夢浮橋 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

夢浮橋のまとめです。

和歌

107.法の師とたづぬる道をしるべにて思わぬ山にふみまどふかな
     (薫)   物語最後の歌、それにしても、、

名場面

110. 人の隠しすゑたるにやあらんと、、、、、、とぞ、本にはべめる
     (p308   物語の語り収め)

[夢浮橋を終えてのブログ作成者の感想]

夢浮橋を終えました。何ともあっけない終り方、えっこれで終わりなの?って思われたのじゃないでしょうか。

浮舟は妹尼の懐柔にも耳をかさず、弟小君の気配を感じつつもついに会うことを拒み通しました。ここまで来ると「アッパレ!」と言う他ありません。浮舟の決意は固く小君に会ったくらいで揺らぐことはなかったでしょうが微塵とも隙を見せたくなかったのでしょう。少しでも隙を見せると妹尼たち回りの人も期待するしそれが伝わり薫の気持ちを焚きつけることにもなる。そんなの金輪際ゴメンだ!という気持ちでしょうか。出家した浮舟の強さに心打たれます。

一方薫、ひどい終わり方をされてますねぇ。
 人の隠しすゑたるにやあらんと、わが御心の、思ひ寄らぬ隈なく落としおきたまへりしならひにや

「変らない薫」としてはそれほど深い意味を込めた言葉ではなく単なるつぶやきなんでしょうが、源氏物語の締め括りの言葉となると読者は「薫という男は何たるやっちゃ!」と叫びたくなります。全て紫式部の意図した所ではないでしょうか。

終り方については色々言われています。誰が見ても大長編源氏物語の終わり方としては中途半端ですよね。2年間もかけて苦労しながら(勿論楽しみながらでもあるが)読み続けてきた到達点が頂上というより絶壁であったような感じです。もやもやっとした気持ちはぬぐえません。でもこれ以外の終わり方はない、これが源氏物語の終わりだと思うしかないのです。浮舟と薫の心の乖離をこれでもかと見せつけられれば「この物語は発展のしようがない」と納得せざるを得ない気持ちです。

。。。。。。。。。。。。。。

終りました。何とかやり遂げられた達成感でいっぱいです。
青玉さん、毎日の熱いコメント、毎巻の心を込めた和歌ありがとうございました。
式部さん、65時間に及ぶ全巻朗読、古典に通じた名コメントありがとうございました。
青黄の宮さん、匂宮なりきりの正直なコメント素晴らしかったです。ありがとうございました。
ハッチーさん、途中参加ながらよくぞ追いつき源氏を友にしてくれました。嬉しかったです。
進乃君さん、周回遅れのコメントで読み返しの機会を与えてもらい、ありがたかったです。
万葉さん、ブログ監修ありがとうございました。是非源氏も読み続けてください。
みなさんのご支援があってこその完走です。本当にありがとうございました。

。。。。。。。。。。。。。。。

カテゴリー: 夢浮橋 | 12件のコメント

夢浮橋(10・11・12) 源氏物語 最終段

p302-308
10.浮舟、薫の手紙を見、人違いと返事を拒む
 〈p364 尼君がそのお手紙を引き開けて、〉

 ①薫の手紙
  「さらに聞こえん方なく、さまざまに罪重き御心をば、僧都に思ひゆるしきこえて、今は、いかで、あさましかりし世の夢語をだにと急がるる心の、我ながらもどかしきになん。まして、人目はいかに。
  →懲りもなく詰問調の薫の手紙。浮舟の心は冷えるばかりであろう。
  →浮舟が入水を決意するに至る薫からの詰問文「人に笑はせたまふな」が思い出される(浮舟p257)
  →浮舟としては「えっ、私の罪は許してあげるだって、、、笑わせないで」という気持ちではないか。

 ②薫 法の師とたづぬる道をしるべにて思はぬ山にふみまどふかな 代表歌
  →源氏物語795番目最後の歌である。
  →思い迷う歌で終わっている。源氏物語の終わりの象徴であらん。

 ③妹尼に返事をと責められて窮する浮舟
  「、、、すこし静まりてや、この御文なども見知らるることもあらむ。今日は、なほ、持て参りたまひね。所違へにもあらむに、いとかたはらいたかるべし
  →誰一人浮舟の心を知る人はいない。孤独な浮舟、可哀そうである。
  →先般の手紙を送り返した浮舟。今回も結局返事は書かない(書きようがない)。 

