p174 -182
14.匂宮参内 母宮の諌めにそむき宇治に行く
〈p267 匂宮は、その夜参内なさいましたら、〉
①明石の中宮
「なほかく独りおはしまして、世の中にすいたまへる御名のやうやう聞こゆる、なほいとあしきことなり。何ごとももの好ましく立てたる心なつかひたまひそ。」
→匂宮の立場と行動を制限される事情を如実に語っている。
→母として子を&中宮として東宮になるべき皇子を諭す言葉。当然である。
②薫参上、匂宮「いかがすべき。いとかく暗くなりぬめるを、心も乱れてなむ」
→匂宮は薫を頼りにしている。「お願い助けて!」の心境であろう。
③薫と匂宮の会話が面白い。
→薫も匂宮から身を低くして頼まれれば応えるしかない。
→薫の男気が感じられる場面と思うがいかが。
④馬はやめといたらという薫に急ぐ匂宮はあえて馬で行く。
→そりゃ、急がなくっちゃ。走れ、匂宮!
15.薫、中宮に対面 女一の宮を思うも慎む
〈p270 薫の君が中宮のところに参りますと、〉
①中宮「宮は出でたまひぬなり。あさましくいとほしき御さまかな」
→わざわざ夜女性の所にでかけなくても内に侍らせておればいいものを、、、。
→子を想う親心。恋する若者の心が分かっていない。
②薫は中宮の側に女一の宮の気配を感じて(妄想して)ふがいない自分に自責の念に駆られる。
ひがひがしき心のたぐひやは、また世にあむべかめる、それに、なほ動きそめぬるあたりは、えこそ思ひ絶えね
→(薫の心内)「律儀の程にも限りがある、大君にあれだけ近づいて、何もしなかったとは、、、情けない」
→分かってても行動に出られないところが薫の薫たる所以
③女房相手の戯れ事について。
中宮の後宮、美貌・教養申し分ない女房たちが薫に媚態を示す。薫には空しく映るだけ。
→もう少し柔軟になれませんかね、薫の中将!(偶には浮気もあったのでしょうが)
16.匂宮の来訪を女房ども喜ぶ 大君の心境
〈p271 宇治では薫の君が三日夜のお祝いを仰々しく〉
①三日目の深夜、激しい風をついて匂宮到着!
→文だけ来て本人が来ないので絶望に陥りかけたところへ匂いと共に到着。
→大君・中の君&宇治山荘の全ての人は喜びの声を上げたことだろう。
→三日間宇治に通う。匂宮はエライ!筋金入りの好色ではなかろうか。
②中の君 正身も、いささかうちなびきて思ひ知りたまふことあるべし。いみじくをかしげに盛りと見えて、ひきつくろひたまへるさまは、ましてたぐひあらじやはとおぼゆ。
→中の君も三日目、身も心も匂宮に靡いたということだろう。
→匂宮の情熱はすごい。さすが源氏の孫である。
③中の君と匂宮の閨から離れて老女房たちと同じ部屋で寝る大君
我もやうやう盛り過ぎぬる身ぞかし、鏡を見れば、痩せ痩せになりもてゆく、
→中の君とは2才違いの26才。老醜などととんでもない。
→こんな内向き志向では薫の胸に飛び込めない。心の持ち方は難しいものである。
いよいよ三日目の夜、匂宮の行動は中宮の忠告にも従わず結果的には馬を走らせ宇治に駆けつける、カッコいいですね。
身分柄いろんな制約があるのにこの行動力は見上げたものです。
しかしここで匂宮の為に一肌脱ぐ薫は男らしいとも思えますがやはりお人よし過ぎないかしら?
