p284-292
3.薫、浮舟につき他意なきことを僧都に語る
〈p351 薫の大将はどの時、女君の弟の少年をお供として〉
①かの御兄弟の童、御供に率ておはしたりけり。
→浮舟の異父弟。小君。薫が面倒見ている。うまい配役である。
②僧都「なにがし、このしるべにて、かならず罪得はべりなん。今は、御みづから立ち寄らせたまひて、、、」
→僧都はこれ以上の関わりを断る。ヤバイとの直感からであろうか。
③僧都に対し薫の自己弁解が長々と語られる。
、、、まして、いとはかなきことにつけてしも、重き罪得べきことはなどてか思ひたまへん、さらにあるまじきことにはべり。
→殊更に淫欲のことを強調することもあるまいて。
→さらりと「とにかく会って話をしたいので道をつけて欲しい」と言えばいいのでは。
4.小君、僧都の紹介状を得て帰途につく
〈p353 僧都もいかにもとうなずいて、〉
①この兄妹の童を、僧都、目とめてほめたまふ。、、、文書きてとらせたまふ。
「時々は、山におはして遊びたまへよ」と「すずろなるやうには思すまじきゆゑもありけり」とうち語らひたまふ。
→この段、橋本治が自説を述べている(源氏供養)
・僧都は美しい少年への欲望に目が眩んでしまった。それで口説いている。
・手紙を渡すとき手を握って「愛らしい稚児だ」などと言ったのでしょう。
→まあ色んな解釈があっていいのでしょうが、殊更そこまで考えなくてもと思います。
5.浮舟、薫の帰途を見、念仏に思いを紛らす
〈p354 小野の里では、姫君を深々と茂った青葉の山に向かって、〉
①小野には、いと深く茂りたる青葉の山に向かひて、紛るることなく、遣水の蛍ばかりを昔おぼゆる慰めにてながめゐたまへるに、、
→夏五月である。
②妹尼たちが横川から帰る薫一行の様子を語る。
「昼、あなたにひきぼし奉れたりつる返り事に、大将殿おはしまして、御饗のことにはかにするを、いとよきをりとこそありつれ」
→中将のことケリをつけたのに今度はこともあろうに薫が身辺に迫ってくる。
③いとしるかりし随身の声も、うちつけにまじりて聞こゆ。月日の過ぎゆくままに、昔のことのかく思ひ忘れぬも、今は何にすべきことぞと心憂ければ、、
→聞き覚えのある随身の声が耳に届く。
→浮舟の心の葛藤やいかに。つくづく「ああ、尼になっていてよかった」と思ったのではないか。
6.薫、小君らを内密の使者として派遣する
〈p355 薫の大将は、少年を帰り道の途中から〉
①殿に帰りたまひて、またの日、ことさらにぞ出だし立てたまふ。
→一晩考えて考えを整理して改めて小君に言い渡す。薫ならではである。
②小君「を、を」と荒らかに聞こえゐたり。
→小君、10才くらいであろうか。大役に身を震わせている感じである。
僧都への廻りくどい言い方はやはり薫らしい言い訳に聞こえます。
とにかく僧都の手紙を小君に託すことで一旦は山を降りる・・・
僧都の小君に対する声掛け。
橋本説は思いもよりません、そんな解釈もあるのですね。
私はただ空蝉での小君を思い出しただけですが・・・
そんな薫一行帰途の様子を小野の里から遠く眺める浮舟。
遣水の蛍、松明の灯、随身の声、動揺は深まるばかり、それを振り払うように
「阿弥陀仏に思ひ紛らはして」切ないですね。
そして改めて、小君を遣いに出す薫。
さて首尾よく運ぶのやら・・・
ありがとうござます。
僧都に浮舟との再会のとりなしを頼むも断られ窮する薫、困ったものですねぇ。僧都との話で過去を振り返るにも言い訳・正当化ばかりじゃないですか。これでは浮舟に近づいてもどうにもならないでしょう。
薫は先ず過去を踏まえて浮舟にどう対処するのか自分の心の整理をつけるべきでしょう。どうして浮舟は入水まで考えるに至ったのか、悪かったのは自分なのか浮舟なのか、今後二人はどうあるべきなのか、、。
出家を断行しさっぱりした気分でいる浮舟(多少の未練はあるにせよ大筋では引き返せない決断をした)とまだアレコレ戸惑っている薫では既に勝負は決しているというところでしょうか。