人物談義(20)物語を彩る脇役たち 

今までの人物談義で取り上げなかった脇役たちです。
「こんな人もいましたねぇ、、」映画のエンドロールみたいなものです。

(登場順)
〈第一部〉
【弘徽殿大后】・・物語中第一のヒール役。でも女性では物語中第一の漢籍通。
【祖母北の方】・・母に死なれた源氏を3~6才育てた。源氏にとっては恩人だった筈。
【高麗人の観相見】・・物の怪八卦は科学であった。物語がこれに沿って進む。
【大宮】・・人物談義で取り上げ損ねたが評価:良、好き嫌い度:大好きであります。
【四の君】・・右大臣の娘、頭中の正妻。あまり出番なかったのが残念。
【伊予介】・・朴訥な受領、まさか妻空蝉が源氏に寝取られていようとは、、。
【紀伊守】・・伊予介の子、義母空蝉に色目を。物語中好色度ナンバーワンか。
【小君】・・空蝉の弟。源氏と男色を、、いやそんなことはあるまい。。
【中将のおもと】・・起きられぬ六条御息所に代って源氏を見送る。何とも色っぽい。
【尼君】・・紫の上の祖母。源氏が紫の上が欲しいと言い出した時はびっくりしたろう。
【犬君】・・「雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠の中に籠めたりつるものを
【兵部卿宮】・・紫の上の父、藤壷の兄。どうもいけ好かない御仁でありました。
【冷泉帝】・・もののまぎれの果実。父想い、妻(秋好中宮)想いの実直な人。
【中川の女】・・源氏を振った女、、、って言ってもそりゃ待ってられないでしょう。
【麗景殿女御】・・「人目なく荒れたる宿は橘の花こそ軒のつまとなりけれ
【筑紫の五節】・・何度か名前は登場するがさっぱり得体の分からない人であった。
【醍醐の阿闍梨】・・末摘花の兄。妹同様どうも浮世離れした感じだったが。。
【末摘花の叔母】・・この人も邪悪。末摘花に女房が勤まるわけもなかろうに。
【蛍兵部卿宮】・・源氏の異母弟。ただただ風流だけの人。玉鬘に空振りはお気の毒。
【夜居の僧都】・・冷泉帝に秘密を奏上。口の軽い坊主め、、、。
【藤典侍】・・惟光の娘、夕霧の愛人に。夕霧が見初めるところはいい場面だった。
【今上帝】・・時の天皇なのでコメントは差し控えましょうか。それにしても子沢山。
【豊後介】・・玉鬘に献身的に仕え京へ連れ帰る。忠義ないい男。晴れて源氏の家司に。
【大夫監】・・九州の豪族、荒々しいが何となく憎めない。
【三条】・・玉鬘の下女。ご飯が頭から離れない太っちょ。右近との会話面白かった。
【髭黒大将】・・玉鬘争奪レース@六条院における大ダークホース。万馬券の大穴に。
【髭黒の北の方】・・火取りの灰をふりかける。心の病気は痛ましかった。
【真木柱】・・「今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな

〈第二部〉
【落葉の宮】・・「落葉」はひどいのでは。でも六条院で結局は幸せだったのか。
【一条御息所】・・あの手紙が雲居雁に奪われていなければ、、、。
【小野の律師】・・霧深い朝、この律師も余計なことを、、、。

〈宇治十帖〉
【宇治の阿闍梨】・・人情に疎くとても高徳の僧とは思えない。
【六の君】・・藤典侍腹夕霧の娘、きれいだったのだろう。惟光に見せたかった。
【中将の君】・・浮舟の母、ふくよかな苦労人とお見受けしたが。
【常陸介】・・典型的な受領像。でも女性関係は潔癖そう。
【仲人】・・この人、最高。帝の言葉を語るところでは笑いが止まらなかった。
【左近少将】・・憎まれ役だがよく考えれば無理もなからん。
【内舎人】・・荒っぽく怖い武士の世界を垣間見た感じ。
【横川僧都】・・初め俗っぽく思えたが浮舟を救い、出家させたところは偉かった。
【母尼】・・80才余、物語中最老齢か。いびきのところが面白かった。
【妹尼】・・この人の献身的振舞いには頭が下がりました。浮舟は幸せものです。
【中将】・・浮舟への懸想の話は鬱陶しかった。出家を後押しした男で良しとしようか。
【小君】・・何となく空蝉の小君を思い浮かべてしまった。