11.小君、姉に会わず、むなしく帰途につく
 〈p367 主人の尼君が、この小君に、少しお話しして、〉

 ①妹尼→小君
  「物の怪にやおはすらん、例のさまに見えたまふをりなく、なやみわたりたまひて、御かたちも異になりたまへるを、、、、、、かくいとあはれに心苦しき御事どものはべりけるを、、、、いとどかかることどもに思し乱るるにや、常よりもものおぼえさせたまはぬさまになん
  →この日になって事の経緯(浮舟と薫のこと)を初めて知った妹尼、今まで何故浮舟が固く心を閉ざしていたのか分かったのではないか。
  →でもそんな浮舟にどう対処すればいいのか、、まだ妹尼にも分からない。
  →小君にはこのまま帰ってもらうしかない。

12.薫、浮舟の心をはかりかねて、思い迷う
 〈p368 まだかまだかと薫の大将は小君の帰りをお待ちでしたのに、〉

 最終段です。
  いつしかと待ちおはするに、かくたどたどしくて帰り来たれば、すさまじく、なかなかなりと思すことさまざまにて、人の隠しすゑたるにやあらんと、わが御心の、思ひ寄らぬ隈なく落としおきたまへりしならひにとぞ、本にはべめる

 ①薫は一体どんな気持ちで浮舟に文を送ったのでしょうか。

 ②小君からの報告を聞いてどう思ったのでしょうか。
  
 ③人の隠しすゑたるにやあらん、、
  →尼姿の浮舟なのに、、、

 ④紫式部の源氏物語は「落としおきたまへりしならひにとぞ」で終わっており、「本にはべめる」は後世の人が付けたということのようですがよく分かりません。

 これにて源氏物語終了となります。2年に亘る長い間お付き合いいただきありがとうございました。引き続きクールダウンで余韻を楽しみたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  

カテゴリー: 夢浮橋 | 6件のコメント

夢浮橋(7・8・9) 浮舟に薫の手紙届く

p292-302
7.妹尼、僧都の手紙で浮舟・薫の関係を知る
 〈p357 小野には、まだ朝早くに、僧都のところから手紙が来て、〉

 ①僧都から妹尼への手紙
  「昨夜、大将殿の御使にて、小君や参でたまへりし。事の心うけたまはりしに、あぢきなく、かへりて臆しはべりてなむと姫君に聞こえたまへ
  →薫が僧都と話をした。浮舟は「薫が自分のことを知った、えらいことになった」とピンと来るが妹尼には何のことかさっぱり分からない。

 ②僧都は自分の文を小君が帰りに小野へ届けたと思っているが、薫は一旦京へ帰り自分の文も書いて翌朝小君を改めて小野へ遣わした。
  →僧都の話を聞いた薫、少し考えを整理すべく小野への使いを一日遅らせたのであろうか。

8.小君来訪 浮舟、小君を見て母を思う
 〈p358 尼君はどうも腑に落ちないけれど、〉

 ①小君が持参した僧都から浮舟への手紙=重要
  「今朝、ここに、大将殿のものしたまひて、御ありさま尋ね問ひたまふに、はじめよりありしやうくはしく聞こえはべりぬ。、、、、、もとの御契り過ちたまはで、愛執の罪をはるかしきこえたまひて、一日の出家の功徳ははかりなきものなれば、なほ頼ませたまへとなん、、、、」
  →難しい文章である。僧都は浮舟に還俗を勧めたのか否か。
  →僧都の心には自分が早まって浮舟を出家させてしまったとの引け目もあり、大っぴらではないが還俗もありですよ、、とほのめかした感じであろうか。

 ②手紙を持参した小君を見る浮舟、即座に母のことを想う
  、、、まづ、母のありさまいと問はまほしく、こと人々の上はおのづからやうやう聞けど、親のおはすらんやうはほのかにもえ聞かずかしと、なかなかこれを見るにいと悲しくて、ほろほろと泣かれぬ。
  →薫や匂宮のことは忘れ去ってしまいたい。でも母のことだけは気がかりである。
  →「ああ、母と二人だった昔に戻りたい、、、」浮舟はそう思ったのではなかろうか。

