手習(28・29) 浮舟の一周忌過ぎ 薫、中宮のもとへ

p255-262
28.浮舟、自身の法要の衣を見て母を思い涙す
 〈p332 「薫の君はわたしのことを、お忘れになってはいらっしゃらないのだ」〉

 ①忘れたまはぬこそはとあはれと思ふにも、、、
  →紀伊守の言で薫が浮舟をまだ忘れかねていることが分かる。
  →浮舟の心も少しは動かされたのであろうか。

 ②小袿の単衣奉るを、うたておぼゆれば、心地あしとて手も触れず臥したまへり。
  →そりゃそうでしょう。自分の法要に用いられる着物を自分が縫うなんてできない。

 ③浮舟 尼衣かはれる身にやありし世のかたみに袖をかけてしのばん
  →う~~ん、やはりまだ俗世への未練が断ちきれないのでしょうか。

 ④浮舟「見しほどまでは、一人はものしたまひき。この月ごろ亡せやしたまひぬらん
  →妹尼に母のことを仄めかされては浮舟も母を思い出さざるを得ない。

29.浮舟の一周忌過ぎ、薫、中宮に悲愁を語る
 〈p335 薫の大将は、女君の一周忌の法要などをなさいまして、〉

 ①雨など降りてしめやかなる夜、后の宮に参りたまへり。
  →薫、浮舟の一周忌を終え中宮の所へ伺候。K28年3月か。

 ②薫「あやしき山里に、年ごろまかり通ひ見たまへしを、人の譏りはべりしも、さるべきにこそはあらめ、、、」
  →さすがに浮舟の法要を済ませた後で宇治のこと浮舟のことが心を占めていたのであろう。薫は中宮の前で問わず語りに宇治のことを話し出す(女一の宮の病気のこともあったろうに)。

 ③中宮「そこには恐ろしき物や住むらん。いかやうにてか、かの人は亡くなりにし
  →僧都から聞いて浮舟の今を知っている中宮。さてどう薫に知らしめたらいいものか。

 ④中宮→小宰相「君ぞ、ことごと聞きあはせける。かたはならむことは、とり隠して、さることなんありけると、おおかたの物語のついでに、僧都の言ひしこと語れ
  →薫にどう話していいものか難しいところ。ここは有能なる女房小宰相の君の出番であろう。

 ⑤中宮「さまざまなることにこそ。また、まろはいとほしきことぞあるや
  →中宮にしてみれば息子が弟の愛人に手を出しその結果女は身を投げ生き残って小野にいるということになる。弟に向かって自分から僧都の話は語れないであろう。
 

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2 Responses to 手習(28・29) 浮舟の一周忌過ぎ 薫、中宮のもとへ

  1. 青玉 のコメント:

    浮舟、自身の法要の衣を前に複雑な思いでしょう。
    あやしうめづらかなる心地すれど、かけても言ひ出でられず

    母のことを思い気持ちは切なく乱れる。
    尼衣かはれる身にやありし世のかたみに袖をかけてしのばん

    さて一周忌も過ぎ薫、中宮の前で宇治の話題に・・・
    中宮は僧都から聞いていた浮舟の事情を小宰相から間接的に伝わるように仕向ける。
    中宮としては我が子が弟の恋人を奪ったことゆえ直接には言いにくい話題でしょう。
    小宰相に託せばいずれ伝わる・・・中宮と小宰相、暗黙の了解と言った所でしょうか。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.尼衣かはれる身にやありし世のかたみに袖をかけてしのばん

        浮舟の心内が手習と称して色々語られますがどうも俗世をきっぱりとは捨てきれてないようですね。そもそも出家したら仏道修行にこそ励むべきでやることは写経であって手習ではないでしょうに。ある面浮舟の出家は中将に言い寄られるのが煩わしくて発作的にやってしまったと言えるのかも知れません。

      2.明石の中宮が終始トップレデイとして登場しますが、極めて常識的である意味無色に描かれているように思います。やはり時の(天皇は勿論)中宮が飛んだり跳ねたりでは世の中治まりませんものね。作者の心得かと思います。

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