夕顔(4・5・6) 六条御息所登場! & 空蝉のこと

p200 – 208
4.源氏、六条邸を訪れ、夕顔の宿を意識する
 〈p163 お通いどころの六条のお邸では、〉

 「御こころざしの所には~~~人のめできこえんもことわりなる御さまなりけり」
 このわずか6行で六条御息所邸のありさま、しっくり行ってないありさまなどが語られる。気に染まないけど義理で通っているのか、それとも色香だけは絶ちがたいのか。

5.源氏、惟光の報告をうけ、関心を強める
 〈p164 惟光が数日たって参上いたしました。〉

 ①頼もしき腹心惟光の報告。当然惟光は夕顔宿に出入りして女房にコネをつけて来たのでしょう。好色な主人に忠ならんとせば好色にならざるを得ず、、てとこでしょうか。

 ②「なほ言ひよれ」
  しつこいと言おうか執念深いと言おうか情熱的と言おうか。
  初めての下町の女性、関心は止まるところを知らないのです。

6.源氏、伊予介の訪問をうけ、空蝉を思う
 〈p165 ところで、あの空蝉のように衣だけを残していった女が、〉

 ①まだ空蝉をあきらめきれずにいるところに夫伊予介があいさつに来る。源氏と空蝉のコトを知らない伊予介、、、この辺可哀相になあと言いたくなります。

 ②軒端荻のその後=夫が決まった。源氏には関心がない→そりゃあそうだろう、行きがけの駄賃と言ってしまえば身も蓋もないですが。。

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夕顔(3) 夕顔との歌の贈答

p196 – 200
3.源氏、歌に興をおぼえ、返歌を贈る
 〈p159 尼君の病気平癒の加持祈祷などを、〉

 ①心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花
  
  白い扇に香をたきしめてその上に歌が書かれている。
  「そこはかとなく書きまぎらはしたるもあてはかにゆゑできたれば」
   こんな下町でこんな優雅な歌をもらった、中の品は悪くないなって思ったのでしょうね。
  
 ②「心あてに」とくれば当然百人一首No.29凡河内躬恒
   心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花
   →大げさで実がない、霜が降りたくらいで菊が見えなくなるはずなかろうと正岡子規がボロクソに言ったことで有名(余談です)

 ③源氏の命を受けて惟光がすぐ調べに行く→このあたり源氏と惟光の会話が面白い。

 ④源氏の返歌 寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔
  女から歌を詠みかけることは異例、源氏にはそれが却って新鮮に感じられたのだろうか。
  「夕顔」 → 「夕暮れ」 → 「たそかれ」 → 「Who is he?」
  源氏は乳母を見舞ってたから返事が遅れた。「えっ、返事下さったわよ」とはしゃぐ女房たち

 ⑤松明(たいまつ)のことを単に「まつ」と読む。
  頃は7月。さりげなく「蛍よりけに」と古今集を引いている。

以上、六条に渡る前の出来事であります。まめと言おうか、多情家と言おうか。。 

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夕顔(2) 乳母を見舞う

p194 – 196
2.源氏、心から老病の乳母を見舞い、慰める
 〈p157 ようやく車を門内に引き入れて、〉

 ①源氏の乳母(大弐の乳母=惟光の母)ここだけに出てくる。
  
 ②源氏の見舞い口上がまた上手。
  寂聴さんがいつも褒めてる口べっぴん、老女殺し。
  でも口から出まかせでなく本心から出た言葉であろう。そこが源氏が女性から(男性からも)好かれる理由であろう。

 ③高貴な人たちにおける乳母の役割は大変に重要だったのだろう。源氏は3才で母をなくし、祖母と乳母に育てられた。その祖母も6才でなくなり乳母が残るのみ。実母に長生きして欲しいと思うのと同じような感情であったのだろう。

 源氏の優しい人柄を映し出す場面で大好きです。

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夕顔(1) 夕顔の冒頭

「夕顔」うき夜半の悪夢と共になつかしきゆめもあとなく消えにけるかな
                          (与謝野晶子)

[式部さんの朗読は夕顔全巻を一気に公開しました。是非参考にしてください]

空蝉とのことが中途半端に切れて新しい話が始まる。六条御息所が登場する。
帚木3帖の最後でこの巻で中の品の女性探訪編が終わり紫のゆかりのメインストーリーが始まるという構成です。

空蝉に逃げられ初めての恋の挫折を体験した源氏。藤壷への秘めたる想いは果たしようもなく、六条へは行ってみてもどうも気が重くなるばかり。左大臣邸に帰っても妻(葵の上)は相変わらず冷たく無愛想。。。「一体オレはどこへ行きゃあいいんだ」ってところからこの巻は始まるのです。

