関屋(1・2・3) 空蝉との後日談

関屋 逢坂は関の清水も恋人のあつき涙もながるるところ(与謝野晶子)

前巻蓬生(末摘花の後日談)に続く空蝉のその後です。12年前源氏17才の若かりし時、雨夜の品定めで刺激を受けた源氏が方違えの夜強引に思いを遂げた人妻空蝉。
p64 – 72
1常陸より帰京の空蝉、逢坂で源氏と逢う
 〈寂聴訳巻三 p262 伊予の介といった人は、〉

 ①G29年9月末 澪標(住吉詣で・六条御息所の死)と重複

 ②常陸から帰る空蝉と石山寺詣での源氏が逢坂の関で遭遇する。
  →よくできた話(小説的)である。

 ③空蝉は夕顔巻末以来12年ぶりの登場 
  空蝉: G17年立冬 伊予へ (3~4年して京にもどり) 
      G24年 常陸へ
      G29年秋 京へもどる
   地方暮らしの多い女性です。

 ④常陸→筑波嶺
  No.13 筑波嶺の峯より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる(陽成院)
  常陸は大国、当時から重要地域であった。平将門の乱は939年。

 ⑤石山寺詣で 当時も盛んであった。紫式部ゆかりの寺。折角だから石山寺のことやお参りの様子をもう少し詳しく書いてほしかった。

 ⑥逢坂の関 これはもう、(空蝉と蝉丸、蝉繋がり)
  No.10 これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関(蝉丸)

 ⑦この場面、現存する国宝源氏物語絵巻(徳川美術館蔵)の一つです。

2.源氏、右衛門佐を通じて空蝉と文通する
 〈p265 源氏の君が石山寺からお帰りになる時は、〉
 
 ①小君 登場。右衛門佐になっている。源氏の須磨行に加わらなかった。
  一方須磨に随った紀伊守(今の河内守)の弟右近将監は源氏の重臣の一人となっている。
   →勝者に随っていかないといい目がみられない。

 ②源氏・空蝉の歌の贈答 代表歌
  源氏 わくらばに行きあうみちを頼むみしもなほかひなしやしほならぬ海
  空蝉 逢坂の関やいかなる関なれば繁きなげきの中をわくらん

  空蝉はこの12年間源氏とのことをどのように想ってきたのだろう。どうにもならないと思いつつ懐かしく思い出すこともあったのだろうか。

3.空蝉、夫と死別、河内守の懸想を避け出家
 〈p269 そうこうする間に常陸の介は年老いたせいか病気がちになり、〉

 ①この常陸守、老の積もりにや、なやましくのみして、
   →年をとって衰えていく様、老の積り、、、いい表現だと思います。

 ②河内守の懸想。
  河内守にとっては空蝉が高貴な女性で憧れであったのだろう。
  これも義母と息子、ポルノ映画の類型です。

 ③出家を選んだ空蝉。さすが賢明だと思います。

 ④あいなのさかしらやなどぞはべるめる  
  →「そうだ、そうだ!」との読者の声が聞こえてきそうです。     

カテゴリー: 関屋 | 2件のコメント

蓬生 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

蓬生のまとめです。

和歌

29.たづねてもわれこそとはめ道もなく深き蓬のもとの心を
   (源氏)  荒れ果てた末摘花邸へ

30.年をへてまつしるしなきわが宿を花のたよりにすぎぬばかりか
   (末摘花)  待ちわびた源氏の来訪

名場面

31.御さきの露を馬の鞭して払ひつつ入れたてまつる。雨そそきも、なほ秋の時雨めきてうちそそけば、、、
   (p48 源氏、荒れたる末摘花邸へ 国宝源氏物語絵巻の場面)

[蓬生を終えてのブログ作成者の感想]

末摘花の巻でさすがの源氏も「なんじゃ、これは!」と戸惑ったあのユニークな姫君の後日談、いかがでしたか。末摘花の巻であれだけ詳しく書かれていた姫君なので読者が是非その後を聞きたかったのでしょうね。それに応える作者も律儀ですし、一度契った女性のことは忘れないという源氏も律儀です。エライと思います。