9.浮舟、小君との対面をしぶる 小君不満
 〈p360 この少年が、いかにも可愛らしくて、〉

 ①浮舟に小君を会せようとする妹尼に浮舟はためらいつつ心中を吐露する。
  過ぎにし方のことを、我ながらさらにえ思ひ出でぬに、紀伊守とかありし人の世の物語すめりし中になん、見しあたりのことにやと、ほのかに思ひ出でらるることある心地せし。、、、
  →やっと口を開いた浮舟。これで妹尼も浮舟が薫の想い人で宇治で失踪した人だとピンと来たのであろう。

 ②浮舟 かの人もし世にものしたまへば、それ一人になん対面せまほしく思ひはべる。この僧都ののたまへる人などには、さらに知られたてまつらじとこそ思ひはべれ
  →母には逢いたい。でも薫には逢いたくない。浮舟の真情であろう。

 ③小君、几帳越しに浮舟に薫の手紙を渡す。
  けはひこと人には似ぬ心地すれば、そこもとに寄りて奉りつ。
  →姉浮舟の気配を察知する小君、顔を見せたくても見せられない浮舟。  
  →最後のクライマックスシーンである。

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夢浮橋(3・4・5・6) 浮舟に迫り来る薫の影

p284-292
3.薫、浮舟につき他意なきことを僧都に語る
 〈p351 薫の大将はどの時、女君の弟の少年をお供として〉

 ①かの御兄弟の童、御供に率ておはしたりけり
  →浮舟の異父弟。小君。薫が面倒見ている。うまい配役である。

 ②僧都「なにがし、このしるべにて、かならず罪得はべりなん。今は、御みづから立ち寄らせたまひて、、、」
  →僧都はこれ以上の関わりを断る。ヤバイとの直感からであろうか。

 ③僧都に対し薫の自己弁解が長々と語られる。
  、、、まして、いとはかなきことにつけてしも、重き罪得べきことはなどてか思ひたまへん、さらにあるまじきことにはべり。
  →殊更に淫欲のことを強調することもあるまいて。
  →さらりと「とにかく会って話をしたいので道をつけて欲しい」と言えばいいのでは。

4.小君、僧都の紹介状を得て帰途につく
 〈p353 僧都もいかにもとうなずいて、〉

 ①この兄妹の童を、僧都、目とめてほめたまふ。、、、文書きてとらせたまふ。
  「時々は、山におはして遊びたまへよ」と「すずろなるやうには思すまじきゆゑもありけり」とうち語らひたまふ。

  →この段、橋本治が自説を述べている(源氏供養)
   ・僧都は美しい少年への欲望に目が眩んでしまった。それで口説いている。
   ・手紙を渡すとき手を握って「愛らしい稚児だ」などと言ったのでしょう。
   →まあ色んな解釈があっていいのでしょうが、殊更そこまで考えなくてもと思います。

5.浮舟、薫の帰途を見、念仏に思いを紛らす
 〈p354 小野の里では、姫君を深々と茂った青葉の山に向かって、〉

 ①小野には、いと深く茂りたる青葉の山に向かひて、紛るることなく、遣水の蛍ばかりを昔おぼゆる慰めにてながめゐたまへるに、、
  →夏五月である。

 ②妹尼たちが横川から帰る薫一行の様子を語る。
  「昼、あなたにひきぼし奉れたりつる返り事に、大将殿おはしまして、御饗のことにはかにするを、いとよきをりとこそありつれ
  →中将のことケリをつけたのに今度はこともあろうに薫が身辺に迫ってくる。
  
 ③いとしるかりし随身の声も、うちつけにまじりて聞こゆ。月日の過ぎゆくままに、昔のことのかく思ひ忘れぬも、今は何にすべきことぞと心憂ければ、、
  →聞き覚えのある随身の声が耳に届く。
  →浮舟の心の葛藤やいかに。つくづく「ああ、尼になっていてよかった」と思ったのではないか。