そこへ登場するのが夕顔。臣下の惟光も初登場で大活躍します。なにがしの院でのクライマックスに向けて盛り上がっていく語り口も軽快で古来短編小説としても秀逸だと評価されている巻です。

p190 -193
1.源氏、乳母を見舞い、女から扇を贈られる
 〈寂聴訳巻一 p154 源氏の君が六条のあたりに住む恋人のところに、〉

 ①「六条わたりの御忍び歩きのころ、」
 六条御息所に通う途中のこと。六条御息所との馴れ初めは書かれていないがこのころはもう熱もさめていたのだろうか。でもこの後激しい場面が出てくるのでそうでもなさそうだし、、。ちょっと不思議。

  源氏と六条御息所との馴れ初めについては源氏物語研究者愛好者の本居宣長が「手枕」という短編を創作している。ネットの現代語訳でサラっと読みましたが、なるほどなって感じでした。(夫東宮を亡くした御息所の所へ桐壷帝の指示もあって見舞いに行く、そうこうして源氏と御息所は通じることになるというもの)

 ②五条夕顔の宿、位置チェック。六条御息所邸への途中、少し離れている。

 ③惟光、登場。源氏の乳母子(乳兄弟)。同年齢であろうか。今後お傍去らずで源氏の恋の冒険の水先人を務める重要人物。

 ④「をちかた人にもの申す」 古今集からの引用
  家来衆も教養がないとついていけない。

   →どこかで夕顔の花をみつけたら是非「をちかた人にもの申す」と独り言を言ってみましょう。アホかと思われるだけでしょうが、光源氏になった気分を味わえるのではないでしょうか。  

 ⑤雨夜の品定めで中の品の女の知識を得、空蝉で実行し始めたが今一つスッキリしない源氏。五条の下町で女の影がちらつく宿を見て興味津津。

 ⑥女童が白い扇を渡し、それに夕顔を乗せて源氏に差し出すところ何とも優雅ではなかろうか。

 この段、文章も平易でよく理解できる。この辺に来て「おっ、これならボクにも源氏物語読めるかな」と思ったものです。 
    

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空蝉 代表歌・名場面 & ブログ作成者の総括

空蝉のまとめです。

和歌

5.空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな  
  (源氏)

6.空蝉の羽におく露の木がくれてしのびしのびにぬるる袖かな
  (空蝉)

名場面
6.「正絹なる単衣をひとつ着てすべり出でにけり
  (P176 碁打ち覗き見~侵入)

短いので名場面は一つにしました。各種源氏絵でもやはりこの場面だと思います。

[「空蝉」を終えてのブログ作成者の感想]

空蝉はごく短い巻です。でも帚木後半とまとめて考えると長さはまずまずでしょうか。
内容的には何せ雨夜の品定めの実践第一弾ですから読む方としても面白かったのではないでしょうか。

青玉さんの言を借りれば「雨夜の品定めを地で行く源氏」その通りですね。
雨夜の品定めで中の品の女性の話を聞いてすぐ実行した、これぞ「有聞実行」じゃないでしょうか。

小君と源氏の関係について議論が盛り上がったのは嬉しかったです。こういう風に進めて行くと記憶に残りますからね。

進乃君さんが「つぶつぶと肥えた」軒端荻に大笑いしたと聞いて私も大笑いしました。最近頓に源氏物語はユーモアの書ではないかと感じています。今後も面白い語法・表現がいっぱい出てきます。期待してください。

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空蝉(4・5) 事後のこと 空蝉との和歌の贈答 

p180 – 185

4.源氏、老女に見咎められ、危ない目をみる 
 〈p146 近くで眠っていた小君をお起しになると、〉

 幕間狂言 中の品の家のあけすけな老女の様子
 後で登場する源典侍が典型だが、老女のあけっぴろげな口舌、行動が物語の狂言回しとしてよく使われている。

5.源氏、空蝉、ともに歌に思いを託す 
 〈p148 小君が車の後ろに乗って、二条の院にお着きになりました。〉

 ①人違いでコトを為したにもかかわらず、憤懣やるかたない源氏。小君に八つ当たりする(それでいて添い寝させるとはどう言うこっちゃ)。

 ②源氏→空蝉
  空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな 

  人がら=人殻と人柄の掛詞だが、源氏は余程空蝉の身の固さに惹かれたのであろう。それまで接してきた女たちは一度許してしまえば後は楽々だったのかも。

  空蝉が好きだという読者(特に女性)多いようです。紫式部は空蝉に自分を投影させた描き方をしているという人もいます。
  →ひょっとすると紫式部は道長に一度は許したもののその後は固く拒んだのかも。

