人物談義(18)惟光・良清・時方 従者たち

主要人物を終えて主だった従者たちです。三人取り上げました。

【惟光】
 ①惟光=評価:良 好き嫌い度:大好き
  →お傍去らずの惟光。主人がいいとお供もいい。好感度ピカ一の男ではないでしょうか。
  →忠実、こまめ、労を惜しまない、ユーモアあり。源氏に倣って手も早い。
  →源氏がお姫さまをアタックする先駆けとして女房を籠絡し道を作っておくという図式。

  惟光 歌2首 代表(というほどでもないが)
   住吉のまつこそものは悲しけれ神代のことをかけて思へば(澪標)
   →明石から京へ帰って住吉大社に願ほどきに。主従とも感慨深かったことだろう。

 ②源氏の乳母子。兄弟のように育ったのだろう。「例の惟光」「お傍去らずの惟光」
  その惟光が大活躍するのが夕顔。但し夕顔が取り殺された肝心の時にどこかへしけ込んでおり(あり処定めぬ者にて)中々来ない。
  →「早く出て来てやって、惟光!」読者もそう叫んだことでしょう。
  →やっと現れた惟光。それを見て気がゆるみ泣き伏す源氏。リアルな場面でした。

 ③その他に惟光が活躍したのは、
  ・紫の上 拉致事件
  ・朧月夜の身元調査
  ・須磨に同行
  
 ④娘(五節舞姫→後の藤典侍)は夕霧に見初められ愛人になり子どもが5人できる。
  その六の君は匂宮の正妻に(やがては中宮、国母となる可能性だって)。
  →明石の入道にも匹敵する大出世、、、だが第二部以降は一切登場していない。

【良清】
 ①良清=評価:並 好き嫌い度:普通
  →惟光より官位は上。それだけ重要視もされたのだろう。

  良清 歌1首
   かきつらね昔のことぞ思ほゆる雁はその世のともならねども(須磨)
   →流謫の須磨で主従で中秋の名月を愛であう。

 ②播磨守の息子として明石物語の水先人的な役割。
  →北山での明石一族の紹介 & 須磨から明石への誘い。

 ③良清は明石の君を得たいと文を送るが入道、明石の君は無視。でもこれが入道に源氏を明石に迎え入れようと思わせるきっかけになる。
  →逆に言えば「明石の君は良清(明石の巻の時点で少納言)が恋を仕掛ける程度のクラスの女性であった」ことを伝える仕掛けになっている。

【時方】
 ①時方=評価:良 好き嫌い度:好き
  →匂宮の浮舟プロジェクトの推進者。匂宮にとっての惟光みたいな従者。

  歌は残念ながらない。歌を詠む暇などないほど匂宮と浮舟の恋は切羽詰まっていたということか。

 ②対岸に隠れ家を探し匂宮・浮舟の恋の逃避行を演出、それに同行。
  →自分も侍従といい仲になりチャッカリ楽しむところも面白い。

 ③宇治に居る浮舟を捜し出すところから、初めて契り居直り続ける匂宮を取り繕い、恋の逃避行を実行させ、浮舟失踪後は真相解明に奔走、、、。
  →時方、頭脳明晰、分析力・行動力抜群そして多分イケメンだったのでしょうね。 
   

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3 Responses to 人物談義(18)惟光・良清・時方 従者たち

  1. 青玉 のコメント:

    これら三人の従者、主人の為にはわが身を惜しまず立ち働き気配りも抜群。
    特に乳兄弟でもあった惟光はおっしゃるように好感度一番で印象に残ります。

    あくまでも主人に忠実で良きにつけ悪しきにつけ主人は絶対。
    機転が利きユーモアもあり主従は信頼と強い絆で結ばれている。
    その陰でそれぞれ自らもおこぼれに与るようにちゃっかりと楽しんでいるのは共通ですね。
    主人の危機にはいち早く駆けつけ命まで投げ打つほどの覚悟は見上げたものです。
    有能な従者を持つのもやはり主人の才覚次第と言えそうです。

    三人一括りにするのもなんですが概ね良、好きとしたいです。
    それぞれの姫君夕顔、明石の君、浮舟にかかわった従者として今はこの従順なる三人の従者たちがまるで実在の人物のごとく懐かしく愛おしい思いでいっぱいです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      一つ惟光が活躍する感動的場面を書きもらしていました。
      「蓬生9~11」須磨明石から帰った源氏が何年か振りに末摘花を訪ねて行く場面です(最初は花散里の所へ行く序でに気が向いてという感じでしたが)。「例の惟光」が末摘花の荒れた屋敷を探し当て邸内の様子を確かめ雨露を払いつつ源氏を末摘花の所へ案内する。

       (源氏)たづねてもわれこそとはめ道もなく深き蓬のもとの心を

      【国宝源氏物語絵巻 蓬生】
       この場面です。何と馬の鞭を持って蓬の露を払っている惟光が真ん中で大きく描かれ源氏は左に一部のみ。これぞ惟光の面目躍如たる所ではないでしょうか。

       →「惟光よ、オマエ国宝に描かれて残ってるぜ!」って言ってやりたいです。

  2. 青玉 のコメント:

    「国宝源氏物語絵巻 蓬生」調べてみました。
    なるほど中心に描かれて露払いしているのはまさしく惟光でした。
    すごいです!!惟光に知らせてやりたいですね。

    さて今週15日(土)より徳川美術館恒例の「国宝源氏物語絵巻」が始まります。
    今年は「竹河二」 「東屋二」の二点です。
    どんな場面に出会えるのかとても楽しみにしております。

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