の表現がユーモアたっぷり。

 ③頭中との絡みでは常に夕顔(撫子)&その遺児(玉鬘)のことが出てくる。

5.源氏と頭中将、同車して左大臣邸へ行く
 〈p21 お二人とも、ここからお通いになるところがおありでしたが、〉

 ①左大臣邸に帰るが葵の上とのことは全く語られていない、、、ダメですねぇ。

 ②左大臣はすぐ出てきて管弦の宴になる。笛は左大臣家の得意楽器。

 ③女房中務の君をめぐる源氏・頭中の構図が語られる。
  時代が違うとはいえ読んで気持ちいい話ではない。

6.源氏と頭中将、末摘花を競い合う
 〈p23 その後、源氏の君からも頭の中将からも姫君に〉

 ①源氏と頭中。ポーカーフェイスで互いに探り合うところが面白い。

 ②源氏には恋の手引き者大輔命婦がいる。頭中には悪いが勝負にならない。

 ③段末。若紫の巻との重複の様子が語られる。
  北山での紫の上発見が3月、藤壷との契りが4月。
   

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末摘花(1・2・3) 夕顔に続く中の品 - 末摘花

[お知らせ]
万葉さんのヘルプにて右欄にリストを3つ掲載しました。参考にしてください。
 1.源氏百首-源氏倶楽部撰 (先年の講読会で選んだものです)
 2.源氏物語 名場面集   (ブログ作成者が選んだものです)
 3.青玉源氏物語和歌集   (青玉さん作成の各巻和歌です)

「末摘花」皮ごろも上に着たれば我妹子は聞くことのみな身に沁まぬらし(与謝野晶子)

紫のゆかりのメインストーリーを離れ、帚木三帖の夕顔に続く中の品の女性との恋物語です。重厚なメインストーリーの幕間狂言的なお話で、喜劇・滑稽譚の類です。この女性、とんでもなく個性的で捉え方もマチマチかと思います。私はけっこう好きな方なんですが、、、。

p112 – 120
1.源氏、亡き夕顔の面影を追い求める
 〈寂聴訳巻二 p10 愛しても愛しても、〉

 ①G18年2月頃か (夕顔の死はG17年8月)
  この末摘花の巻は若紫と全く重複している。

 ②打ち解けられぬ六条御息所・葵の上。死んでしまった夕顔、去って行った空蝉・軒端荻。
 
 ③なごりなきもの忘れをぞえしたまはざりける 
  一度関わりを持ったら忘れることはない源氏の好ましき習性

2.源氏 大輔命婦から末摘花の噂を聞く
 〈p12 左衛門の乳母といって、〉

 ①大輔命婦=源氏の乳母の娘(従って源氏とは乳母兄妹、同年齢と思ってよかろう)
  (源氏の乳母は惟光の母である大弐の乳母がいるがもう一人乳母がいた)
  この大輔命婦が狂言回しとなって末摘花との物語を取り仕切る。

 ②大輔命婦と源氏の掛け合いが面白い。ちょっと謎をかければ好色な源氏はすぐ反応を示す。命婦は末摘花のことをどこまで知っていたのか、含みが持たされている。

 ③三つの友 = 琴・詩・酒(白楽天)

3.源氏、朧月夜に、末摘花の琴を聞く
 〈p14 源氏の君は、おっしゃったとおり、〉

 末摘花邸は中川紀伊守邸(空蝉が居たところ)に近い。
  → 平安京条坊復元図で東京極大路の西・春日小路の北 

 ①ころは2月朧月夜の夜、寂れたる常陸宮邸へ出向き深窓の女性のつつましやかな琴の音を聞く。雨夜の品定めで中の品の典型とされた状況で源氏の頭の中は「ついにやった!これだ!」ってイメージは膨らむばかり。
  → わらわ病にかかる直前だろうか、こんなことしてたのでかかったのかも

 ②ちょっとだけ琴を聞かせて気を持たせる、大輔命婦の心憎い恋の演出。

 ③大輔命婦は源氏の裏も表も全部知っている。両者の会話が面白い。
  →この両者デキてたかどうかはともかく相当親密だったことは間違いなかろう。
 

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若紫 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

若紫のまとめです。

和歌
9.見てもまたあふよまれなる夢の中にやがてまぎるるわが身ともがな
  (源氏) 藤壷との禁断の契り
10.手に摘みていつしかも見む紫のねにかよひける野辺の若草
   (源氏) 若き紫の上、紫のゆかり