6.薫、小君らを内密の使者として派遣する
 〈p355 薫の大将は、少年を帰り道の途中から〉

 ①殿に帰りたまひて、またの日、ことさらにぞ出だし立てたまふ。
  →一晩考えて考えを整理して改めて小君に言い渡す。薫ならではである。

 ②小君「を、を」と荒らかに聞こえゐたり。
  →小君、10才くらいであろうか。大役に身を震わせている感じである。 

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夢浮橋(1・2) 薫、僧都に会い浮舟のことを聞く

夢浮橋 明けくれに昔こひしきこころもて生くる世もはたゆめのうきはし 与謝野晶子

いよいよ最終帖、夢浮橋です。4日間の予定です。しっかり読み込んで有終の美を飾りたいと思います。

p274-284
1.薫、横川に僧都を訪れ、噂を確かめる
 〈寂聴訳巻十 p344 薫の大将は、比叡山においでになって、〉

 ①山におはして、例せさせたまふやうに、経、仏など供養ぜさせたまふ。またの日は、横川におはしたれば、僧都驚きかしこまりきこえたまふ
  →前帖からの続き。薫、横川へ。僧都は何ごとかと驚いたことだろう。
  →「ひょっとして浮舟のことかな、中宮に話してしまったし、、、」と不安がよぎったのかも知れない。

 ②薫「小野のわたりに知りたまへる宿やはべる
  →薫のストレートな問いかけ。僧都もありのままを語るしかない。

 ③薫「かたがた憚られはべれど、かの山里に、知るべき人の隠ろへてはべるやうに聞きはべりしを
   「御弟子になりて、忌むことなど授けたまひてけりと聞きはべるは、まことか
  →「私の大事な人を尼にしてくれたな、、、」僧都には脅しに聞こえたのではないか。

2.僧都、浮舟発見以来の始終を薫に語る
 〈p346 僧都は、「やっぱりそうだったか。〉

 ①法師といひながら、心もなく、たちまちにかたちをやつしてけること、と胸つぶれて、、
  →あの時浮舟が出家できてなかったら、、、。物語は大きく変わっていたことだろう。
  →僧都が出家させたところに大きな意味がある。

 ②僧都「かしこにはべる尼どもの、初瀬に願はべりて、、、、」
  →僧都は浮舟救出のいきさつを詳しく語る。
  →「ものよく言ふ僧都」のこと、薫は浮舟の様子が全て分かったことだろう。

 ③僧都「、、、さらに、しろしめすべきこととはいかでかそらにさとりはべらむ
  →薫を怒らせては身が危ない。威厳をもって弁解に努める僧都。

 ④夢の心地してあさましければ、つつみもあへず涙ぐまれたまひぬる
  →何はとまれ浮舟は生きていた!薫が涙に咽ぶのは自然であろう。

 ⑤薫 罪軽めてものすなれば、いとよしと心やすくなんみづからは思ひたまへなりぬるを、、
  →浮舟の出家を薫はどう思ったのか。恐らくまだ心の整理もつかない状態だったのでは。

 ⑥僧都の困惑
  かたちを変え、世を背きにきとおぼえたれど、髪、鬢を剃りたる法師だに、あやしき心は失せぬもあなり、まして女の御身はいかがあらん、いとほしく、罪得ぬべきわざにもあるべきかな、、、
  →法師になっても出家しても情欲は完全に拭い去ることはできない。
  →情欲を抑えて閉じ込めてしまうというのが出家の意味なのだろうか。

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手習 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

手習のまとめです。

和歌

105. はかなくて世にふる川のうき瀬にはたづねもゆかじ二本の杉
      (浮舟)   匂宮のこと、、薫のこと、、

106. 亡きものに身をも人をも思ひつつ棄ててし世をぞさらに棄てつる

      (浮舟)   死にきれず出家、、哀しすぎる

名場面

108. 疎ましげのわたりやと見入れたるに、白き物のひろごりたるをぞ見ゆる
      (p136   浮舟、僧都に発見さる)

109. いときよげなる男の寄り来て、「いざたまへ、おのがもとへ、と言ひて
      (p158   浮舟失踪前のことを回想)

[手習を終えてのブログ作成者の感想]

「手習」を終えました。浮舟再登場の新しいお話ですがいかが感じられましたか。
「東屋」~「浮舟」と躍動感あふれる物語で薫が如何に変身するのか、浮舟はどんな幸せをつかむのかと読者は三人三つ巴の恋の行方を心が躍る想いで読み進めて来ました。

そして「蜻蛉」を経て「手習」、舞台は宇治から小野へと変りました。そこでの風景は今までとは色調が違うように思えます。色で言えば喪服に使われる鈍色調でしょうか。明るさがない。一に浮舟の心象から来る感覚ですが何とも寒々しい感じがします。