この姫君、末摘花の巻の時(11年前)に比べて随分と進歩していますよね。受け答えも歌も「昔よりはねびまさりたまへる」と思いました。

憎々しい叔母や甲斐甲斐しい惟光の登場もあり。短編として読んでも面白いと思います。芥川龍之介に短編小説にしてもらいたかったですねぇ。

青玉さんには本巻を総括するに相応しい素晴らしい和歌を詠んでいただきました。ここに再録して敬意を表したいと思います。

  しのぶ草踏み分けくればゆかしけり
            くれなゐ棲めるよもぎふの宿

                (青玉源氏物語和歌集「蓬生」)

カテゴリー: 蓬生 | 9件のコメント

蓬生(12・13・14) 末摘花救われる

p48 – 58
12.末摘花、源氏と対面、和歌を唱和する
 〈p253 姫君は、それにしてもいつかはきっといらして下さると、〉

 ①待ちに待った源氏の来訪。相変わらず戸惑う末摘花。

 ②源氏の言説も相変わらず巧み。でも長すぎたご無沙汰を反省改心し今後はちゃんと面倒をみようと思ったことは確かであろう。

 ③末摘花の返歌 年をへてまつしるしなきわが宿を花のたよりにすぎぬばかりか 代表歌
  と忍びやかにうちみじろきたまへるけはひも、袖の香も、昔よりはねびまさりたまへるにやと思さる  
   →随分と大人になっている。大したもんです。

 ④さて、その夜それからどうしたのか書かれていない。
  1.そのまま泊まり久しぶりに契った
  2.そのまま泊まったが何もなく朝早く帰った
  3.当初の予定どおり花散里邸へと向かった
  上記の内から一つを選び何故そうしたのか源氏の心内を簡潔に述べよ。
   (こういう受験問題を出してほしいですね)  
  
13.源氏、末摘花を手厚く庇護する
 〈p257 賀茂の祭や斎院の御禊などがある季節ですから、〉

 ①早速に末摘花邸に手を入れ経済的援護をする。でも時間もないし訪れはしない。

 ②離れていた女房たちも我勝ちに戻ってくる。
  →人の心の模様。当然であろう。皆勝ち馬にこそ乗りたがるのでしょう。

14.末摘花、二条の東院に移り住む
 〈p259 二年ばかり、姫君はこの古い宮邸に物思いの日々を〉

 ①二条東院に移り住む(後日談)

 ②それを知った大弐の北の方(叔母)の悔しがりよう&侍従の早まったことをしたとの反省、、、この辺省筆せずに書いて欲しかった、、、、と読者は思ったのではないか(私もです)。

 総じてこの巻、さながら月光仮面が現れてヒロイン(美人ではないが)の窮地を救う痛快なエピソードだと思いましたがいかがでしょう。

カテゴリー: 蓬生 | 4件のコメント

蓬生(9・10・11) 源氏、やっと末摘花邸へ

さて待ちに待った源氏の君の登場です。
p41 – 48
9.源氏、末摘花の邸のそばを通りかかる
 〈p246 明くる年の四月の頃、源氏の君は、〉

 ①G29年4月(前段から5ケ月経っている)
  明石の姫君が生まれたのが3月だからその直後のこと

 ②夏、この季節になると花散里(夏の女)が登場する。末摘花邸は花散里邸への通り道(うまくできている)

 ③五月雨の間の夕月夜、藤・橘・柳と並べて、待ってました「例の、惟光はかかる御忍び歩きに後れねばさぶらひけり」

 ④惟光の情報ネットワークなら女君たちの動静は全てつかんでいたことだろう。

10.惟光、邸内を探り、ようやく案内を請う
 〈p248 惟光は、門の内へ入り、どこかに人声でもしないものかと、〉

 ①惟光が訪ねていく件、夕顔の宿の叙述のようで懐かしい感じ。

11.源氏、惟光に導かれて邸内に入る
 〈p250 源氏の君は、「どうしてこんなに長くかかったのかね。〉

 ①さて感動的名場面です。
  やっと源氏が末摘花邸に入っていく。「ええっと、どんな女性だったかな、そうだ赤鼻の無口の訳のわからんお人だったなぁ、変わってないのだろうな。まあいいか」