名場面
9.雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠の中に籠めたりつるものを
  (p23 北山で最愛の伴侶となる若紫を発見、その颯爽たる初登場の場面)

10.見てもまたあふよまれなる夢の中にやがてまぎるるわが身ともがな
  (p60 代表歌と同じ藤壷との禁断の契りの場面、物語全体でも五指には入る重要場面)

11.「いざたまへ。宮の御使にて参り来つるぞ」とのたまふに、あらざりけりとあきれて
   (p94 若紫を二条院へ連れ出す 謂わば少女拉致監禁、、と言ってしまえば実も蓋もないが、、)

[「若紫」を終えてのブログ作成者の感想]

「若紫」、やはり帚木三帖とは違いますね、源氏物語のメインストーリーが語り始められたのを実感します。重厚で濃密、そんな感じです。いかがでしょう。

幼いながら雅びであどけない若紫が颯爽として登場し、源氏の君に関わっていく。一体この少女にどんな運命が待ち受けているのか、スーパーヒーロー光源氏はこの少女を幸せにしてくれるのか、、、読者の期待は膨らむものの一方で若干の不安を禁じ得ない、、、そんなとこでしょうか。

そして藤壷との禁断の契りが突如語られます。連続ドラマでは1回分にも満たないようなページ数ですがここを見落とすと全てが分からなくなってしまう重要場面です。ただ私はどうも藤壷に親しみ(人間としての温かみ)を感じないのです。作者が遠慮して藤壷の描写を控えているせいでしょうか。

いつもながらコメントをいただいているみなさま、ありがとうございます。投稿は一人で書いてるのでどうしても見方(登場人物への思い入れ)が一方的・先鋭的になりがちです。書きたいことの半分も書けず、書くつもりもなかったことをふと書いてしまうということで落ち込んだりしています。そんなとき突っ込みを入れていただき、再度読み直し考えを整理するとすっきりします。「あっ、そういうことだったんだ!」源氏物語は読めば読むほどそんな発見がありそれが楽しいのです。

式部さんの朗読、青玉さんの各巻まとめの和歌、すばらしいです。共々宇治橋のたもとまで辿りつけるよう頑張りましょう。よろしくお願いいたします。  

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若紫(24・25・26) 二条院での源氏と若紫

p101 – 107
24.源氏、紫の上に手習を教え、ともに遊ぶ
 〈p320 源氏の君は二、三日宮中へもお上りにならず、〉

 ①自邸に連れて来て四六時中いっしょにおり自分好みの女性にしたてる。
   →源氏物語だからいいものを。世の中で一番あってはいけないことであろう。。

 ②源氏と紫の上との歌の応酬
  源氏 ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の露わけわぶる草のゆかりを
     脚注4の通りすごく技巧的で意味を隠した歌

  紫の上 かこつべきゆゑを知らねばおぼつかないかなる草のゆかりなるらん
      紫のゆかり(藤壷→紫の上)を両者で詠いあう

  和歌と書、上手な人のを手本として何度も書いて和歌の作り方・書道を学ぶ。紫の上の素質の良さが語られる。

25.父兵部卿宮と、邸に残る女房たちの困惑 
 〈p323 あちらのお邸に残った女房たちは、〉

 ①乳母少納言がどこかへ隠した → まあそれなら仕方がない、悪いようにはしないだろう、、、と父宮は思ったのだろうか。

 ②父宮の北の方が出てくる。紫の上の継母。この人も悪役サイドに位置づけられようか。

26.紫の上、無心に源氏と馴れむつぶ
 〈p324 二条の院の西の対には、〉

 ①源氏がやさしく一緒に遊び、教え、言い聞かせるので紫の上はすっかり源氏に馴れ親しむようになる。
  
 ②源氏も外出先から帰ると飛びついてきて無邪気に振る舞う紫の上は目茶目茶可愛かったのだろう。左大臣邸(葵の上)や六条御息所の所への足は遠のく。

 ③巻末に女性の一般論を語り、紫の上の年に似合ぬあどけなさ(無邪気さ)を強調している。

これで「若紫」は終わり、紫のゆかりのストーリーは次の「末摘花」を飛ばし「紅葉賀」へと続いています。
    

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若紫(22・23) 若紫を二条院に連れ出す

紫の上、連れ出しの場面です。
p90 – 101
22.葵の上と不和、紫の上を邸から連れ出す
 〈p312 源氏の君はその時、左大臣邸にいらっしゃいましたが、〉

 ①紫の上のことを語り始める前に葵の上との様子を語る(相変わらず打ち解けられない)
  風俗歌 「常陸」とはえらく遠いところだけど、伊予の介も常陸に行くし、浮舟の義父も常陸。関東と言えば常陸だったのだろうか。

