第二部の主要人物三人を取り上げました。
【女三の宮】
①女三の宮=評価:劣 好き嫌い度:嫌い
→一度ならず柏木とズルズルというところが許せませんでした。
女三の宮 歌7首 代表
立ちそひて消えやしなましうきことを思ひみだるる煙くらべに(柏木)
→柏木さえ現れなければ女三の宮は皇女らしく心穏やかに暮らせたものを。
②何と言っても源氏物語をドラマチックにした大立役者です。若菜上で女三の宮が六条院春の町に降臨したばかりに今までの全てがオセロゲームのように白(明)から黒(暗)にひっくり返ったのです。このストーリー仕立ては見事としかいいようがありません。
この時源氏40才、紫の上32才、柏木24才、女三の宮14才でした。
③何故源氏は無理筋とも思える女三の宮を妻に迎える気になったのか。
→藤壷の姪という紫のゆかりもあるでしょうが、やはり先帝朱雀院の皇女。これぞ源氏の「色好み」故ではないでしょうか。
④登場場面全てでこれぞ皇女という言動に終始している。何もできない。何もしようとしない。
→柏木に襲われたのが21才の時。この時点でも幼い感じで性的魅力は全く感じられないのだが。
⑤源氏に密通がバレてすぐ出家したのは優れた決断。評価できよう。
【柏木】
①柏木=評価:並 好き嫌い度:嫌い
→いくらなんでも「色好み」をはき違えたような行動には反発を覚えるのですが。。
柏木 歌15首 代表
いまはとて燃えむ煙もむすぼほれ絶えぬ思ひのなほや残らむ(柏木)
→情熱の炎と言おうか破滅主義と言おうか。
②蹴鞠、垣間見のシーン(唐ねこ事件)は衝撃的でした。
それから6年、執念で思いを遂げる。
→この若菜下26は凄かった。今読み返しましたが疲れました。
→初めは確かに一線を越える気はなかったのかも知れません。でも成り行きで、、、。そりゃあそうでしょう。止まらないでしょうね。
③女二の宮(落葉の宮)に飽き足らず女三の宮とコトを起し破滅してしまう柏木。
→「あはれ衛門督!」そして事情を知らぬ内に息子を亡くした父頭中も可哀そうでした。
【朱雀帝(院)】
①朱雀帝=評価:並 好き嫌い度:嫌い
→直感的かもしれませんがどうもスッキリした人物とは思えないのです。
朱雀帝 歌8首 代表
背きにしこの世にのこる心こそ入る山道のほだしなりけれ(若菜上)
→女三の宮を降嫁させて紫の上に贈った歌。子を想う親の心がよく表れている。
②弘徽殿大后-朱雀帝ラインは本来一番勢力盛んな筈なのだが物語の冒頭以来終始光源氏の引き立て役に甘んじてきた。この朱雀帝、マザコン的で何ともひ弱、頼りない帝であった。
→何ごとにも勝る源氏へのブラザーコンプレックスもあったのだろう。
③第二部冒頭で朱雀院が放った一石(女三の宮を源氏に嫁がせたこと)が見事に六条院のバランスを打ち砕き源氏を不幸へと陥れて行く。意図的な源氏への復讐ではないにせよ、結果的に源氏は痛い目に合ってしまったと言えようか。
女三の宮(劣 嫌い)
このお姫様、何だかぼんやりしていて当初知恵足らずかなと思ったりしたものです。
でも考えてみれば14歳、源氏との歳の差26歳。赤子のようなものでしょう。
源氏からすればすべてが物足りなかったでしょう。
唯一出家の決断は見事に自己を主張しましたね。
柏木(並 普通)
柏木のことも最初は理解できなく異常な男だと思っていました。
自身を死に追い込むような破滅的な恋をした男を一概に軽蔑することもできずだんだんと嫌いから同情に変わり許してあげたい気持ちに傾きました。
それにしてもこの二人は第一部から二部への物語を180度転換させた主人公。
このようなお話を用意した紫式部は見事なストーリーテラーですね
朱雀院(並 普通)
源氏の異母兄でありながらすべて源氏に劣る。