匂宮さん、自分の蒔いた種は自分で責任持たなくちゃ・・・
でもまあ、ここは男の友情でしょうね。
現代でもあることです、友の恋愛に一肌脱いで手助けをする。
薫にも匂宮のような行動力あればと思いますが物語上このような男が二人もいればやはりお話になりません
紫式部は二人の男を徹底的に対比させて物語を面白くさせていることに気付きます。
中宮との対面における周囲の人間模様(女房)と薫の心内からは性格が如実に現われていますね。
三日目の深夜暴風をついて匂宮の訪問は宇治山荘の人々に感激の声をあげさせたでしょうね。
光景が目に浮かぶようです。
ちゃんと三日間通いましたね。さすが、これでこそ男というものです。
無恥厚顔の老女たちを見る大君の目は自身にも向けられ不安に揺れているように思えます。
花の色はうつりにけりないたづらに わか身よにふるながめせしまに(小野小町)
大君26才今なら若盛り、なぜこうも自身を卑下するのでしょう?
もっと自信をもって明るく前向きにと背中を押して差し上げたいです。
ありがとうございます。
本段の解説は青玉さんのコメントに尽きると思います。
何はともあれ二日目・三日目と宇治に通い遂げた匂宮はアッパレ!でしょう。持前の行動力で中の君の身も心も靡かせてしまった匂宮。中の君もシアワセを実感したことでしょう。
それにひきかえ、薫と大君。。。。自業自得とは言え哀れとしか言いようがないですね。p182脚注のようにこの期に及んでもまだ内向き志向に徹する大君、、。「得たいの知れない厭世観」なんでしょうね。
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14.④のところ
薫 「木幡の山に馬はいかがはべるべき」
脚注6で薫は馬は危険で牛車をすすめたとあるが現代語訳(寂聴訳・円地訳・リンボウ訳ともに)は「馬の方が目立たないからとして馬をすすめた」としている。
→いくら何でも牛車では遅いでしょう。馬で行きなさいとアドバイスするのが自然でしょうね
まず、清々爺の解説に次の2つの疑問があります。
14.①の解説で「中宮として東宮になるべき皇子を諭す言葉」とありますが、寂聴訳巻八P374の系図によれば、帝と明石の中宮との間には既に東宮がいるので、(その東宮が死亡しない限りは)匂宮が東宮になれないと思われますが、如何でしょうか?
16.①の解説で「三日間宇治に通う。匂宮はエライ!筋金入りの好色ではなかろうか。」とありますが、これは匂宮が中の君を本気で真剣に愛しているからであって、それを好色と言われるとやや抵抗を感じますが、如何でしょうか?
いずれにせよ、三日間、遠い宇治に通った匂宮の誠意と行動力に大拍手です!!!
ご指摘ありがとうございます。
1.確かにこの時点(K24年)では明石の中宮腹の第一皇子(匂宮の同腹兄)が東宮に立っているので今上帝の次はこの東宮が即位することになります。ただこの時代皇位は終身ではないので適宜譲位は可能でした。(健康上の理由あり、精神状態上の理由あり、勿論権力闘争あり)
東宮は匂宮の6才年上でこの時点で31才(今上帝は45才)、因みに東宮には夕霧・雲居雁腹の大君(他多数)が入内しているが皇子が生まれたとの記載はありません。
そういう訳で今上帝はやがて東宮に譲位し(源氏物語中ではないが)同時にお気に入りの匂宮を東宮に立てその次の天皇にする、、ということを考えていたという解釈です。
→匂宮は次の次の天皇ですよ、、、中の君も喜ばなくっちゃねぇ。
この辺宿木の脚注に記されています。参照してください。
p174脚注7 p196脚注2 p215脚注12(これが詳しい)
2.舌足らずでごめんなさい。「好色」というのは誉め言葉ですよ(多少のやっかみは入っていますが)。スケベとかエロ親父とかいう意味の好色ではありません。「色好み」「英雄色を好む」の好色です。
気に入った女性は全力投球でものにし、全力投球で愛し貫く。。。そんな意味での好色です。次の次の天皇たる男が宇治の山道を三日続けて通う、、、これぞ「筋金入りの好色」と讃辞を送った訳でして。。。
→これだけ言えばご機嫌治していただけるでしょうか。
今度はクスクス笑いではなくアハハハと声をあげて笑ってしまいました。
なるほどね。三日三晩通い詰めて愛と誠を示す。
これぞ「筋金入りの好色」究極の褒め言葉かも知れませんね。
好色にもいろいろあることがわかりました。