慈悲深い僧都・妹尼は浮舟を献身的に世話するし、若公達中将からのアプローチもある。普通なら物語は暗から明へ、モノクロからカラーへと変わるところでしょうが逆にどんどん暗くなっていってるように感じます。

妹尼の愛情も女房たちの期待も中将の恋心もそして伝わり来る薫の想いも浮舟には心を動かされるものが何もない。あるのは「心のすれ違い」のみ。こういう状況にあっては読者もちょっとお手上げ、倦怠感疲労感すら感じます。言ってしまえばもうこれ以上物語が発展する可能性が感じられない思いです。紫式部もどう筆を収めるのか困ってしまったのかも知れません。

浮舟が手習に書きすさんだ二つの歌、現代の心理カウンセラーならどう分析するのでしょうか。

 亡きものに身をも人をも思ひつつ棄ててし世をぞさらに棄てつる
 尼衣かはれる身にやありし世のかたみに袖をかけてしのばん

そしていよいよグランドフィナーレ、夢浮橋です。元気にゴールテープを切りましょう!!

カテゴリー: 手習 | 8件のコメント

手習(30・31) 薫、浮舟のことを聞く

p262-268
30.薫、小宰相の話を聞いて驚き、中宮に対面
 〈p338 そうしたある日、薫の君が局へ立ち寄って話などなさるついでに、〉

 ①立ち寄りて物語などしたまふついでに、言ひ出でたり。めづらかにあやしと、いかでか驚かれたまはざらむ
  →薫が小宰相の君の所へ忍んで行った時、まさか寝物語にでもなかろうが。
  →話を聞いて一番に薫はどう思ったのだろう。
   ・よかった!浮舟は生きていた!すぐ会いに行こう!
   ・えっ、どうして!何か裏でもありそう。注意して対処しなくっちゃ。
   ・そうなの?そんなことが世間にバレると拙いことになるぞ。困ったなぁ。
   ・匂宮が知ったらとんでもないことになるぞ、それだけは阻止しなくっちゃ。

 ②聞きて後もなほをこがましき心地して、人にすべて漏らさぬを、なかなかほかには聞こゆることもあらむかし、、
  →すぐ世間の噂が気になる薫

 ③小宰相「かの僧都の山より出でし日なむ、尼になしつる。いみじうわづらひしほどにも、見る人惜しみてせさせざりしを、正身の本意深きよしを言ひてなりぬるとこそはべるなりしか
  →これも薫にはショックだったのでは。生きていた、それはよかったが俗世を捨て出家してたのでは縁りをもどす訳にはいかない。

 ④薫 「まことにそれと尋ね出でたらん、いとあさましき心地もすべきかな、いかでかはたしかに聞くべき、下り立ちて尋ね歩かんもかたくなしなどや人言ひなさん、、、」
  →あれこれ思い惑う薫。とにかく一番気になるのが世間体のこと。人間変らないものですねぇ。

 ⑤薫、中宮の所へ 
  薫「かのこと、またさなんと聞きつけたまへらば、かたくなにすきずきしうも思されぬべし。さらに、さてありけりとも、知らず顔にて過ぐしはべりなん
  →私も喋らないから匂宮には言ってくれるな。薫の牽制。
  →世間体を重んじる薫にとって匂宮が知って暴走しこれまでの経緯が露見しスキャンダルになってしまうことが一番怖い。

 段末脚注、中宮と薫の対話の呼吸について。
  →現代のサラリーマン社会でも似たようなもんですがね、、、。

31.薫、僧都を訪れ、浮舟との再会を用意する
 〈p342 「その女の住んでいる山里とはどこなのだろうか。〉

 ①薫、毎月八日の根本中堂参りにことつけ僧都を訪れんとす。
  →すぐ、僧都の所へ飛んで行けばいいのに。薫は変わらない。

 ②薫「あはれをも加へむとにやありけん。さすがに、その人とは見つけながら、あやしきさまに、容貌ことなる人の中にて、うきことを聞きつけたらんこそいみじかるべけれ、、」
  →段末脚注の通りだと思います。
  →薫よ、キミは一体どうしたいんかね?

