人物談義(13) 雲居雁・近江の君

玉鬘に続く頭中の娘二人です。
【雲居雁】
 ①雲居雁=評価:並 好き嫌い度:好き
  →夕霧との恋の仕方も家庭生活も極めて普通常識的。そこが好きです。

  雲居雁 歌7首 代表
   浅き名を言ひ流しける河口はいかが漏らしし関の荒垣(藤裏葉)
   →「河口の関」三重県津市白山町川口 これを記憶しておかない手はありません。

 ②母が頭中と離婚し按察大納言の北の方に。頭中に引き取られ祖母大宮のもとで育てられる。
  夕霧と同じく母なし子。筒井筒の恋が芽生える。
  →筒井筒の恋はいい。微笑ましい感じで大好きです。
   男 筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
   女 くらべこしふりわけ髪も肩すぎぬ君ならずして誰かあぐべき

  頭中は東宮への入内を図るが結局夕霧と結ばれる。
  →これはよかったと思いました。この辺源氏と頭中の権力争いの所でした。

 ③そして夕霧の巻、落葉の宮に狂う真面目夫夕霧。
  雲居雁は七人もの子どもを抱え家事育児に明け暮れる。
  →貴族女性らしからぬお母さんのイメージでした。くすっと笑いが出ました。
  →手紙を奪い取るシーン、実家に帰るシーン(センター試験)

 ④宇治十帖では娘(大君)が東宮に嫁いでいる筈だが大君も母の雲居雁も全く登場しなかった。
  →あのお母さんがどんなおばあさんになっているのか興味あったのですが。。

 ⑤夫夕霧は真面目男であったがそれでも藤典侍という愛人がおり後には落葉の宮という皇女を妻に迎え入れる(身分的には落葉の宮の方が正妻になったのかも)。
  →でも雲居雁は夫の女性問題にそんなに悩んでるようには感じないがいかがでしょう。
  →性格なのか。子どもがいる強みか。筒井筒の恋で女上位だったからか。

【近江の君】
 ①近江の君=評価:悪 好き嫌い度:嫌い
  →面白いのですが止まらず畳み掛けてくる感じが嫌です(お笑いタレントに多いですね)。

  近江の君 和歌2首 代表
   草わかみひたちの浦のいかが崎いかであひ見んたごの浦波(常夏)
   →スバラシイ!この時代多分「爆笑トンチンカン和歌集」なんて隠れたベストセラーがあって紫式部もそれを参照したのじゃないでしょうか。

 ②源氏の玉鬘に対抗して頭中が探し出してきた近江の君。これでもかと言う一番の滑稽譚でした。
  →紫式部も随分思い切って下品なことを書いたものだと感心しました。

 ③「小賽、小賽」「御返しや、御返しや」&「明石の尼君、明石の尼君」
  →近江の君、双六が相当好きだったようですね。でもセンスあり、傑作です。

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4 Responses to 人物談義(13) 雲居雁・近江の君

  1. 青玉 のコメント:

    雲居雁(並 好き)
    家庭的で普通のお母さんっぽいところが何ともいえず好きですね。
    突然降ってわいたように中年狂いした夕霧との痴話喧嘩もご愛敬で微笑ましかったです。
    本人にとっては深刻だったかも知れませんが読者を楽しませてくれました。
    このよな女性に子育てを任せていれば安心でしょうね。
    夕霧の恋に癇癪を立てたものの引きずらないが大らかで好もしいです。
    子だくさんでそれどころではなかったのか、子どもに癒されることもあったでしょうし・・・

    近江君(悪 普通)
    この女君、普通は劣悪でしょうがそれほど嫌いにはなれません。
    すべてが貴族の間でのお話の中にこのような庶民に近い女性は現代風のインパクトがありましたね。
    そういう意味では一概に非難できないです。
    自分にもそういった面、無きにしも非ずで少し味方したいです。
    滑稽、傑作ナンバーワンです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.源氏物語でお母さんのイメージと言えば一に花散里、二に雲居雁じゃないでしょうか。花散里は実際には子どもがなかったが夕霧&玉鬘を母親代わりとして教育し源氏にも母性的に接していました。イメージは花散里の方が強いかもしれませんが、実際に子沢山家庭で髪振り乱し肝っ玉お母さん的な活躍を見せるのは雲居雁が一番でしょう。子沢山の家庭を顧みず(子沢山の家庭に愛想をつかして)夕霧が落葉の宮にのめり込んでいく経緯は現代に通じる話だと思いました。

       小野から深夜に帰宅して落葉の宮との逢瀬(まだ何もないが)の余韻にひたりつつ「月がこんなにきれいなのに何故寝てるの」などと寝ぼけたことを言う夕霧に雲居雁がふて寝を決め込んでる場面(横笛6)など身につまされる感じでした。

      2.近江の君。おっしゃるようにこの君は貴族社会からかけ離れていました。源氏物語登場人物の幅を大いに広げた貢献は大きいと思います。ちょっとゴメンの女性ですが決して忘れることはできません。

        草わかみ、、、の歌、大好きです。

  2. 式部 のコメント:

    雲居雁は性格が穏やかで可愛い感じがして好きですね。
     多少の嫉妬はあっても、くよくよ考え込んだりはしなかったと思います。
     大勢の子供たちも可愛がって育てているようだし、お姫様なのにどこか庶民的な感じがしていいですね。

     近江の君、この人は一番笑えました。
     育った環境もあるのでしょうか、自分の教養の程度がよくわかっていないことが、この人の最大の弱点ですね。
     本人は一生懸命なのですが、そのトンチンカンさ加減に読者は笑ってしまうのですよね。
     笑ったあと自らを省みてちょっと淋しくなりますがね・・
     しっかりした教育を受けられる環境にいなかったことを割り引いて評価し、楽しませてくれた彼女は、やっぱり嫌いにはなれません。普通です。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。登場人物に常に優しい目を注いでのコメント、式部さんのひととなりが窺えます。自分の教養の程度、人品の程度を弁えられるかどうかが人間評価の分かれ目なのでしょうね。

      玉鬘と近江の君、二人とも頭中の娘。一人は教養深くうまく育てられたが一人はトンデモナイ娘になってしまった。まあ玉鬘の場合はよかったですが近江の君の場合は手をつけた女性に娘が生まれたのを知ってか知らぬか放ったらかしを決め込んだ頭中こそ反省すべきではないでしょうか。源氏ならこんなことはない筈でここでも源氏の素晴らしさ、頭中が源氏に劣ることが強調されていると思います。

       →近江の君を笑う内大臣(頭中)こそ笑い者でした。

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