・・・・・・・・・・・・・(完)・・・・・・・・・・・

どうぞ誰でも何人でもピックアップしてコメントつけてやってください。本人も喜ぶと思いますよ。。

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人物談義(19)乳母、乳母子、女房たち

乳母、乳母子、女房たち即ち女性の脇役たちです。男性に比べその数は圧倒的です。如何に源氏物語が女性いっぱいの華やかな物語であるかということでしょう。思いつくまま一口コメント的に思い出してみたいと思います。

先ず密通の手引き者から、
【王命婦】
 藤壷の侍女、乳母子、もののまぎれの協力者。あの密通場面、すごくリアルでした。
   命婦の君ぞ、御直衣などはかき集めもて来たる(若紫13)

 そして生まれた皇子に会えず嘆く源氏に対する返歌
  見ても思ふ見ぬはたいかに嘆くらむこや世の人のまどふてふ闇(紅葉賀)
  →源氏もこの人には頭が上がらなかったのではなかろうか。
  →窮極の「いろごのみ」の協力者とも言えようか。

【弁のおもと】
 玉蔓の侍女、髭黒を手引。
  →この真木柱の冒頭にはびっくりしました。喜ぶ髭黒、戸惑う玉鬘。

【小侍従 & 弁の君(尼)】
 女三の宮の乳母子と柏木の乳母子。二人で語らって柏木を女三の宮に手引き。
  →小侍従は女三の宮にどことなく似て抜けた感じ。
  →弁の君は薫に出生の秘密を明かす=第二部と宇治十帖を繋ぐ重要な役割。

源氏に関係する女房たち
【中務・中将】
 葵の上付きの侍女、源氏と情けを交す。その後紫の上に仕え源氏に係る。
 →源氏の召人・愛人たちであります。こういう世界だったのだなあと思うだけです。

【少納言の乳母】
 紫の上の乳母、ずっと母代り。須磨時代紫の上が留守を守れたのはこの人のお蔭であろう。
 →源氏が紫の上を連れ去る場面で戸惑いながら車に乗るところが印象深かった。

【宣旨の娘】
 明石の姫君の乳母、源氏が選りすぐりの教育掛りとして明石に送り込む。
 →田舎出の明石の君母子が京へ出て姫は中宮にまで上りつめる。宣旨の娘あってのこと。源氏はわざわざ宣旨の娘を訪問し、歌を交して明石下向を頼み込む。
  (宣旨の娘)うちつけの別れを惜しむかごとにて思はぬ方に慕ひやはせぬ(澪標)
 →この場面、姫を絶対立派に育て上げるとの源氏の熱意に感動しました。

【大輔の命婦】
 源氏の乳母子、源氏を末摘花へ手引 
 →この人、末摘花のことを知っていたのか知らずにか。面白かったです。

夕顔の右近
【右近】
 夕顔の乳母子、「夕顔」で惟光とともに大活躍、源氏に認められ紫の上の侍女に。
 執念で夕顔の遺児玉鬘を長谷寺椿市で探し出す。
 →私はこの右近が大好きです。「夕顔」でのこの人の活躍に魅せられて源氏物語を読み続ける決心がついたってものです。

さて、ここから宇治十帖です。
【右近】
 浮舟の乳母子。薫が匿った浮舟を突如襲った匂宮。
 ウソをつき続けて秘密は隠さねばならない。
 →ウソつき右近、大活躍でした。浮舟を親身に思いやるいい女房だと思いました。

【侍従】
 浮舟の侍女。匂宮と浮舟の対岸への逃避行に同行。浮舟に匂宮を勧める。
 →右近とのコンビは絶妙。時方とよろしくやるところも好ましい。
 →匂宮も目をつけている。浮舟の侍女らしい容貌麗しい女であったのだろう。

