人物談義(20)物語を彩る脇役たち 

今までの人物談義で取り上げなかった脇役たちです。
「こんな人もいましたねぇ、、」映画のエンドロールみたいなものです。

(登場順)
〈第一部〉
【弘徽殿大后】・・物語中第一のヒール役。でも女性では物語中第一の漢籍通。
【祖母北の方】・・母に死なれた源氏を3~6才育てた。源氏にとっては恩人だった筈。
【高麗人の観相見】・・物の怪八卦は科学であった。物語がこれに沿って進む。
【大宮】・・人物談義で取り上げ損ねたが評価:良、好き嫌い度:大好きであります。
【四の君】・・右大臣の娘、頭中の正妻。あまり出番なかったのが残念。
【伊予介】・・朴訥な受領、まさか妻空蝉が源氏に寝取られていようとは、、。
【紀伊守】・・伊予介の子、義母空蝉に色目を。物語中好色度ナンバーワンか。
【小君】・・空蝉の弟。源氏と男色を、、いやそんなことはあるまい。。
【中将のおもと】・・起きられぬ六条御息所に代って源氏を見送る。何とも色っぽい。
【尼君】・・紫の上の祖母。源氏が紫の上が欲しいと言い出した時はびっくりしたろう。
【犬君】・・「雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠の中に籠めたりつるものを
【兵部卿宮】・・紫の上の父、藤壷の兄。どうもいけ好かない御仁でありました。
【冷泉帝】・・もののまぎれの果実。父想い、妻(秋好中宮)想いの実直な人。
【中川の女】・・源氏を振った女、、、って言ってもそりゃ待ってられないでしょう。
【麗景殿女御】・・「人目なく荒れたる宿は橘の花こそ軒のつまとなりけれ
【筑紫の五節】・・何度か名前は登場するがさっぱり得体の分からない人であった。
【醍醐の阿闍梨】・・末摘花の兄。妹同様どうも浮世離れした感じだったが。。
【末摘花の叔母】・・この人も邪悪。末摘花に女房が勤まるわけもなかろうに。
【蛍兵部卿宮】・・源氏の異母弟。ただただ風流だけの人。玉鬘に空振りはお気の毒。
【夜居の僧都】・・冷泉帝に秘密を奏上。口の軽い坊主め、、、。
【藤典侍】・・惟光の娘、夕霧の愛人に。夕霧が見初めるところはいい場面だった。
【今上帝】・・時の天皇なのでコメントは差し控えましょうか。それにしても子沢山。
【豊後介】・・玉鬘に献身的に仕え京へ連れ帰る。忠義ないい男。晴れて源氏の家司に。
【大夫監】・・九州の豪族、荒々しいが何となく憎めない。
【三条】・・玉鬘の下女。ご飯が頭から離れない太っちょ。右近との会話面白かった。
【髭黒大将】・・玉鬘争奪レース@六条院における大ダークホース。万馬券の大穴に。
【髭黒の北の方】・・火取りの灰をふりかける。心の病気は痛ましかった。
【真木柱】・・「今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな

〈第二部〉
【落葉の宮】・・「落葉」はひどいのでは。でも六条院で結局は幸せだったのか。
【一条御息所】・・あの手紙が雲居雁に奪われていなければ、、、。
【小野の律師】・・霧深い朝、この律師も余計なことを、、、。

〈宇治十帖〉
【宇治の阿闍梨】・・人情に疎くとても高徳の僧とは思えない。
【六の君】・・藤典侍腹夕霧の娘、きれいだったのだろう。惟光に見せたかった。
【中将の君】・・浮舟の母、ふくよかな苦労人とお見受けしたが。
【常陸介】・・典型的な受領像。でも女性関係は潔癖そう。
【仲人】・・この人、最高。帝の言葉を語るところでは笑いが止まらなかった。
【左近少将】・・憎まれ役だがよく考えれば無理もなからん。
【内舎人】・・荒っぽく怖い武士の世界を垣間見た感じ。
【横川僧都】・・初め俗っぽく思えたが浮舟を救い、出家させたところは偉かった。
【母尼】・・80才余、物語中最老齢か。いびきのところが面白かった。
【妹尼】・・この人の献身的振舞いには頭が下がりました。浮舟は幸せものです。
【中将】・・浮舟への懸想の話は鬱陶しかった。出家を後押しした男で良しとしようか。
【小君】・・何となく空蝉の小君を思い浮かべてしまった。

・・・・・・・・・・・・・(完)・・・・・・・・・・・

どうぞ誰でも何人でもピックアップしてコメントつけてやってください。本人も喜ぶと思いますよ。。

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7 Responses to 人物談義(20)物語を彩る脇役たち 

  1. 青玉 のコメント:

    こうやって眺めてみるとそうそうたるメンバーで実に様々な人物に出会ってきたのだなと今更ながら感心しております。

    祖母北の方(桐壺更衣の母で源氏の祖母)
    大宮(葵上の母で夕霧の祖母) 
    尼君(紫の上の祖母)
    この三人のお婆さまがた、大好きです。
    慈愛に満ちて穏やかでありのままのすべてを受け入れてくれる豊かな母性愛。

    思えば私自身、祖母との出会いがないのです。
    父方、母方共に早逝で幼い頃から祖母への憧れが大きかったのです。
    ですから自分が祖母になった時のうれしさは格別でした。
    世の中、お婆様と呼ばれたくないご仁が多かれど私は文句なしに「お祖母ちゃん」と呼ばれたかったのです。
    お婆ちゃんと呼ばれたくないなんて勿体ないじゃありませんか。
    このお三方は私の永遠の憧れでもあり理想のお婆様です。