という訳でいよいよ最終帖「夢浮橋」へと移ります。

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手習(28・29) 浮舟の一周忌過ぎ 薫、中宮のもとへ

p255-262
28.浮舟、自身の法要の衣を見て母を思い涙す
 〈p332 「薫の君はわたしのことを、お忘れになってはいらっしゃらないのだ」〉

 ①忘れたまはぬこそはとあはれと思ふにも、、、
  →紀伊守の言で薫が浮舟をまだ忘れかねていることが分かる。
  →浮舟の心も少しは動かされたのであろうか。

 ②小袿の単衣奉るを、うたておぼゆれば、心地あしとて手も触れず臥したまへり。
  →そりゃそうでしょう。自分の法要に用いられる着物を自分が縫うなんてできない。

 ③浮舟 尼衣かはれる身にやありし世のかたみに袖をかけてしのばん
  →う~~ん、やはりまだ俗世への未練が断ちきれないのでしょうか。

 ④浮舟「見しほどまでは、一人はものしたまひき。この月ごろ亡せやしたまひぬらん
  →妹尼に母のことを仄めかされては浮舟も母を思い出さざるを得ない。

29.浮舟の一周忌過ぎ、薫、中宮に悲愁を語る
 〈p335 薫の大将は、女君の一周忌の法要などをなさいまして、〉

 ①雨など降りてしめやかなる夜、后の宮に参りたまへり。
  →薫、浮舟の一周忌を終え中宮の所へ伺候。K28年3月か。

 ②薫「あやしき山里に、年ごろまかり通ひ見たまへしを、人の譏りはべりしも、さるべきにこそはあらめ、、、」
  →さすがに浮舟の法要を済ませた後で宇治のこと浮舟のことが心を占めていたのであろう。薫は中宮の前で問わず語りに宇治のことを話し出す(女一の宮の病気のこともあったろうに)。

 ③中宮「そこには恐ろしき物や住むらん。いかやうにてか、かの人は亡くなりにし
  →僧都から聞いて浮舟の今を知っている中宮。さてどう薫に知らしめたらいいものか。

 ④中宮→小宰相「君ぞ、ことごと聞きあはせける。かたはならむことは、とり隠して、さることなんありけると、おおかたの物語のついでに、僧都の言ひしこと語れ
  →薫にどう話していいものか難しいところ。ここは有能なる女房小宰相の君の出番であろう。

 ⑤中宮「さまざまなることにこそ。また、まろはいとほしきことぞあるや
  →中宮にしてみれば息子が弟の愛人に手を出しその結果女は身を投げ生き残って小野にいるということになる。弟に向かって自分から僧都の話は語れないであろう。
 

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手習(26・27) K28年正月 薫の消息、浮舟の耳に入る

p246-254
26.新年、浮舟往時を追懐し手習に歌を詠む
 〈p325 年も改まりました。〉

 ①年も返りぬ。春のしるしも見えず。
  →波乱万丈のK27年が明けK28年。だが浮舟の心には春は遠い。

 ②「君にぞまどふ」とのたまひし人は、心憂しと思ひはてにたれど、なほそのをりなどのことは忘れず。
  →正月は何かと物を思う時。やはり匂宮のことが思い出される。

 ③浮舟 我世になくて年隔たりぬるを、思ひ出づる人もあらむかし、、
  →自分を思い出してくれる人(母・乳母・右近)もあるのだろうか。心のどこかに思い出してくれる人がいることを期待している。

 ④浮舟 雪ふかき野辺の若菜も今よりは君がためにぞ年もつむべき
  →百人一首No.15 光孝天皇
   君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ

 ⑤春や昔のと、こと花よりもこれに心寄せのあるは、飽かざりし匂ひのしみけるにや。
  →梅の花につけ匂宮の匂いを思い出す。(薫ではないでしょう、脚注9)

 ⑥浮舟 袖ふれし人こそ見えね花の香のそれかとにほふ春のあけぼの
  →匂宮に抱かれた時を思い出しての官能的な歌
  →人間たるもの髪を下ろして出家しても完全に昔のことを忘れ去ることなどできないということだろうか。

27.紀伊守小野に来たり、薫の動静を語る
 〈p327 その頃、大尼君の孫で紀伊の守だった人が、〉

 ①大尼君の孫の紀伊守なりけるが、、、三十ばかりにて、
  →初出の狂言回し役。薫に仕えている。薫より2才年上。そこそこの重臣か。

 ②紀伊守「、、常陸の北の方は、おとづれきこえたまふや
  妹尼「、、常陸はいと久しくおとづれきこえたまはざめり。、、」
  →浮舟は自分の母親のことを言われているのかとびっくりする。別人なのだが。