【浮舟の乳母】
 二条院で匂宮が浮舟に無体に及ぼうとしたとき身をもって浮舟を守る。(東屋23~27)
 → 「降魔の相」かガマ(蝦蟇)相か。匂宮も手をやいたことでしょう。傑作でした。

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人物談義(18)惟光・良清・時方 従者たち

主要人物を終えて主だった従者たちです。三人取り上げました。

【惟光】
 ①惟光=評価:良 好き嫌い度:大好き
  →お傍去らずの惟光。主人がいいとお供もいい。好感度ピカ一の男ではないでしょうか。
  →忠実、こまめ、労を惜しまない、ユーモアあり。源氏に倣って手も早い。
  →源氏がお姫さまをアタックする先駆けとして女房を籠絡し道を作っておくという図式。

  惟光 歌2首 代表(というほどでもないが)
   住吉のまつこそものは悲しけれ神代のことをかけて思へば(澪標)
   →明石から京へ帰って住吉大社に願ほどきに。主従とも感慨深かったことだろう。

 ②源氏の乳母子。兄弟のように育ったのだろう。「例の惟光」「お傍去らずの惟光」
  その惟光が大活躍するのが夕顔。但し夕顔が取り殺された肝心の時にどこかへしけ込んでおり(あり処定めぬ者にて)中々来ない。
  →「早く出て来てやって、惟光!」読者もそう叫んだことでしょう。
  →やっと現れた惟光。それを見て気がゆるみ泣き伏す源氏。リアルな場面でした。

 ③その他に惟光が活躍したのは、
  ・紫の上 拉致事件
  ・朧月夜の身元調査
  ・須磨に同行
  
 ④娘(五節舞姫→後の藤典侍)は夕霧に見初められ愛人になり子どもが5人できる。
  その六の君は匂宮の正妻に(やがては中宮、国母となる可能性だって)。
  →明石の入道にも匹敵する大出世、、、だが第二部以降は一切登場していない。

【良清】
 ①良清=評価:並 好き嫌い度:普通
  →惟光より官位は上。それだけ重要視もされたのだろう。

  良清 歌1首
   かきつらね昔のことぞ思ほゆる雁はその世のともならねども(須磨)
   →流謫の須磨で主従で中秋の名月を愛であう。

 ②播磨守の息子として明石物語の水先人的な役割。
  →北山での明石一族の紹介 & 須磨から明石への誘い。

 ③良清は明石の君を得たいと文を送るが入道、明石の君は無視。でもこれが入道に源氏を明石に迎え入れようと思わせるきっかけになる。
  →逆に言えば「明石の君は良清(明石の巻の時点で少納言)が恋を仕掛ける程度のクラスの女性であった」ことを伝える仕掛けになっている。

【時方】
 ①時方=評価:良 好き嫌い度:好き
  →匂宮の浮舟プロジェクトの推進者。匂宮にとっての惟光みたいな従者。

  歌は残念ながらない。歌を詠む暇などないほど匂宮と浮舟の恋は切羽詰まっていたということか。

 ②対岸に隠れ家を探し匂宮・浮舟の恋の逃避行を演出、それに同行。
  →自分も侍従といい仲になりチャッカリ楽しむところも面白い。

 ③宇治に居る浮舟を捜し出すところから、初めて契り居直り続ける匂宮を取り繕い、恋の逃避行を実行させ、浮舟失踪後は真相解明に奔走、、、。
  →時方、頭脳明晰、分析力・行動力抜群そして多分イケメンだったのでしょうね。 
   

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人物談義(17)浮舟

さて最後のヒロイン浮舟です。これもコメントが飛び交いましたね。好きも嫌いも大いに語っていただきましょう。

【浮舟】
 ①浮舟=評価:良 好き嫌い度:好き
  →だって浮舟が好きにならないと宇治十帖が面白くありませんもの。
  →一目見たらボオ~っとしそうなオーラを持った女性と勝手に決め込んでいます。