劣等感と憧れがないまぜになって結果的に女三の宮を降嫁させたことが源氏への唯一優越感だったのでしょうか・・・
帝と言えども子を想う親バカは人間的で庶民と大差ないですね。
ありがとうございます。
源氏と女三の宮は26才差。すごい年の差婚です。源氏と女君たちとの年齢差をチェックしてみました。
葵の上 源氏+4 (源氏12才 葵の上16才で結婚)
藤壷 +5 (最初にコトがあったのは源氏17才の時か)
空蝉 ?(大分上か)(源氏17才の時)
夕顔 ?+2~3か (源氏17才の時)
六条御息所 +7 (源氏16才の時からだろうか)
末摘花 ?多少上か (源氏18才の時)
紫の上 源氏-8 (契ったのは源氏22才紫の上14才の時)
朧月夜 ?同年位か (花の宴で契ったのは源氏20才の時)
花散里 ?多少上か (共寝については全く分からない)
明石の君 -9 (明石で契ったのは源氏27才の時)
源典侍 +38(紅葉賀で契ったのは源氏19才源典侍57才の時)
→これは例外、参考にならない。
そして
女三の宮 源氏-26 (降嫁は源氏40才 女三の宮14才の時)
(参考)
朝顔の宮 ?同年位か (ついに契れず)
秋好中宮 -9 (この人とは所詮無理)
玉鬘 -14 (色好み源氏も理性的になったのか)
源氏と女三の宮の年の差26才は如何に突出していたかが分かります。源氏物語の他のカップルでもこれだけの年の差婚はないと思います。やはりちょっと異常でしたね。
→白河法皇と璋子年令差は28才(事実は小説より奇であります)
女三宮本人は明確な意思がないのに、結果的にまわりすべてを不幸にしてしまった。これは哀しいですね。
ただ流されるだけの人間は、いくら高貴な姫君でも私には受け入れ難いです。
源氏にとって皇女という身分の正妻をもつことは憧れでもあり、最後の願いだったように思われます。
清々爺さんのいわれる色好みの完結ですよね。
降嫁を受け入れた時点では画竜点睛の気分だったはずです。
宮本人をよく知らなかったことが悲劇の始まりで悔やまれますね。
もちろん、それによって物語は一層面白くなりましたがね・・
出家の決断だけが唯一女三宮を評価できるところです。
柏木の行動は狂気の沙汰ですよね。どう考えても王朝の色好みとは異質のものを感じます。(むしろ現代のストーカー気質)
自身を滅ぼし、相手も不幸にする恋にのめり込む柏木の心情は理解できません。
恋すれば冷静さ、判断力を欠くのはわかりますが、行き過ぎると怖いですね。
柏木の頭を冷やすように水をぶっかける役割の人(夕霧)の存在も必要でしたね。
「あはれ」ぐらいは言ってあげたいけれど、好きにはなれないタイプです。
朱雀帝は常に源氏に劣った存在として書かれ、弱気で頼りない感じですね。
母弘徽殿女御があまりにも強い女性だったので、こういう性格になったのでしょうかね?
掌中の珠である女三宮を、源氏ならと見込んで降嫁させた結果は朱雀帝にとって思いもよらないもので、全く意図的なものではありませんが、源氏の晩年に影を与えてしまったことは確かですね。
朱雀帝にはあまり魅力を感じません。
ありがとうございます。
晩年になって無理を自覚しつつ女三の宮を受け入れた源氏。落葉の宮がありながら飽き足らず女三の宮と密通し破滅してしまった柏木。宇治十帖でも薫は女二の宮を貰いながら満足せず女一の宮を想い続けていました。
出自身分が全てを決した平安王朝。皇女であれば年令差も関係なく、皇女であればそれだけで容姿も人格も全てが優・優・優となってしまう。身分が尊いことそのものが「性的魅力」(それも身の破滅も忘れさせるような強烈な性欲を催させる)だったのでしょう。
→私にはちょっとついていけませんが。