p120 – 130
4.頭中将、源氏の後をつけ、おどし戯れる
〈p18 寝殿のほうへ行けば、〉
①源氏の恋のライバル頭中の登場。この場面の作り方素晴らしいと思うのですがいかがでしょう。人間は一人でやっているより競争者が出て来た方が負けてはならないと依怙地になる(子供のおもちゃの取り合いは粗方競争者の出現に起因する)。源氏の末摘花への想いはこれで決定的になったことでしょう。
②源氏・頭中 若い二人の悪ふざけ、問答がすごく滑稽。
「人の思ひよらぬことよ」と憎む憎む。。。。
この「憎む憎む」と憎むを二回重ねた語り手の表現がユーモアたっぷり。
③頭中との絡みでは常に夕顔(撫子)&その遺児(玉鬘)のことが出てくる。
5.源氏と頭中将、同車して左大臣邸へ行く
〈p21 お二人とも、ここからお通いになるところがおありでしたが、〉
①左大臣邸に帰るが葵の上とのことは全く語られていない、、、ダメですねぇ。
②左大臣はすぐ出てきて管弦の宴になる。笛は左大臣家の得意楽器。
③女房中務の君をめぐる源氏・頭中の構図が語られる。
時代が違うとはいえ読んで気持ちいい話ではない。
6.源氏と頭中将、末摘花を競い合う
〈p23 その後、源氏の君からも頭の中将からも姫君に〉
①源氏と頭中。ポーカーフェイスで互いに探り合うところが面白い。
②源氏には恋の手引き者大輔命婦がいる。頭中には悪いが勝負にならない。
③段末。若紫の巻との重複の様子が語られる。
北山での紫の上発見が3月、藤壷との契りが4月。
頭中、源氏を尾行する。
何とも話の展開を面白くする紫式部。
これが源氏だけの動きならここまで喜劇仕立てにはならない、頭中の性格や物好きな所も笑えます。
青春まっただ中のお二人、お遊びが過ぎてるかとも思いますが若さのなせる仕業ですね。
そんな中、深窓の御令嬢末摘花をますます理想化していくのでしょう。
夕顔の件では源氏に優越感があるのでしょうね。
以上の場面、映像として頭の中でイメージされます。
女房中務の君とは三角関係でしょうか?
こなたかなたより文などやりたまふべし。いづれも返り事見えず・・・
女君からは何の反応もないわけですね。
こうなればさほど執着しなくてもお互い競争心が煽られるのでしょうね。
段末、夕顔、藤壺、若紫が心をよぎり、春夏過ぎぬ。締めが見事です。
源氏物語にあって頭中の果たす役割は非常に大きいと思います。源氏を引き立てるにも批評するにも頭中を登場させて語っていく手法がすごいです。
源氏の義理の兄であり、仕事でも恋の道でもライバルであり友だち感覚であった頭中、この人物を主人公とした小説でもあったら面白いのになあと思います。女君たちに話を語らせる「女人源氏物語」(瀬戸内寂聴)とか六条御息所に語らせる「六条御息所 源氏がたり」(林真理子)とか源氏を通しての「窯変 源氏物語」(橋本治)とかはあるのですが、頭中に語らせたのはないようです。
右大臣の四の君を正妻とする頭中、源氏の須磨・明石時代には政治的に動こうとすればけっこうできたと思うのですが、、、。結果はそうならなかったとしても右大臣方に取り込まれて謀反に加担しようかとの心も芽生え源氏への友情との狭間で悩む頭中、、なんて面白いんじゃないでしょうか。