  浮舟 歌26首(女君ではNo.1 次は紫の上23首 明石の君22首) 代表
   橘の小島の色はかはらじをこのうき舟ぞゆくへ知られぬ(浮舟)
   →何といってもこの歌でしょう。「浮舟」、、、つくづくいい名前ですねぇ。

 ②浮舟って中の品の女性と言いますが、父は八の宮だから桐壷帝の孫であり源氏の姪にあたるのです。これって凄いじゃないですか。なまじ母が中将の君という侍女に過ぎなかったばかりに。
  →つくづく「母の父」が如何に重要視されたのか思い知らされます。

 ③八の宮に認知されなかったばかりに受領に嫁いだ母について常陸で暮らす。
  中将との結婚話~中の君を介しての薫との出会い~匂宮のアタック
  →東屋・浮舟は本当に面白かった。第一部・第二部の光源氏の物語にはない新鮮さを感じました。
  →仲人口の話、匂宮が浮舟を捜し出すに至るミステリータッチ、嘘つき右近の活躍、、等々。

 ④薫と匂宮、二人の男に愛された女の悲劇。悩む浮舟、迫る薫と匂宮。
  →これぞ窮極の板挟みでしょう。外野席の我々はなんやかや言いますが浮舟も薫も匂宮も三人ともそれぞれに真面目に己の信ずる所に従いベストを尽くしたのだと思います。
  →人間難しいものだとつくづく思います。
  →私なんぞこんな難しい局面は避けて通りたい方なのであまり縁がありませんが。。

 ⑤手習~夢浮橋 浮舟の悟りは見事でした。出家が効いています。あの時の僧都の決断には拍手を送りたいものです。
  →「出家」とは欲望を諦めることでしょうか。浮舟は本当にスッキリ人生リセットができたのだと思います。
  →最後で薫が「人の隠しすゑたるにやあらん」と呟くところがありますがそれを聞いたら浮舟は「あほくさ!」と呟き返すでしょうね。

 ⑥先日夕顔の人物談義で浮舟は夕顔に通じるものがあると書いてコメントもいただきました。その後何故私がそんな風に思うようになったのか考えたのですが、結局夕顔~玉鬘~浮舟は「私の好きな女」なんだ、それに尽きるなあと思うようになりました。

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人物談義(16)薫と匂宮

さて、宇治十帖の主人公薫と匂宮です。
改めて考えてよくぞこの対照的な二人を生み出してくれたものだと感心します。
もう議論は尽くされた感がありますがちょっと復習してみましょう。

【薫】
 ①薫=評価:良 好き嫌い度:嫌い
  →多分能力性格考え方、私に似た男だと思います。ウジウジが嫌いです。

  薫 歌57首(源氏に次いで多い) 代表
   おぼつかな誰に問はましいかにしてはじめもはても知らぬわが身ぞ(匂兵部卿)
   法の師とたづぬる道をしるべにて思はぬ山にふみまどふかな(夢浮橋)
   →2首あげました。この2首で薫を全て語っていると思います。

 ②生まれつき芳香を持った「薫る大将」。やはり出生の秘密を背負ってるというところが薫を考える原点ではなかろうか。「橋姫」で弁から父柏木の遺書を渡される場面は身震いしました。ショックだったことでしょう。

 ③「私は許されざる者である」この意識が常に心にあり劣等感、自信のなさから自分の自由に振舞えず、「この私がそんなことしていいのか、そんなことする資格があるのか」と自分に問い続けたのではないでしょうか。

 ④女二の宮を得ても飽き足らず女一の宮に憧れる薫。それでいて浮舟にも中途半端な愛に終始した薫。どっちつかずですねぇ。
  →薫は匂宮が浮舟に通っていると知ったとき(浮舟25)すぐ匂宮の所へかけて行って譲るべきではなかったでしょうか。「匂宮は飽きたら女一の宮の女房に下げ渡すのではないか、、、」など余計な心配でしょうに。

