p182 – 194
17.中の君、匂宮の情けを受けわが前途を悩む
〈p273 匂宮は、今夜、宮中からなかなか抜け出せなかったことを〉
①三日目の閨の中での匂宮と中の君
匂宮「心のほどやいかがと疑ひて思ひ乱れたまはむが心苦しさに、身を棄ててなむ。常にかくはえまどひ歩かじ」
→行動に制約ある匂宮としては事情を説明しておかねばならない。当然である。
→中の君は「もう来れないことの言い訳か」と疑心暗鬼になる。これも当然である。
②明けゆくほどの空に、妻戸おし開けたまひて、もろともに誘ひ出でて見たまへば、霧りわたれるさま、所がらのあはれ多くそひて、
→晩秋の朝の宇治川の様子。匂宮は感無量だったことだろう。
③男の御さまの、限りなくなまめかしくきよらにて、この世のみならず契り頼めきこえたまへば、、、なかなか、かの目馴れたりし中納言の恥づかしさよりはとおぼえたまふ。
→中の君は長らく近しくしていた薫よりも一気に契ってしまった匂宮の方を好ましく思う。(「萌えはじめた人妻の喜び」段末脚注)
→男女の肉体関係とはそのようなものであろう。それにしても千年前によくぞ喝破したものだと感心する。
④匂宮 中絶えむものならなくに橋姫のかたしく袖や夜半にぬらさん
中の君 絶えせじのわがたのみにや宇治橋のはるけき中を待ちわたるべき
→中の君の返歌は愛おしい。これを聞けば匂宮は放っておけないと思ったことだろう。
⑤女房「中納言殿は、なつかしく恥づかしげなるさまぞそひたまへりける。思ひなしのいま一際にや、この御さまは、いとことに」
→この女房の一言が二人の違いを言い当てている。匂宮のオーラは格別である。
18.匂宮の訪れ途絶える 大君・薫の心痛
〈p278 匂宮は御帰りの道すがら、〉
①その後匂宮は宇治を訪れることができない(文は毎日来るものの)
大君は中の君を慮って心を痛める。
→そう簡単に来れないことは分かりそうなものだが。
→情報の少ない世にあっては悪い方は悪い方へと考えてしまうのであろう。
19.薫、匂宮と宇治を訪れ、大君と対面する
〈p279 九月十日頃のことですから、宇治の野山の紅葉の〉
①9月10日 匂宮、薫と連れ立って宇治を訪れる。この季節当然雨である。
→8月26日が新婚初夜。それから2週間ほど。そんなご無沙汰ではなかろうに。
②薫がついてきた。
大君 さかしら人のそひたまへるぞ、恥づかしくもありぬべく、なまわづらわしく思へど、、
→大君はもう薫とのことは終わったと思ってるのか。でも経済的後見はしてもらわねばならず、そう邪険にもできないのでは。
③薫と大君の対話 恋心を訴える薫。独身を通すことを自ら再確認する大君
→いやぁ、噛みあいませんねぇ。この平行線を打ち破るにはどうすべきだったのでしょう。
④匂宮「中納言の、主方に心のどかなる気色こそうらやましけれ」とのたまへば、女君、あやしと聞きたまふ。
→こういう一文が入るのが何とも滑稽です。それほどに薫と大君の関係は異常ということでしょうか。
⑤この段に匂宮と中の君の閨での語らいの場面がないのは驚きです。これ以上に不必要なことは書かないということでしょうか。主題は大君と薫なんですから。