澪標のまとめです。
和歌
27.みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな
(源氏) 住吉、明石の上との回合
28.降りみだれひまなき空に亡きひとの天かけるらむ宿ぞかなしき
(源氏) 故六条御息所を偲んで
名場面
28.宿曜に「御子三人、帝、后かならず並びて生まれたまふべし。中の劣りは太政大臣にて位を極むべし」と勘へ申したりしこと、さしてかなふなめり。
(p202 明石姫君誕生、宿曜のこと)
29.「いまはた同じ難波なる」と御心にもあらでうち誦じたまへるを、
(p233 住吉詣で、明石の上との唱和)
30.うたてある思ひやりごとなれど、かけてさやうの世づいたる筋に思しよるな。、、、
(p242 六条御息所、必死の遺言)
【澪標を終えてのブログ作成者の感想】
今月は澪標・蓬生・関屋・絵合と四巻、ペースは速く澪標もこれで終わりです。
澪標の冒頭でも書きましたがこの巻はポイントが多く興味深いのですが取分け、明石の姫君誕生と六条御息所の逝去が重要です。これまでのストーリーで重要な役割を担ってきた御息所に替り、御息所の俤を漂わす明石の君が登場し明石の姫君が生まれ主役になっていく。正に去る人に来る人、ストーリーを担う主役の交替を思わせます。
そして源氏が帰ってきて喜びも束の間、紫の上の心に芽生えた嫉妬の心(源氏への漠とした不信感・不安感)。この嫉妬心が今後源氏の栄光への道を同道する紫の上にずうっと死ぬまで、弱まる時もあるものの拭い去ることができないまま増殖を続けていくのです。
さて、明日からはサイドストーリーの蓬生と関屋に入ります。これはこれでメインストーリーとは切り離して短編として楽しめると思います。気楽に読んでいきましょう。
「ほのかなるけはひ、伊勢の御息所にいとようおぼえたり」
と明石の巻にあったように御息所の俤残す明石の君、そして姫君が物語の主役にとって代わるいうことですね。
今後、紫の上の立場がどのようになるのかも気がかりです。
ここまでテキスト4冊を終えてずっと不思議に感じたことを述べてみたいと思います。
1)あれほど源氏の多岐にわたる源氏の女君へのお忍びにもかかわらず子どもが余り生まれていないのが不思議の一つ(これは下種の勘ぐり)
あちこちに子どもが生まれていたらお話にならないですものね。
宿曜の予言で御子三人とありますし、当然紫式部の意図でしょう。
2)女はもちろん男がよく泣くのがもう一つの不思議。
泣き方は「よよと」だったり「しほしほ」だったりその他いろんな泣き方の表現。
単なる泣き虫ではないとは理解できますが余りにもよく泣くのでこの時代の何かの表現方法かなとも思ったりしています。
何となく理解はできるのですが・・・ 変なところが気になる私です。
明日から蓬生、猛スピードです。あちこちでつまずいてる場合じゃないですね。
ありがとうございます。
十六分の四冊、ちょうど四分の一です。このペースで参りましょう。
1.源氏に子どもが三人、不思議です。これこそ源氏物語の三大謎の一つでしょう。取分け紫の上に子どもを作らせなかった、、、これこそ紫式部のエラさだと思います(明石の姫君を預かったあたりで紫の上懐妊・女児誕生というのも面白いと思うのですけどね)。
2.男もよく泣く。確かにそうですね、総じて日本人は古来よく泣きよく怒る民族であったようです。昔読んだ大塚ひかり「感情を出せない源氏の人びと」からの抜粋メモによると、
・万葉集は男の涙と女の微笑
・平安初期の物語は感情表現激しい、おおらか、ワイルド
・源氏物語絵巻は無表情画一的(皇統乱脈の物語をモノクロ化)
→おおらかでない、複雑・微妙
・源氏物語で怒る人:弘徽殿大后、右大臣、近江の君、末摘花の叔母、大北の方
・光源氏は怒らない、怒れない、めったに泣かない(争いのない世界を象徴)
・泣いて恨みを残した六条御息所
・泣かずに息子を守った藤壷
・複雑な微笑に終始した紫の上(爆笑は末摘花の赤い鼻の場面だけ)