【匂宮】
 ①匂宮=評価:良 好き嫌い度:好き
  →源氏の「色好み」を受け継いだ匂宮、読者が魅了されない筈がありません。

  匂宮 歌24首 代表
   年経ともかはらぬものか橘の小島のさきに契る心は(浮舟)
   →小舟に揺られ抱き抱かれての対岸への道行。名場面でしたねぇ。。

 ②薫と対照的にピカピカの出自。今上帝の三の宮、それだけに東宮より気楽。正に源氏の色好みを受け継いだ男と言えましょう。自信と自負に満ち溢れている。
  →薫との対比で言えば「オレは許された者である」この意識でしょうか。

 ③堅苦しい伯父の娘六の君には最初気が進まないものの妻(正妻)としてからは満足して可愛く思い、並行して一度契った中の君を大切に思い二条院に迎え入れ妻とし、そして中の品浮舟との恋に全てを忘れて耽溺する。
  →浮舟と初めて契った翌日「今日は何がなんでもここに居続ける!」って場面がありました。いやあ、凄かった。 
  →源氏おじいさんがいたらきっと「やるのう!」と満足げにつぶやくのじゃないでしょうか。

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人物談義(15)宇治の父娘(八の宮・大君・中の君)

宇治十帖に入ります。まだ読後の印象が覚めやりませんが。
【八の宮】
 ①八の宮=評価:悪 好き嫌い度:嫌い
  →どっちつかず、自己中心的、男になりきれなかった男、浮舟を認知しなかった男

  八の宮 歌5首 代表
   われ亡くて草の庵は荒れぬともこのひとことはかれじとぞ思ふ(椎本)
   →薫に娘の後見を依頼しながら娘には軽薄な結婚をするなと言う。どっちなんじゃ!

 ②椎本の総括の所で八の宮の生き方について盛り上がりましたね。もう一度見てください。
  →俗聖なんて中途半端 言動は無責任 こういうのが一番困りますねぇ。
  →物語中、困った男ランキングのアンケートとれば間違いなく第一位でしょう。

 ③薫が慕って宇治を訪れてくれたK20年の時点で姫たちのことは薫にそっくり任せ自分は出家して山に籠るのが一番よかったのでは。

【大君】
 ①大君=評価:並 好き嫌い度:嫌い
  →薫にはイライラしましたが大君にもイライラしました。一番嫌なタイプです。

  大君 歌13首 代表
   山姫の染むる心は分かねどもうつろふ方や深きなるらん(総角)
   →大君は中の君の父親代わりにならざるを得なかった。これも八の宮の罪であります。

 ②何故大君はかくも頑迷に結婚を拒否したのか。挙句自分を追い込んで死んでしまった大君。大君を救う方法はなかったのか、、、。盛り上がりましたね。
  →大君を救う方法、それこそ源氏に聞いてみたいですねぇ。
  →多分源氏はこう言うでしょう「ボクならじっと目を見て「いいだろう!」ってそっと囁く、それで終わりさ。でもそりゃ、キミたちには無理だってもんだよ」

 ③長い長い総角の主人公大君。でも浮舟物語のインパクトの下に残念ながら大君はさっぱり印象に残ってないのですがいかがでしょう。

【中の君】
 ①中の君=評価:良 好き嫌い度:好き
  →何と言っても匂宮夫人に納まり皇子を産んだ中の君。ひょっとすると皇子は皇位に上る可能性だって。現実を受け入れた中の君、私は好きです。

  中の君 歌19首 代表
   この春はたれにか見せむなき人のかたみにつめる峰の早蕨(早蕨)
   →父を亡くし姉を亡くし傷心の中の君。でも匂宮でよかった。

 ②匂宮と結ばれ匂宮を信じ二条院に移り住み二条院の女主となった中の君。
  薫が未練たらしくちょっかいをかけてくる。
  →最初手引をしたとは言え今やれっきとした人妻。迫る薫が何とも理解できませんでした。
  →浮舟出来後も薫が一番好きなのは中の君だったのかもしれません。

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人物談義(14)女三の宮・柏木・朱雀帝

第二部の主要人物三人を取り上げました。
【女三の宮】
 ①女三の宮=評価:劣 好き嫌い度:嫌い
  →一度ならず柏木とズルズルというところが許せませんでした。

  女三の宮 歌7首 代表
   立ちそひて消えやしなましうきことを思ひみだるる煙くらべに(柏木)
   →柏木さえ現れなければ女三の宮は皇女らしく心穏やかに暮らせたものを。