 ②源氏 たづねてもわれこそとはめ道もなく深き蓬のもとの心を 代表歌
  →脚注に「迷う心を振り切って、自らをかりたてようとする歌である」とある。そうだろうけどそれこそ源氏の優しさではなかろうか。私は物語中この歌が一番源氏の優しさ・面倒見の良さを表してると思います。大好きです。

 ③現存する国宝源氏物語絵巻(徳川美術館)に描かれてる名場面です。

  御さきの露を馬の鞭して払ひつつ入れたてまつる。雨そそきも、なほ秋の時雨めきてうちそそけば、「御かささぶらふ。げに木の下露は、雨にまさりて」と聞こゆ。御指貫の裾はいたうそぼちぬめり。 

 ④立ちまじり見る人なきぞ心やすかりける
  →こんな所に入って来る貴人はいない。見られたっていいじゃないの、恥ずかしいことじゃないでしょうに。

カテゴリー: 蓬生 | 2件のコメント

蓬生(7・8) 侍従、叔母とともに去る

p30 – 40
7.末摘花の絶望 叔母来り侍従を連れ去る
 〈p237 冬になってゆくにつれて、〉

 ①末摘花の兄 禅師の君、何とも頼りない。それで僧侶と言えるのか、男なら妹のこともうちょっと考えてやったらどうか。

 ②叔母が来る。屋敷の外塀はボロボロで車を入れるにも難儀する。

 ③叔母の憎々しい言葉。
  げにしかなむ思さるべけれど、生ける身を棄てて、、、、
    以下は源氏のことを解説してくれている。源氏がどういう風になっているのかこのように世間は周知のことだったのだ。

 ④侍従への餞別として自らの黒髪を与える(それしかない)、かわいそう!
   わが御髪の落ちたりけるを取り集めて鬘にしたまへるが、九尺余ばかりにていときよらなるを、をかしげなる箱に入れて、昔の薫衣香のいとかうばしき一壺具してたまふ
 
 ⑤故ままののたまひおきしこともありしかば 
  →幼児が乳母のことを「まま」と呼ぶ。面白い、ママは英語だけじゃないんだ。

 ⑥脚注にもある通りこの段の末摘花は第六巻「末摘花」の時とは違いよくしゃべる。けっこうまともな女君として描かれている(誇張は相変わらずだが)。

8.末摘花の邸、わびしく雪に埋れる
 〈p245 十一月ごろになりますと、〉

 ①G28年11月 寒い冬 
  白山が出てくる(紫式部は越前にいたから白山は見る機会があったのだろうか)。
  ひたすら耐えて春を待つ末摘花。源氏はいつになったら来てくれるのでありましょう。

カテゴリー: 蓬生 | 3件のコメント

蓬生(4・5・6) 叔母、末摘花を西国に誘う 末摘花、動ぜず

p20 – 30
4.末摘花、時代離れの古風な日常を過す
 〈p230 たわいのない昔の歌や物語などでもお慰みになされば、〉

 ①末摘花の生活、想像するだに単調で退屈極まりないものであったろう。
  
 ②古風な教養を物語る叙述
  唐守、は姑射の刀自、かぐや姫 & 古歌

5.叔母、末摘花に対して報復を企てる
 〈p231 侍従とか言いました御乳母の娘だけが、〉

 ①叔母が悪役として突如登場し末摘花への哀れさを誘う。
  →源氏物語の本筋には全く関係のないエピソード。でも人の心の話であり下世話で真実味を帯びている。これぞ小説と言えるのではないか。

 ②昔惨めな想いをした叔母が報復に末摘花をいじめにくる。
  末摘花の母(姉)→常陸宮の妻
  叔母(妹)→受領の妻
    宮家の妻と受領の妻はそんなに違うものなんだ!