 ②惟光ばかりを随身として紫の上邸へ。さすがに少納言も驚く。
  寝入っている10才の少女を起こし、なだめすかして抱き連れて行く。この瞬間少女はどんな思いだったのだろう。
  源氏の有無を言わさぬ行動力が語られる場面。

  p93 門うち叩かせたまへば、 ~~~ p96 みづからもよろしき衣着かへて乗りぬ 
  この場面、息もつかせぬ流れで語られています。是非朗読をお聞きください。

23.紫の上を二条院に迎え、いたわる
 〈p317 二条の院はそこから近いところなので、〉

 ①紫の上邸から二条院はごく近い(南北に同じ通りで北に2ブロック、即ち250~300M)

 ②少納言もこうなったら紫の上といっしょにいるしかない。
  少納言、一旦躊躇するが源氏に突き放されて心を決める。
   → 笑ひて下りぬ がいい。(分かりましたよ、ご一緒しますよ)

 ③二条院の西の対、ここが紫の上の長きにわたる城となる。
  普段は使ってなかった西の対。幼き姫を迎えて模様替えやらお付きの女童を呼び寄せるやら遊び道具を取り揃えるやら。源氏にとっても二条院は自邸だがこれまで女君はおらず、普段は宮中か左大臣邸に居たのだから紫の上を迎えてさぞ嬉しかったろう。 

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若紫(18・19・20・21) 若紫を連れ出す算段

p74 – 90
18.源氏。、紫の上の邸を訪れ、一夜を過ごす 
 〈p297 少納言からなかなか心得のある御返事が届きました。〉

①源氏が紫の上邸を訪れる。少納言の説明で状況が全て分かる。
  父兵部卿に引き取られれば継母北の方やら実子たちの中でいじめられる(継子いじめ)。
   →源氏は「そりゃあまずい、私が引き取らねば」と思うし読者は「源氏よ、この子を不幸にしないで」と思う。

 ②源氏と少納言の歌の贈答
   →もうこの辺で両者は阿吽の呼吸で源氏の拉致を容認し合ったのではなかろうか。
   →一夜明かした後では完全に合意してたのだろう。

 ③源氏と紫の上の添い寝シーン
  最初は御簾ごしに手を差し入れて次には御簾の中にすべり込んで添い寝する。
   →源氏の強引さ・自分なら許されるとの自惚れ・自信・思いやりの心などなどが織り交ざっている。
 
 ④手をさし入りて探りたまへれば 
  かい撫でつつかへりみがちにて出でたまひぬ 
   →この段源氏が紫の上を触る描写が多い。やはりスキンシップが大切なのだろう。 

19.源氏、帰途に忍び所の門を叩かす
 〈p305 外は朝霧が深く立ちこめ、空の風情もひとしお情趣深い上に、〉

 ちょっと唐突に別の忍び所へのアタックの様子が出てくる。いくらなんでもアポなしのいきなりでは相手も困るでしょう。時間も明け方、毎日起きて待ってなどいられましょうか。

20.父兵部卿宮、紫の上を訪ね、あわれむ
 〈p307 姫君のお邸では、ちょうどその日、〉

 父もそれなりには紫の上を思いやっている。源氏の引き取りに至るプロセスとしての父兵部卿の訪問

21.源氏、惟光を遣わし、父宮の意図を知る
 〈p309 源氏の君のところからは、その夕方、〉

 ①女房の言葉に もののはじめにこの御事よ とあり、一度来たのだから三日は通うべきだと言うのだがちょっと不審。葵の上がいて正妻にはできない、三日間通って愛人にするには幼すぎる。そんなこと世間も父宮も許さない、だから無理やり拉致してしまう他ない、、、ということだったのではなかろうか。

 ②少納言より明日父宮が引き取りに来るとの重要情報が寄せられ、拉致プロジェクトチームが作られ準備に勤しむ。

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