 ②何と言っても源氏物語をドラマチックにした大立役者です。若菜上で女三の宮が六条院春の町に降臨したばかりに今までの全てがオセロゲームのように白(明)から黒(暗)にひっくり返ったのです。このストーリー仕立ては見事としかいいようがありません。

  この時源氏40才、紫の上32才、柏木24才、女三の宮14才でした。

 ③何故源氏は無理筋とも思える女三の宮を妻に迎える気になったのか。
  →藤壷の姪という紫のゆかりもあるでしょうが、やはり先帝朱雀院の皇女。これぞ源氏の「色好み」故ではないでしょうか。

 ④登場場面全てでこれぞ皇女という言動に終始している。何もできない。何もしようとしない。
  →柏木に襲われたのが21才の時。この時点でも幼い感じで性的魅力は全く感じられないのだが。

 ⑤源氏に密通がバレてすぐ出家したのは優れた決断。評価できよう。

【柏木】
 ①柏木=評価:並 好き嫌い度:嫌い
  →いくらなんでも「色好み」をはき違えたような行動には反発を覚えるのですが。。

  柏木 歌15首 代表
   いまはとて燃えむ煙もむすぼほれ絶えぬ思ひのなほや残らむ(柏木)
   →情熱の炎と言おうか破滅主義と言おうか。

 ②蹴鞠、垣間見のシーン(唐ねこ事件)は衝撃的でした。
  それから6年、執念で思いを遂げる。
  →この若菜下26は凄かった。今読み返しましたが疲れました。
  →初めは確かに一線を越える気はなかったのかも知れません。でも成り行きで、、、。そりゃあそうでしょう。止まらないでしょうね。

 ③女二の宮(落葉の宮)に飽き足らず女三の宮とコトを起し破滅してしまう柏木。
  →「あはれ衛門督!」そして事情を知らぬ内に息子を亡くした父頭中も可哀そうでした。

【朱雀帝(院)】
 ①朱雀帝=評価:並 好き嫌い度:嫌い
  →直感的かもしれませんがどうもスッキリした人物とは思えないのです。

  朱雀帝 歌8首 代表
   背きにしこの世にのこる心こそ入る山道のほだしなりけれ(若菜上)
   →女三の宮を降嫁させて紫の上に贈った歌。子を想う親の心がよく表れている。

 ②弘徽殿大后-朱雀帝ラインは本来一番勢力盛んな筈なのだが物語の冒頭以来終始光源氏の引き立て役に甘んじてきた。この朱雀帝、マザコン的で何ともひ弱、頼りない帝であった。
   →何ごとにも勝る源氏へのブラザーコンプレックスもあったのだろう。

 ③第二部冒頭で朱雀院が放った一石(女三の宮を源氏に嫁がせたこと)が見事に六条院のバランスを打ち砕き源氏を不幸へと陥れて行く。意図的な源氏への復讐ではないにせよ、結果的に源氏は痛い目に合ってしまったと言えようか。

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人物談義(13) 雲居雁・近江の君

玉鬘に続く頭中の娘二人です。
【雲居雁】
 ①雲居雁=評価:並 好き嫌い度:好き
  →夕霧との恋の仕方も家庭生活も極めて普通常識的。そこが好きです。

  雲居雁 歌7首 代表
   浅き名を言ひ流しける河口はいかが漏らしし関の荒垣(藤裏葉)
   →「河口の関」三重県津市白山町川口 これを記憶しておかない手はありません。

 ②母が頭中と離婚し按察大納言の北の方に。頭中に引き取られ祖母大宮のもとで育てられる。
  夕霧と同じく母なし子。筒井筒の恋が芽生える。
  →筒井筒の恋はいい。微笑ましい感じで大好きです。
   男 筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
   女 くらべこしふりわけ髪も肩すぎぬ君ならずして誰かあぐべき

