総角(11・12・13) 後朝、二日目そして三日夜の餅の用意

p164 -174
11.匂宮の後朝の文 大君中の君に返事させる
 〈p259 匂宮はお帰り早々、中の君に後朝のお手紙をさし上げます。〉

 ①匂宮が去った翌朝の姫たちの気持ち、
  中の君:大君が計らって匂宮を自分のところに差し向けた。姉君はケシカラン。
  大君:てっきり薫が中の君の所へ行くと思ったのに、、。でも中の君にはそれすら言ってなかったので、怒っているだろうな。
  →つくづくと難しいもんですねぇ。現代にも通じるでしょう。

 ②匂宮 世のつねに思ひやすらむ露ふかき道の笹原分けて来つるも
  →後朝の文を届ける匂宮、決して脚注にあるような「身勝手な遊び心だけ」とは思わないのだがいかが。

 ③その夜、「オイ、行こうぜ。案内してよ」と声をかける匂宮
  言い訳を言って同行を断る薫

12.大君、中の君をなだめて匂宮を迎えさせる
 〈p262 宇治では、どうしたらいいだろう、〉

 ①匂宮は三日間宇治に通わねばならない。その二日目。
  さる方にをかしくしなして待ちきこえたまひけり。遥かなる御中道を、急ぎおはしましたりけるも、うれしきわざなるぞ、かつはあやしき。
  →準備をして待ち受ける大君。来てもらってほっとする。
  →この辺が現代感覚では理解できない。結局は来てもらわねばその方が困るのだろうか。

 ②大君は中の君に昨晩のことを詫び受け入れを説得する。
  →結局大君は匂宮と中の君の結婚を承諾したということ。これが当時の定めなのか。

 ③中の君の様子 まいてすこし世の常になよびたまへるは、御心ざしもまさるに、、
  →一夜を経て中の君はもの柔らかになっている。細かい描写だが「そうか」と思わせるに十分。

 ④中の君、深窓で育ち男女のことなど何も分からないウブな姫であった。一夜を経てもろくに返事もできない。
  さるは、この君しもぞ、らうらうじくかどある方のにほひはまさりたまへる。
  →でも利発で才覚に富む資質は姉君よりもまさっていた。

13.三日夜婚儀の用意 薫来たらず贈物あり
 〈p265 「新婚三日めの夜には、〉

 ①三日目、三日夜の餅の用意をする。
  →欠かせない儀式。それだけに気を遣う。

 ②薫からお祝いの贈り物が届く。それはいいが、
  薫 小夜衣きてなれきとはいはずともかごとばかりはかけずしもあらじ
  →これはマズイ。大君の心を逆なでするだけ。
  →薫こそ第一回目の侵入の時コトを果たし三日間通うべきであったろうに。

 ③大君 へだてなき心ばかりは通ふともなれし袖とはかけじとぞ思ふ
  →脚注には「凛としてゆるがぬ気品を示す」とあるがこれもマズイのでは。売り言葉に買い言葉のように思えるがいかがか。
  

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6 Responses to 総角(11・12・13) 後朝、二日目そして三日夜の餅の用意

  1. 青玉 のコメント:

    姉妹の思いがそれぞれに食い違っている、これってコミュニケーション不足じゃないのかしら?
    姉妹ならもっと内輪話をしていればこんなちぐはぐなことにはならないはずなのにね~
    例えば貴女には薫さまがお似合いよ、いえいえお姉さまこそ薫さまとお幸せになって・・・
    なんてこの時代無理な話かしらね。

    匂宮、きちんと後朝の文を届け二日目の訪問ここまでは作法通り手はずを整えて誠意が感じられます。
    ここはやはり遊び心だけではないと信じたいです。

    今日の段では女心の微妙さ、複雑さ、姉妹の心の内の描写などが充分に感じられました。
    例えば不本意ながらも現実を受け入れ妹婿の宮を待つ大君の気持ち。
    姉妹のお互いを思いやる心情、一夜を経た中の君の様子、利発さは姉よりも優っている・・・

    薫の嫌味な文と贈り物に対し大君の文も又かたくなで愛らしさに欠けますね。
    薫としては口惜しいけれどもここは「それでもなお貴女を愛している」と熱く訴えるべきです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      これまでは薫・匂宮の心情を中心にあれこれ読み解いてきましたがこの段ではおっしゃる通り嵐が去った翌日の姫たち(大君・中の君)の心内を考えるべきだと思います。

      やはり私にとって一番理解しにくいのは大君の心情です。「中の君を薫に」「自分は結婚しない」と頑なに薫の訴えを拒み続けてきたのに「中の君が匂宮に契らされた」後は結局はこの二人の結婚を承諾してしまう。逆に二日目は来てくれることを待ち望み三日目にはいそいそと祝儀の準備をする。

      当時の習慣、考え方からそうせざるを得なかったのでしょうが、むしろ一旦事がなって大君は中の君のことを「捨てられないか心配ではあるが、ホッとした。よかった。幸せになって欲しい」と心底から思ってるように感じます。

