夢浮橋(7・8・9) 浮舟に薫の手紙届く

p292-302
7.妹尼、僧都の手紙で浮舟・薫の関係を知る
 〈p357 小野には、まだ朝早くに、僧都のところから手紙が来て、〉

 ①僧都から妹尼への手紙
  「昨夜、大将殿の御使にて、小君や参でたまへりし。事の心うけたまはりしに、あぢきなく、かへりて臆しはべりてなむと姫君に聞こえたまへ
  →薫が僧都と話をした。浮舟は「薫が自分のことを知った、えらいことになった」とピンと来るが妹尼には何のことかさっぱり分からない。

 ②僧都は自分の文を小君が帰りに小野へ届けたと思っているが、薫は一旦京へ帰り自分の文も書いて翌朝小君を改めて小野へ遣わした。
  →僧都の話を聞いた薫、少し考えを整理すべく小野への使いを一日遅らせたのであろうか。

8.小君来訪 浮舟、小君を見て母を思う
 〈p358 尼君はどうも腑に落ちないけれど、〉

 ①小君が持参した僧都から浮舟への手紙=重要
  「今朝、ここに、大将殿のものしたまひて、御ありさま尋ね問ひたまふに、はじめよりありしやうくはしく聞こえはべりぬ。、、、、、もとの御契り過ちたまはで、愛執の罪をはるかしきこえたまひて、一日の出家の功徳ははかりなきものなれば、なほ頼ませたまへとなん、、、、」
  →難しい文章である。僧都は浮舟に還俗を勧めたのか否か。
  →僧都の心には自分が早まって浮舟を出家させてしまったとの引け目もあり、大っぴらではないが還俗もありですよ、、とほのめかした感じであろうか。

 ②手紙を持参した小君を見る浮舟、即座に母のことを想う
  、、、まづ、母のありさまいと問はまほしく、こと人々の上はおのづからやうやう聞けど、親のおはすらんやうはほのかにもえ聞かずかしと、なかなかこれを見るにいと悲しくて、ほろほろと泣かれぬ。
  →薫や匂宮のことは忘れ去ってしまいたい。でも母のことだけは気がかりである。
  →「ああ、母と二人だった昔に戻りたい、、、」浮舟はそう思ったのではなかろうか。

9.浮舟、小君との対面をしぶる 小君不満
 〈p360 この少年が、いかにも可愛らしくて、〉

 ①浮舟に小君を会せようとする妹尼に浮舟はためらいつつ心中を吐露する。
  過ぎにし方のことを、我ながらさらにえ思ひ出でぬに、紀伊守とかありし人の世の物語すめりし中になん、見しあたりのことにやと、ほのかに思ひ出でらるることある心地せし。、、、
  →やっと口を開いた浮舟。これで妹尼も浮舟が薫の想い人で宇治で失踪した人だとピンと来たのであろう。

 ②浮舟 かの人もし世にものしたまへば、それ一人になん対面せまほしく思ひはべる。この僧都ののたまへる人などには、さらに知られたてまつらじとこそ思ひはべれ
  →母には逢いたい。でも薫には逢いたくない。浮舟の真情であろう。

 ③小君、几帳越しに浮舟に薫の手紙を渡す。
  けはひこと人には似ぬ心地すれば、そこもとに寄りて奉りつ。
  →姉浮舟の気配を察知する小君、顔を見せたくても見せられない浮舟。  
  →最後のクライマックスシーンである。

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2 Responses to 夢浮橋(7・8・9) 浮舟に薫の手紙届く

  1. 青玉 のコメント:

    僧都の手紙が薫の使いより一足早く着いたために妹尼には事情が呑み込めない。
    しかし浮舟の困惑は計りしれない・・・

    そこへ僧都の手紙を持った小君の来訪。
    薫との一部始終が知らされる。
    今朝、ここに、大将殿のものしたまひて~・・・一日の出家の功徳ははかりなきものなれば、なほ頼ませたまへとなん
    どのように解釈すればいいのでしょうね。難しいところです。

    小君を前にして思うのはやはり母のこと、肉親への懐かしさ。
    様々な思いを断ち切るようにわが弟にも会おうとしない浮舟・・・

    肉親への情に揺れる心を鬼にしてもう過去には後戻りしないとのきっぱりした浮舟の哀しい決意に打たれます。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      僧都の浮舟への手紙は何とも中途半端ですね。薫という権力者の想い人を本人の希望だけで性急に出家させてしまった、、、後悔と恐れからでしょうが最高僧職者としてはお粗末ではないでしょうか。還俗を仄めかされても浮舟は戸惑いこそすれ「ハイ、元に戻ります」なんて言える筈がないでしょう。浮舟の本当の心を解っていないとしか言いようがありません。

      私は初めてこの所を読んだ時は浮舟ももう少し柔軟に考えて薫との縁りを戻せばいいのに、、、と思ったものでした。でも2回3回と読み込むにつけそれはあり得ないと確信するようになりました。母にだけは逢いたい気持ちはあるのでしょうが薫や匂宮には絶対に逢いたくない。それが浮舟の真情だと思います。哀しいことだけどそれしかない。。。浮舟には同情しつつその決心を応援したい気持ちでおります。

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