 ③末摘花を娘の女房(召使)にすると言っても末摘花が役にたつわけもなかろうに(苛めることが目的だから役に立たなくてもいいのか)。

6.叔母、西国へ同行を勧誘、末摘花拒む
 〈p233 そうこうしているうちに、〉

 ①誘う叔母、拒む末摘花
  あな憎。ことごとしや。心ひとつに思しあがるとも、さる藪原に年経たまふ人を、大将殿もやむごとなくしも思ひきこえたまはじ
   →叔母の捨て台詞

  困惑する女房たち それぞれに伝手を頼って離れていく(当然であろう)
  
 ②侍従は末摘花を見捨てて叔母について大宰府へと下る決心をする。

 ③末摘花は頑なに拒み源氏が来てくれることを信じて待つ(まことにいじらしい)
  さりとも、あり経ても思し出づるついであらじやは、あはれに心深き契りをしたまひしに、我が身はうくて、かく、、、、、、、、かならずとぶらひ出でたまひてん

 ④ただ山人の赤き木の実ひとつを顔に放たぬと見えたまふ御側目などは、おぼろけの人の見たてまつりゆるすべきにもあらずかし
  →何とも酷い表現で末摘花がかわいそう。源氏よ何とかしてやってくれ!

カテゴリー: 蓬生 | 2件のコメント

お知らせ - 五島美術館・出光美術館

お知らせです。

先般ハッチーさんから紹介がありましたが五島美術館で源氏物語絵巻が公開されます。それと出光美術館でも現在源氏絵が多数展覧されてるようなのでご案内します。ご参考まで。

1.五島美術館
   「春の優品展 -和歌の世界-」
   この中で4月27日~5月6日に所蔵の国宝源氏物語絵巻(鈴虫一・二、夕霧、御法)四点が公開されます。
   
2.出光美術館 4月6日~5月19日
   「土佐光吉没後400年記念 源氏絵と伊勢絵 -描かれた恋物語」
   室町~江戸時代の源氏物語・伊勢物語に因む絵画
    (源氏物語が後世如何に愛されたかが分かるのではと思います)

何れもHPを見てください。面白そうですよ。

カテゴリー: 身辺雑記 | 8件のコメント

蓬生(1・2・3) 末摘花 荒れたる邸を守り生きる

「蓬生」道もなき蓬をわけて君ぞこし誰にもまさる身のここちする(与謝野晶子)

あのユニーク・不可解な女君、末摘花の後日談です。本筋ではないのであまり深読みせずすっと通り抜けましょう。

p12 – 20
1.源氏謫居の間、人々ひそかに嘆き悲しむ
 〈寂聴訳巻三 p224 源氏の君が、須磨の浦で、〉

 ①源氏は足掛け3年須磨・明石にいた。前後も含めるとここ3~4年は各所の女君の面倒(物心ともに)をみられなかった。その最たるものが末摘花でした。

2.末摘花の邸ひたすら窮乏し、荒廃する
 〈p225 常陸の宮のあの末摘花の姫君は、〉

 ①源氏からの便りは途絶えるものの待ち続ける末摘花(待つより他に能力がない)
  待ち受けたまふ袂の狭きに、大空の星の光を盥の水に映したる心地して過ぐしたまひしほどに、

 ②お付きの女房たちも見限って少なくなっていく。
  →そもそも源氏が来てなくば何とかしてたろうに、なまじ源氏が通うようになりそして来なくなった。これは不幸である。

3.末摘花、荒れなさる邸を守り生きる
 〈p227 もともと荒れはてていたお邸のうちは、〉

 ①荒れ果てた邸の様子がこれでもかと描写される。
  狐の住み処・梟の声・木霊
  草蓬・浅茅・葎 

  そして極めつけが、
   盗人などいうひたぶる心ある者も、思ひやりのさびしければにや、この宮をば不用のものに踏み過ぎて寄り来ざりければ、
    →盗人にまで見放されている、、、、すごい表現です