 ③紀伊守「、、故宮の御むすめに通ひたまひしを。まづ一ところは一年亡せたまひにき。その御妹、また忍びて据ゑたてまつりたまへりけるを、去年の春また亡せたまひにければ、、」
   「、、なにがしも、かの女の装束一領調じはべるべきを、せさせたまひてんや、、」
  →「えっ、私の一周忌の法要に用いる衣服を!」浮舟の心境やいかに。

 ④紀伊守「この大将殿の御後のは、劣り腹なるべし。ことごとしくももてなしたまはざりけるを、いみじく悲しびたまふなり
  →薫の気持ちが浮舟に伝えられる。

 ⑤薫 見し人は影もとまらぬ水の上に落ちそう涙いとどせきあへず
  →四十九日が過ぎ薫はもう浮舟のことなど忘れたのだろうと思ってたのですがねぇ。

  この段、紀伊守と妹尼の会話で京での薫の様子が浮舟に伝わる仕組みとなっている。
  →読者としては浮舟に「この頃薫は小宰相の君にご執心で事もあろうに女一の宮にものぼせ上っているようですよ、、」と教えてあげたいところです。

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手習(24・25) しつこいぞ、中将!

p236-246
24.僧都、帰山の途中立ち寄り 浮舟を励ます
 〈p316 一品の宮はすっかり御全快あそばして僧都も山へ上りました。〉

 ①妹尼「なかなか、かかる御ありさまにて、罪も得ぬべきことを、のたまひもあはせずなりにけることをなむ。いとあやしき
  →妹尼が僧都を恨むのも無理はない。一番浮舟のことを想って面倒をみている妹尼の留守中に無断で出家させたのは、高僧としていかがなものか。

 ②僧都「このあらん命は、葉の薄きが如し
   「松門に暁到りて月徘徊す
  →白氏文集を引用。思えば源氏物語は桐壷での長恨歌の引用から始まっていた。
  →僧都も教養高いが紫式部もさすがである。
   (法師は常々仏典のみに集中しているので漢詩や和歌などは苦手なのだろう)
   
 ③法師なれど、いとよしよししく恥づかしげなるさまにてのたまふことどもを、思ふやうにも言ひ聞かせたまふかなと聞きゐたり
  →浮舟は僧都が妹尼を説得するのを聞いてほっとしたことだろう。

25.中将来訪、浮舟の尼姿を見る 浮舟の精進
 〈p317 今日は、終日吹いている風の音も、〉

 ①中将、浮舟が出家したと知った後もしつこくやってくる。

 ②中将「さま変りたまへらんさまを、いささか見せよ
  →ちょっとこの男オカシイのではないですか。余程今の奥さんとうまくいってないのでしょうか。

 ③薄鈍色の綾、中には萱草など澄みたる色を着て、いとささやかに、様体をかしく、いまめきたる容貌に、髪は五重の扇を広げたるやうにこちたき末つきなり。こまかにうつくしき面様の、化粧をいみじくしたらむやうに、赤くにほひたり
  →浮舟の出で立ち。最上級の描写ではなかろうか。中将ならずともビビッときそうである。

 ④障子の掛金のもとにあきたる穴を教へて、紛るべき几帳など引きやりたり。
  →オイオイ、そんなサービスするから中将がつけ上がるのに。

 ⑤中将「なかなか見どころまさりて心苦しかるべきを、忍びたるさまに、なほ語らひとりてん
  →参りますねえ、こういう男には。コメントのしようがありません。

 ⑥中将 おほかたの世を背きける君なれど厭ふによせて身こそつらけれ
  →出家した尼さんへの恋歌。この男はきっと地獄に落ちることでしょう。

 ⑦中将「はらからと思しなせ。はかなき世の物語なども聞こえて、慰めむ
  →紫式部もこれでもかと異常を書き立ててる感じです。あり得ないでしょうに。

 ⑧この本意のことしたまひて後より、すこしはればれしうなりて、尼君とはかなく戯れもしかはし、碁打ちなどしてぞ明かし暮らしたまふ
  →中将のことはともかく浮舟は出家してようやく心の平常を取り戻しつつある。

 [源氏物語に下らない男もけっこう出てきますが、本段の中将もワーストランキングに入るのではないでしょうか]

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