  頭中は東宮への入内を図るが結局夕霧と結ばれる。
  →これはよかったと思いました。この辺源氏と頭中の権力争いの所でした。

 ③そして夕霧の巻、落葉の宮に狂う真面目夫夕霧。
  雲居雁は七人もの子どもを抱え家事育児に明け暮れる。
  →貴族女性らしからぬお母さんのイメージでした。くすっと笑いが出ました。
  →手紙を奪い取るシーン、実家に帰るシーン(センター試験)

 ④宇治十帖では娘(大君)が東宮に嫁いでいる筈だが大君も母の雲居雁も全く登場しなかった。
  →あのお母さんがどんなおばあさんになっているのか興味あったのですが。。

 ⑤夫夕霧は真面目男であったがそれでも藤典侍という愛人がおり後には落葉の宮という皇女を妻に迎え入れる(身分的には落葉の宮の方が正妻になったのかも)。
  →でも雲居雁は夫の女性問題にそんなに悩んでるようには感じないがいかがでしょう。
  →性格なのか。子どもがいる強みか。筒井筒の恋で女上位だったからか。

【近江の君】
 ①近江の君=評価:悪 好き嫌い度:嫌い
  →面白いのですが止まらず畳み掛けてくる感じが嫌です(お笑いタレントに多いですね)。

  近江の君 和歌2首 代表
   草わかみひたちの浦のいかが崎いかであひ見んたごの浦波(常夏)
   →スバラシイ!この時代多分「爆笑トンチンカン和歌集」なんて隠れたベストセラーがあって紫式部もそれを参照したのじゃないでしょうか。

 ②源氏の玉鬘に対抗して頭中が探し出してきた近江の君。これでもかと言う一番の滑稽譚でした。
  →紫式部も随分思い切って下品なことを書いたものだと感心しました。

 ③「小賽、小賽」「御返しや、御返しや」&「明石の尼君、明石の尼君」
  →近江の君、双六が相当好きだったようですね。でもセンスあり、傑作です。

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人物談義(12) 夕霧

源氏の息子、中盤以降は物語を引っ張る中心人物となります。
【夕霧】
 ①夕霧=評価:優 好き嫌い度:好き
  →大スターの息子、それ故の苦労もあったでしょう。まともに育ってエライ!と思います。

  夕霧 歌12首 代表
   くれなゐの涙にふかき袖の色をあさみどりとや言ひしをるべき(少女)
   →六位からスタートさせられた夕霧、紫式部の教育論であります。
   山里のあはれをそふる夕霧にたち出でん空もなき心地して(夕霧)
   →この歌から「夕霧」と名付けられていますが、この命名ちょっと違和感ありです。

 ②葵の上の忘れ形見、母なし子。祖母大宮に可愛がられ後花散里が母代りになる。
  →源氏との父子関係は結構淡々としていたが母性愛には恵まれていたのではないか。

 ③源氏の突き放した厳しい教育。少女の巻の学問論・教育論は読みごたえがあった。
  大学、博士、蛍雪の功、寮試、放島の試み、爪しるし、文人・擬生・進士
  →夕霧の受験勉強。恋人雲居雁を想いながらよく頑張りました。

 ④雲居雁との筒井筒の恋。
  →これは微笑ましかった。二人ともめげるな、ガンバレ!と思いました。
  →政略結婚ばかりの当時こんな幼友だち同士(と言っても従姉弟だが)の結婚は珍しかったのであろうか。

 ⑤「野分」で女君たちを見舞いに回る場面。
  夕霧の目線で女君たち(花散里、秋好中宮、明石の君、玉鬘)のことが語られていた。
  そして風の中垣間見た義母紫の上。
   春の曙の霞の間より、おもしろき樺桜の咲き乱れたるを見る心地す
  →源氏は夕霧を警戒していたが夕霧に限ってそれはないでしょう。でも隠されると見たくなるもの。夕霧もこの日の紫の上の面影は一生心に残っていたことだろう。

 ⑥柏木の友だち、ライバルとしての夕霧。
  源氏と頭中、夕霧と柏木、そして薫と匂宮
  →このライバル構図が物語を安定したものにしていると感じます。

  上昇志向で情熱一途な柏木、冷静な夕霧。その真面目・冷静な夕霧が柏木未亡人女二の宮(落葉の宮)に夢中になる。
  →中年真面目男の浮気。「夕霧」の巻は現代に通じる通俗小説でした。

