p252 – 258
14.前斎宮の悲しみの日々と朱雀院の執心
〈p216 はかなく過ぎてゆく月日につれて、〉
①前斎宮はこれまで20年間ずっと母御息所といっしょだった。母一人娘一人で。その母が亡くなった。悲しみは大変なものだったろう。六条の邸も人が減り寂しくなる。
②朱雀院は前斎宮に想いをかけており御息所が帰京した際にも宮中に来たらと誘いをかけたほど。まだ未練を抱いている。
15.源氏、藤壷の宮と前斎宮の入内をはかる
〈p218 源氏の大臣はその事情をお聞きになって、〉
①前斎宮をどうするか、源氏と藤壷との重要会談。
源氏→藤壷 御息所の遺言を踏まえつつ入内を進言
→あくまで「御定めに」と決定は藤壷に委ねるところがすごい
藤壷→源氏 かの遺言をかこちて知らず顔に参らせたてまつりたまへかし
→藤壷の強さ、明快さ。
②冷泉帝(まだ11才だが)に入内してるのは頭中の娘弘徽殿女御
入内を予定されているのは藤壷の兄兵部卿宮の姫君(藤壷には姪にあたるが源氏の賛成・後見は得られまい)
②冷泉帝は藤壷(と源氏)の子。誰を后にしていけばいいか。藤壷としては悩んでいたことだろう。そこへ源氏から前斎宮の話。これこそ渡りに船だったのではないか。
かくて六条御息所の娘前斎宮が母と同じく入内する方向が決まったのです。そして母は后妃になりそこねたが娘は後宮争いを制し(勿論源氏の後ろ盾で)中宮にまで昇りつめるのです。
これで「澪標」の巻は終わり、「蓬生」(末摘花の後日談)・「関屋」(空蝉の後日談)を経て冷泉帝後宮争いの「絵合」へと進むことになります。
長きにわたった御息所の終焉、もう今後の出番は無いのでしょうか。
これからは娘の前斎宮が中心になっていくのでしょうね。
前斎宮に想いを寄せる朱雀院の願望を阻止するために源氏と藤壺の陰謀?
言い過ぎかな? 冷泉帝の后にと、リードする藤壺は凄い!!
以前の藤壺のイメージでは想像できない謀ですね。
女性、母の強さとしたたかさを感じます。
母、娘共に入内するというのは珍しいことなのでしょうか?
「絵合」楽しみです。
さて「澪標」の歌ですがここは明石の君になりきって不安で揺れ動く気持ちを詠んでみました。
みをつくし浪路さすらふわが思ひ
難波の潟に砕け散るかな
お忙しい中コメントいただきありがとうございます。
1.六条御息所、ここで退場しますが残した遺言はストーリー上大きな意味を持つし、それでも足らずこれからも時々死霊となって登場します。余程この世に未練があったのでしょうか。
2.冷泉帝の妃(中宮)を誰にするか母藤壷にとっては極めて重要であったと思います。冷泉帝自身は源氏が後見するといっても勢力者の娘が妃に入ればその勢力者が政治の実権を握ることになりかねない。藤壷・源氏サイドとしては正念場だったのではないでしょうか。そして既に頭中(この時権中納言)の娘が入内している。このままでは頭中が藤原摂関家として君臨してしまう、、、。そんなタイミングでの御息所の死、前斎宮の取り込みだったわけです。面白いと思います。
因みにこの時、前斎宮20才。そして明石の君も同年で20才、紫の上は21才です。この3人の年令を考えるだけでも色んな議論ができそうですね(自分の妻と同じ年令の女性を自分の息子の妻にしようということです)。
3.母・娘が共に入内(天皇或いは東宮の妃になる)するのは珍しいことではないと思います。むしろ母(或いは後見者)はそうなるように願ったのではないでしょうか(道長の次女妍子、四女威子はそれぞれ帝妃であり娘も帝妃になっています)。
4.澪標の歌、見事です。ありがとうございます。
そんな不安に苛まされながらも明石の君は源氏の懐へ飛び込む(そんなに大胆ではないが)のですね。