p262-268
30.薫、小宰相の話を聞いて驚き、中宮に対面
〈p338 そうしたある日、薫の君が局へ立ち寄って話などなさるついでに、〉
①立ち寄りて物語などしたまふついでに、言ひ出でたり。めづらかにあやしと、いかでか驚かれたまはざらむ。
→薫が小宰相の君の所へ忍んで行った時、まさか寝物語にでもなかろうが。
→話を聞いて一番に薫はどう思ったのだろう。
・よかった!浮舟は生きていた!すぐ会いに行こう!
・えっ、どうして!何か裏でもありそう。注意して対処しなくっちゃ。
・そうなの?そんなことが世間にバレると拙いことになるぞ。困ったなぁ。
・匂宮が知ったらとんでもないことになるぞ、それだけは阻止しなくっちゃ。
②聞きて後もなほをこがましき心地して、人にすべて漏らさぬを、なかなかほかには聞こゆることもあらむかし、、
→すぐ世間の噂が気になる薫
③小宰相「かの僧都の山より出でし日なむ、尼になしつる。いみじうわづらひしほどにも、見る人惜しみてせさせざりしを、正身の本意深きよしを言ひてなりぬるとこそはべるなりしか」
→これも薫にはショックだったのでは。生きていた、それはよかったが俗世を捨て出家してたのでは縁りをもどす訳にはいかない。
④薫 「まことにそれと尋ね出でたらん、いとあさましき心地もすべきかな、いかでかはたしかに聞くべき、下り立ちて尋ね歩かんもかたくなしなどや人言ひなさん、、、」
→あれこれ思い惑う薫。とにかく一番気になるのが世間体のこと。人間変らないものですねぇ。
⑤薫、中宮の所へ
薫「かのこと、またさなんと聞きつけたまへらば、かたくなにすきずきしうも思されぬべし。さらに、さてありけりとも、知らず顔にて過ぐしはべりなん」
→私も喋らないから匂宮には言ってくれるな。薫の牽制。
→世間体を重んじる薫にとって匂宮が知って暴走しこれまでの経緯が露見しスキャンダルになってしまうことが一番怖い。
段末脚注、中宮と薫の対話の呼吸について。
→現代のサラリーマン社会でも似たようなもんですがね、、、。
31.薫、僧都を訪れ、浮舟との再会を用意する
〈p342 「その女の住んでいる山里とはどこなのだろうか。〉
①薫、毎月八日の根本中堂参りにことつけ僧都を訪れんとす。
→すぐ、僧都の所へ飛んで行けばいいのに。薫は変わらない。
②薫「あはれをも加へむとにやありけん。さすがに、その人とは見つけながら、あやしきさまに、容貌ことなる人の中にて、うきことを聞きつけたらんこそいみじかるべけれ、、」
→段末脚注の通りだと思います。
→薫よ、キミは一体どうしたいんかね?
という訳でいよいよ最終帖「夢浮橋」へと移ります。
小宰相から浮舟の生存を知った薫、驚いたのはもちろんでしょうが相変わらずあれやこれや思案にくれる。
世間体や憶測が入り混じってすぐに行動しないところは変わっていないですね。
ここは何が何でも一番に駆けつけ自身の目で確認すべきでしょう。
匂宮なら後先考えず行動するのでは?
薫の取った行動は中宮への面会。
言いたいことの100%は言えない、お互い姉弟ではありながらも空気を読みながらの会話なのでしょうか?
貴族とはそんなものなんでしょうか。
そして最後の手段は僧都に逢うこと。
よろづに道すがら思し乱れけるにや
何をか言わんや・・・
とうとう最後まで変われない薫、一体薫とは?
それに比べて浮舟は健気そのもの・・・
在りし世の生々流転哀しけり
法の御胸に帰らざらめや
ありがとうございます。
1.浮舟の失踪からちょうど1年、薫も四十九日まではうろたえ悲しみ苦悩していたのでしょうが日が経つにつれ哀愁も薄れ、時々はふと宇治のことを思い出すものの平素は遠い存在になっていたのではないでしょうか(匂宮なんぞ浮舟のことなど忘却の彼方でしょう)。
→別に薫を非難するつもりはなくそれが人間の摂理だと思います。
小宰相から浮舟存命のことを聞いたときは飛び上がったことでしょう。
~~死んだ筈だよ浮舟さん、生きていたとはお釈迦様でも知らぬ仏の浮舟さん~~
ってな感じでしょうか。さて、どう対処するか。こういう咄嗟の時には人間はどうしても地が出てしまう。薫が先ずは世間体を気にするのも仕方ないのかも知れません。
2.手習の歌、ありがとうございます。哀しい歌ですねぇ。やはり浮舟は仏さまを頼りに生きていくしかないのかなあ、、、と思ってしまいます。
さあ、これで残すところ後一首。名残を惜しみつつ詠んでいただきますように。