 ⑦惟光の娘藤典侍を愛人にし正妻雲居雁と半分づつ通った夕霧。藤典侍は夕霧の子どもを五人も生む。その内の一人が六の君で匂宮の正妻になる。
  →狂言回し的だが宇治十帖でも重要人物として登場する夕霧。この人が一番長く源氏物語に登場している人物ではなかろうか。

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人物談義(11) 朝顔・玉鬘

【朝顔】
 ①朝顔=評価:並 好き嫌い度:嫌い
  →六条御息所と並び称される雅で教養豊かな貴婦人  
  →源氏に楯突くなんて、、と言う訳ではありませんが、何となく好きになれません。

  朝顔 歌7首
   秋はてて霧のまがきにむすぼほれあるかなきかにうつる朝顔(朝顔)
   →この返歌に対する源氏の贈歌が何ともすごい。
    見しをりのつゆわすられぬ朝顔の花のさかりは過ぎやしぬらん(源氏@朝顔)

 ②源氏の従姉弟(源氏とどちらが年上だろう、まあ同年齢か)。葵の上が亡くなって六条御息所とうまく行ってなかった状況で朝顔が後妻になる第一候補だったのだろう。でも六条御息所の二の舞になるのを恐れて決断できない。
  →結婚恐怖症と言おうか。宇治の大君と通じる所あろうか。

 ③桐壷院の崩御で斎院になって24~32才まで8年間賀茂神社に仕える。
  →斎宮となり伊勢に行った秋好中宮は15~21才の6年間だった。朝顔は一番花盛りの8年間。これは大きい。気の毒としか言いようがない。

 ④結局源氏の求婚にも応じず紫の上はピンチを救われた(朝顔)
  →この朝顔の巻は何ともモヤモヤした巻でした。

【玉鬘】
 ①玉鬘=評価:良 好き嫌い度:大好き
  →田舎で育った夕顔の忘れ形見が花の都で噂の姫に!シンデレラ物語ですねぇ。

  玉鬘 歌20首 代表
   声はせで身をのみこがす蛍こそいふよりまさる思ひなるらめ(蛍)
   →六条院に言い寄る男たちを巧みにはぐらかす玉鬘。蛍宮がかわいそう。

 ②年月隔たりぬれど、飽かざりし夕顔をつゆ忘れたまはず、、、
  →夕顔の遺児が登場!「玉鬘」の冒頭を読んで読者は「こりゃ、面白いぞ」と思ったことでしょう。

 ③九州での苦労話~椿市での右近との出会い。
  →右近と言えば夕顔、ずっと夕顔の面影が頭から離れない展開でした。
  →この出会いのシーン、投稿を読み返しても興奮して書いてること分かります。

 ④そして玉鬘十帖。玉鬘は六条院の女主人公になり源氏の演出で男たちを魅惑し続ける。
  初音~野分 六条院を舞台に繰り広げられる王朝絵巻。
  →正月から月を追っての歳時記風叙述が素晴らしかった。

  玉鬘十帖 玉鬘、初音、胡蝶、蛍、常夏、篝火、野分、行幸、藤袴、真木柱
  →この名前覚えておくだけで王朝の雅びが語れると思っています。
  →正月の風景(初音)、春の楽宴(胡蝶)、蛍のシルエット(蛍)、嵐の様子(野分)

 ⑤源氏との恋愛沙汰があったが、それはご愛嬌ではなかろうか。
  →玉鬘を介しての物語論は読みごたえがあった。

 ⑥あっと驚く髭黒の強奪。
  →紫式部のどや顔が目に浮かびました。

 ⑦玉鬘の晩年(竹河)はなくもがなでしょうに。
  →週刊誌によくある「昔の有名スターはいま!」なんて感じで蛇足だと思いました。

 ⑧玉鬘、頭がよくて控え目で男を嫌わず男に溺れず、、、。中の品の女性で私が一番好きな女性です(上の品は紫の上)。

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