      八の宮の呪縛から大君を解放するには「行動しかない」、、残念ながらこれが結論かもしれません。

       私見では、大君の男性拒否症を治すのは極めて困難であり、実事によって性の悦びを知る以外の方法で治る可能性がないように思います。[青黄の宮]

        →青玉さん・式部さんからの反論を期待します。

  2. 青黄の宮 のコメント:

    匂宮の中の君に対する気持ちが「身勝手な遊び心だけ」とは思わないとの清々爺のコメントに賛成します。源氏や匂宮は気が多くて移り気な男と言えますが、少なくともその時その時には相手の女性を本気で真剣に愛しており、決して遊び心で弄んでいるわけではないと思います。きちんと後朝の手紙を届けたのも真剣さの表れでしょう。

    清々爺は2日目に匂宮を迎えてほっとする大君の気持ちは現代感覚では理解できないとコメントしていますが、小生は(今も昔も、というか、昔は今以上に)男女の交わりがあった後は2人の仲を認めざるを得なかったからと単純に理解しています。しかも、その相手が今を時めく皇子さまなら、妹の相手として申し分ないと思い直したのでしょう。こうした大君の気持ちの変化は前夜の薫の告白がお馬鹿さんな行為であったことの証左ともなるでしょう。中の君が一夜を経てもの柔らかになったのも男女の交わりのお陰であることは言うまでもありません。

    薫が結婚祝いの贈り物を届けたのは感心ですが、結婚祝いなのにおどすような歌を送ったのは失礼で筋違いな行為であると思います。

  3. 青玉 のコメント:

    女性にも色々なタイプがあります。
    誠実さと押しの一手に情にほだされ相手の良さを認めるタイプ。
    「総角」7P142の3行目女房の言う「いま、おのづから見たてまつり馴れたまひなば、思ひきこえたまひてん」のようなタイプ。
    大君のように結婚拒否症、または消極的でも性の喜びに目覚めて積極的になるタイプ。
    精神性に重きを置くタイプ等々。
    余談
    (私は瞬間のイメージに賭けるインスピレーション型タイプ。こうと決めたら押すタイプかな?)

    大君を性の喜びに目覚めさせればかたくなな心はほどけたかも知れませんが何か大君には得体の知れない厭世的な嫌悪感が感じられてなりません。
    この女性と結婚する相手は大きな包容力と気長に愛情を育てる忍耐力が必要かもしれません。
    憂愁を抱えた内省的な薫なら大君を幸せにできると思っていましたが今日の場面の薫の態度はまずいですね。

  4. 式部 のコメント:

    青玉さんのおっしゃるとおり、女もいろいろ(男もいろいろ)です。押しの一手や実力行使が通用しない場合もあります。
    大君はずっと薫の庇護(経済的援助)を受けているのですから、最初から同等な関係としての恋は成り立ちません。現代のような顔を見ての会話などほとんど考えられない時代、和歌や文での継続的な真摯な訴えが、頑なな大君の心を開かせるのだと思います。薫も恋に関してはゆっくりタイプなのだから、自分にあった口説きのやりかたを考えないとね。
    恋下手の二人なのです。
    余談
    (若い時には匂宮の情熱に魅かれ、中年以降では薫の実務能力、面倒見の良さ、安心感などに魅かれるような・・・)
    (私は行動力と言葉が大切だと思う人間です。言葉のもつ力は大きいです。相手を信じさせ、安心させてからでないと何事も始まりません。)

  5. 清々爺 のコメント:

    みなさまありがとうございます。素晴らしい。パネルディスカッションみたい。

    男性の行動力あるのみとおっしゃる青黄の宮さんに対し女性にも色々なタイプがあるとおっしゃるお二方。一般論か個別論かにもよりますがどちらもポイントをついていると思います。

    「大君には得体の知れない厭世的な嫌悪感が感じられる」青玉さんが言われる通り大君の場合は特別過ぎるのかもしれませんね。

    この特殊ケースはさておき一般論としては大方の場合男性の誠意ある(実事まで行く)積極的行動に呼応して女性も男性に心を開いていくのだと思います。性の悦び(愛する悦び・愛される悦び)は決して肉体的なものだけではなく身も心も一体となって馴染み合ってこそ悦びを感じられるものだと思います(一瞬の快楽は別にして)。従って通常は行動に出るまである程度時間をかけて心をほぐし合い気分を盛り上げ、行動に出た後もきっちりフォローして心を通じ合う。これが男女のあるべき姿でしょう。(源氏や匂宮の場合、いきなりが多いがスーパーヒーローなので特別か。但しフォローはきっちり行っている)

    大君とは違い中の君には上記一般論があてはまるように思えます。総角12末尾の次の一文は中の君が常識に適った柔軟性を有していることを指摘してるのだと思います。

     さるは、この君しもぞ、らうらうじくかどある方のにほひはまさりたまへる。

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