 ②成金の受領階級などが家屋敷、或いは道具類などを買いたたきにくる。
   →現代に通じる話であろう。

 ③それでも末摘花はびくともしない。

カテゴリー: 蓬生 | 2件のコメント

澪標 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

澪標のまとめです。

和歌
27.みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな
    (源氏)  住吉、明石の上との回合

28.降りみだれひまなき空に亡きひとの天かけるらむ宿ぞかなしき
    (源氏)  故六条御息所を偲んで

名場面
28.宿曜に「御子三人、帝、后かならず並びて生まれたまふべし。中の劣りは太政大臣にて位を極むべし」と勘へ申したりしこと、さしてかなふなめり。
    (p202 明石姫君誕生、宿曜のこと)

29.「いまはた同じ難波なる」と御心にもあらでうち誦じたまへるを、 
    (p233 住吉詣で、明石の上との唱和)

30.うたてある思ひやりごとなれど、かけてさやうの世づいたる筋に思しよるな。、、、
    (p242 六条御息所、必死の遺言)

【澪標を終えてのブログ作成者の感想】

今月は澪標・蓬生・関屋・絵合と四巻、ペースは速く澪標もこれで終わりです。
澪標の冒頭でも書きましたがこの巻はポイントが多く興味深いのですが取分け、明石の姫君誕生と六条御息所の逝去が重要です。これまでのストーリーで重要な役割を担ってきた御息所に替り、御息所の俤を漂わす明石の君が登場し明石の姫君が生まれ主役になっていく。正に去る人に来る人、ストーリーを担う主役の交替を思わせます。

そして源氏が帰ってきて喜びも束の間、紫の上の心に芽生えた嫉妬の心(源氏への漠とした不信感・不安感)。この嫉妬心が今後源氏の栄光への道を同道する紫の上にずうっと死ぬまで、弱まる時もあるものの拭い去ることができないまま増殖を続けていくのです。

さて、明日からはサイドストーリーの蓬生と関屋に入ります。これはこれでメインストーリーとは切り離して短編として楽しめると思います。気楽に読んでいきましょう。

カテゴリー: 澪標 | 6件のコメント

澪標(14・15) 前斎宮入内への密議

p252 – 258
14.前斎宮の悲しみの日々と朱雀院の執心
 〈p216 はかなく過ぎてゆく月日につれて、〉

 ①前斎宮はこれまで20年間ずっと母御息所といっしょだった。母一人娘一人で。その母が亡くなった。悲しみは大変なものだったろう。六条の邸も人が減り寂しくなる。

 ②朱雀院は前斎宮に想いをかけており御息所が帰京した際にも宮中に来たらと誘いをかけたほど。まだ未練を抱いている。

15.源氏、藤壷の宮と前斎宮の入内をはかる
 〈p218 源氏の大臣はその事情をお聞きになって、〉

 ①前斎宮をどうするか、源氏と藤壷との重要会談。
   源氏→藤壷 御息所の遺言を踏まえつつ入内を進言
         →あくまで「御定めに」と決定は藤壷に委ねるところがすごい

   藤壷→源氏 かの遺言をかこちて知らず顔に参らせたてまつりたまへかし 
         →藤壷の強さ、明快さ。

 ②冷泉帝(まだ11才だが)に入内してるのは頭中の娘弘徽殿女御
  入内を予定されているのは藤壷の兄兵部卿宮の姫君(藤壷には姪にあたるが源氏の賛成・後見は得られまい)

 ②冷泉帝は藤壷(と源氏)の子。誰を后にしていけばいいか。藤壷としては悩んでいたことだろう。そこへ源氏から前斎宮の話。これこそ渡りに船だったのではないか。

  かくて六条御息所の娘前斎宮が母と同じく入内する方向が決まったのです。そして母は后妃になりそこねたが娘は後宮争いを制し(勿論源氏の後ろ盾で)中宮にまで昇りつめるのです。

これで「澪標」の巻は終わり、「蓬生」(末摘花の後日談)・「関屋」(空蝉の後日談)を経て冷泉帝後宮争いの「絵合」へと進むことになります。

カテゴリー: 澪標 | 2件のコメント