    好きな人にもう一人真木柱を挙げておきます。和歌も素晴らしい!!
       今はとて宿離れぬとも馴れきつる真木の柱はわれを忘るな

    いつの世も嫌われ者ほど印象に残る人物であるのは変わらないです。
    その筆頭が弘徽殿大后。
    でも出自、教養とも文句なし。
    ただ性格が悪かっただけで力量はあったと思います。

    もう一人憎まれ役としては夜居の僧都です。
    冷泉帝に秘密を漏らすなんてとんでもない!!
    でも冷泉帝は偉いです、さすが帝、謹厳実直、冷静です。
    薫のようにはならなかった。

    しかし考えてみればこれらすべての人物は物語上誰一人として必要不可欠であり我々を充分に楽しませてくれました。
    泣いたり笑ったり怒ったりしたのも懐かしく「皆さんありがとう!!」と言いたいです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      本当にこれら登場人物には愛着を感じますよねぇ。皆いい役割を果たしてくれました。舞台のフィナーレで源氏を中央に脇役の人たちも皆勢ぞろいして観客に手を振って挨拶をしている様を思い浮かべると感無量です。

      お祖母ちゃん、よかったですねぇ。いいお祖父ちゃんはあまり出てこなかったようですが。。。

      中でも私が一番好きだったのは大宮です。おっしゃる通り「慈愛に満ちて穏やかでありのままのすべてを受け入れてくれる豊かな母性愛」の人でした。最愛の葵の上を亡くした後も婿の源氏に優しくし、夕霧を育てる。母無し子の夕霧にとって大宮は母そのものだったことでしょう。父源氏は夕霧には何もしていない。なのに12才の元服後二条東院で勉強させるべく大宮から引き離し花散里に後見させる。その時の大宮の嘆き。でもその後も正月の衣服を用意するなど面倒を見続ける。
        →大宮と夕霧。心温まる家族愛でありました。

  2. 青玉 のコメント:

    少し気がかりなことを発見しました。
    先ほどからリンボウ先生訳「早蕨」に入りました。
    いきなり冒頭が
    日の光藪しわかねば石上ふりにし里に花も咲きけり
    を引いています
    えっ!!石上(いそのかみ) 先日のhodakaさんの句を思い起こしました。
       小春日の千木金色に布留の杜
    そこで我らのテキストを取り出してみました。
    早蕨P12 脚注一
    日の光藪しわかねば石上ふりにし里に花も咲きけり(古今・雑上 布留今道)の歌とあります。
    やはり日本最古の神社の石上神社のことですね。

  3. 青玉 のコメント:

    散歩中、昨日の和歌が気になり調べてみました。
    石上と布留に反応してどうも早とちりしたようです。

    詞書によれば石上の意味は石上並松(いそのかみのなむまつ)という人物のことらしいです。
    宮仕えをせずに石上にこもっていたところ、急に位階を賜ったので、その祝いを伝える時に詠んでおくった歌ということらしいです。
    ひょっとしてこの人物は石上神社の布留近辺に住んでいたのかもしれないと思うのももしかして勝手な解釈かも知れませんね。
    すぐ何かに結びつけたくなる私の悪癖です。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。リンボウ訳は引歌を全部載せて(訳もつけて)くれている所がいいですね。

      私もリンボウ訳、原文、古今和歌集とたどってみました。でも石上はどう考えても地名が妥当でしょうね。人名だなど詞書がなくては想像もつきませんものね。古今集144番の石上寺というのがどこなのか調べてませんが石上神社に近いのかもしれませんね(ちょっとwiki見ただけですが天理の同じところだとする説もあるようですよ)。

  4. 式部 のコメント:

     弘徽殿大后は源氏の君や左大臣側からみれば悪者で憎らしい女性となりますが、見方を変えて右大臣側から見てみましょう。
     気はよさそうですが思慮分別の少し足りない軽い感じの父右大臣、優しいけれど頼りなげで自信なさげな息子朱雀帝(院)、容貌、教養とも魅力的だけれど自由奔放な妹朧月夜。
     これだけそろっていれば弘徽殿大后は、自分がしっかりリードしなければ右大臣家は大変なことになってしまうと考えたでしょうね。
     おそらく教養も政治的手腕も抜群だったでしょうから、充分源氏の敵対勢力となりえたのでしょうね。
     この人がいなくては、源氏物語の第一部の面白さは半減してしまいます。

     宇治十帖での「仲人」、この人の作り話は面白かった。
     よくぞここまで書いたと紫式部に脱帽です。作者も楽しんで書いていますね。
     平安時代の仲人も、こんなものだったのですかねえ~
     当時の読者(女房)たちが笑い転げた様が目に浮かびます。
     

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      弘徽殿大后へのエール、その通りだと思います。ちょっとこの人、年令がよく分からないんですがいいキャラクターしてますよね。桐壷冒頭、光源氏の母がいじめられる、、その張本人が弘徽殿大后なんですからね。その後も源氏に対する悪態集の数々、思い起こせば懐かしいです。容貌の程が書かれてませんがどうだったのでしょうね。ヒール役ですからきっと目がつり上がったやせぎすの怖いオバサンだったのでしょうか。桐壷冒頭の更衣いじめの場面で読者はそういうイメージをたたきこまれましたからねぇ。。

      弘徽殿大后、おっしゃる通りこの人は第一部になくてはならない人です。弘徽殿大后をテーマにした話いっぱい出ています。

       →「十二単衣を着た悪魔」(内館牧子)あまり覚えていません、ということは大した話じゃなかったのでしょう。

      仲人、、、、いいですねぇ。私は源氏物語でこの部分が一番愉快だと思います。右を向いてはああ言い、左を向いてはこう言う。世の中面白くていいですねぇ。。。
            ちょっと酔っ払ってます。 

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