そして感情抑制の逆襲を源氏が受けることになる、、、
まあ当たっているところ多いかと思います。
ここ(澪標)にきて、語り部である紫式部が とても 饒舌になってきた、
と感じます。巻「葵」あたりまでの素っ気ない語りに比べ、なんと
感情を露わにした語りが増えてきたか。特に源氏が紫の上に明石の君のことを
話す段では、源氏もそこらの浮気男と変わらぬ言い草に、笑ってしまいました。
“笑う”と言えば、青玉さんと清々爺のコメントで「源氏は
何故子供が少なかったのか?」を話題にされていますが、これも
可笑しかったです。だって、源氏のお相手は とても限定(=少ない)
されているのですから。
何十人も子供を産んだ歴代の徳川将軍や明治天皇(?)などは、同時期に
何十人も お相手が居たのです。そもそも、源氏は生殖行為ではなく
恋愛をしているのですから。
いずれにせよ、登場人物が ようやく 大きな流れの中で生き様を
はっきりさせてきたことで、面白くなってきました。引き続き、楽しい
ブログを お願いします。
ありがとうございます。中々目の付け所が鋭く感心します。
1.紫式部の筆使いのことおっしゃる通り大方の専門家もそう指摘しています。葵・賢木あたりまでは硬いと思います。澪標、このあたりからストーリー・テリング的にも面白くなるし、紫の上・明石の君はじめ登場人物の心内描写も微細になります。その分キチンと読むのは大変ですが読めば読むほど味わい深くなります。
2.源氏の女性遍歴は生殖行為でなく恋愛ですか、成程いいこと言いますねぇ。源氏も喜ぶことでしょう。性生活という観点からすると源氏は「性には全く餓えていなかった」(橋本治)。だって恋愛の対象(即ち物語の対象)にはならない召人と呼ばれるお手付きの女性には不自由しなかった訳ですから。従って恋愛の対象はあくまで身分限定での心と心のつながりだったということです。
そういう中で下手すると召人で終わってしまうような出自の明石の君が妻の一人として重用されていくのは明石の君自身の気高さもありますが、やはり「女の子」を産んだということでしょう。
3.今後益々紫式部の筆致は軽くなったり重くなったり縦横無尽となっていきます。お楽しみに。
清々爺へ
少々旅に出かけていたため読めない日が続き、それでも本人は頑張ったつもりで、本日ようやく澪標を終わりました。
澪標とは読めず、意味も全く解りませんでしたが、この帳を読み、またウィキベディアを見て、理解できました。大阪市の市のマークがそれだったんですね。泉州育ちで浪速っ子ではないものの、60過ぎまで何も知らず、ちっと恥ずかしい思いです。
皆さん書いておられるように、本帳でも話がドーンと進んだ感じで、物語の一つの節目なのですね。初読でストーリも知らないので、今後が気になるし、楽しみにもなる展開です。
歌では、清々爺もあげている
みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな
と、小生にはその返歌である
数ならでなにはのこともかひなきになどみをつくし思いそめけむ
がよかったです。
皆さんに追い付くまでもう少しのところまで来ました。引き続きよろしくお願いします。
ありがとうございます。
1.「澪標」は大阪市のマークでしたか。知りませんでした。平安時代、淀川の存在は大きかった。その河口の大阪(難波)は重要で住吉大社が源氏物語では大きな役割を持って登場します。大阪の人にも是非源氏物語に親しんで欲しいと思います。
2.歌をしっかり味わっておられることエライと思います。是非続けてください。作中人物の心を探るに一番いい材料だと思います(でも正直技巧があったり飛躍があったり難しいですねぇ)。
3.数ならでなにはのこともかひなきになどみをつくし思いそめけむ
明石の君の切ない気持ちよく詠まれていますよね。私はこの歌で秀吉の辞世の句を思い出しましたが、、。
露とおち 露と消えにし わが身かな 難波のことも 夢のまた夢
アト少しで追いつきますね。頑張ってください。