 ③空蝉→(源氏) 源氏に宛てて詠んだが届いていない
  空蝉の羽におく露の木がくれてしのぶしのぶにぬるる袖かな

  ウオームアップでも書いたが伊勢集の歌とそっくり重複している。
  紫式部が拝借してきたのか、伊勢集の増補の時に源氏物語から採られたのか。

  空蝉物語の主題はこの一首に集約される(脚注)
  空蝉の心のせめぎ合いがよく表現されている。

  (空蝉はその後関屋の巻に登場、20年後には二条東院に引き取られ晩年を静かに暮らす) 
      

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空蝉(3) 寝所侵入 あれ、違う!

p172 – 179

3.源氏、空蝉の寝所に忍び、軒端荻と契る
 〈p139 さりげなく渡り廊下の戸口に、〉

 ①小君が手引きするのだが、小君は何才だろうか。自分のすることを分かっているのか。源氏(今や上司)に強請されたとはいえ人妻の姉に男を導く、、、う~んと思ってしまいます。男色関係にあったからとする説には従いにくい感じです。

 ②源氏がとぼけて「紀伊守の姉妹もこなたにあるか。我にかいま見せさせよ」と催促するところ、思わず笑ってしまいます。

 ③空蝉の複雑な心内が語られている。
  「心とけたる寝だに寝られずなむ、昼はながめ、夜は寝覚めがちなれば、、」
  「ながめ」=性欲が満たされずに性的にぼんやりしているさま(折口信夫)

 ④空蝉は源氏の来ることを予想してたのであろうか。
  「生絹なる単衣をひとつ着てすべり出でにけり」
   →ということはそれまではシャネルの5番でもつけて寝ていた?まさかね。

 ⑤人違いと分かり一瞬たじろぐがすぐ気持ちを切り換えてしまう源氏。軒端荻の心情など殆ど書かれていない。あるのは自分の行動を正当化する源氏の強引な口説き文句だけ。
  →それにしても出まかせがうまい。日頃から訓練してたとも思えないですが。
  →人違いでも強行してしまう源氏、、、このくだりどうも好きにはなれません。
   (花の宴での朧月夜との情交も強引だがちょっと違うような気がします)

 

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四国に行ってきました

リタイアして5ケ月、フリーな毎日を満喫しています。

先日は孫の運動会に姫路に行きそこから四国まで足を延ばしてきました。
日本の各地、殆ど初めてのところばかりなので行く先々誠に新鮮でありました。

走った距離が約2400KM。奇しくも芭蕉の奥の細道と同じでした。
(芭蕉は150日、私はトータル12日、運転した日は6日のみ)
殆ど高速を飛ばした(といっても100-110KM/Hです)のですが、とにかくトンネルが多い。改めて日本は山国なんだと実感しました。それと本四架橋の壮大さ。往復とも瀬戸大橋でしたがスケールの大きさにはびっくり、日本の国力を感じました。

一口メモです。
・倉敷 
  大原美術館 駆け足でしか見れませんでしたが、倉敷紡績の繁栄を見る思いでした。
        実家近くの倉紡津を思い出しました。
  旧い街並み いいもんですね。今年は佐原と高山にも行きました。
  星野仙一博物館 店のグッズは阪神監督時代ばっかり。そりゃあないでしょう。

・道後温泉 宿のフロントで食事場での服装は浴衣でいいんですかと聞いたら町中どこでも浴衣草履でOKですって。坊ちゃん湯にも入ってきました。

・松山城 車を裏側に止めたので標高150Mの天守閣まで歩いて登りました。大変でしたがよかったです。TVの「坂の上の雲」を思い出しながら徘徊しました。

・桂浜 竜馬と並んで写真を撮りました。あまりに竜馬一色なのでそれはないぜよと思いました。

・高知城 そうです、一豊の妻千代もいました。

(それにしても「坂の上の雲」「竜馬がいく」「功名が辻」 司馬遼太郎なんですね)

・金毘羅宮 高低差180M785段の石段を登り本殿まで行って家内安全のお札をもらってきました。うどんもさすがでした。

とにかくよく歩きました。登りました。「観光とは階段登りとみつけたり」

日本国中行ってないところばかりなのでこれからが楽しみです。ボツボツと行ってみたいと思っています。

          

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空蝉(2) 軒端荻 碁打ち覗き見

p166 – 172

2.源氏、空蝉と軒端荻の碁打つ姿をのぞく
 〈p134 たまたまその頃、紀伊の守が任国へ出かけて行きました。〉

ここも有名な場面です。
 ①小君がうまく取り計らって源氏を連れ込む描写が面白い。小君の得意そうな様子。
 ②碁
  源氏物語ではよく出てくる。相当流行っていたのであろうか。紫式部もやったのでしょうか。強弱のほどは聞いたことないですが。(浮舟が強いのが印象に残ってます)
  結(ダメ)、持(セキ)、劫(コウ)など囲碁用語が出てくるのはこの場面だけ。

 ③指を折って数を数える様子も面白い。「とを、はた、みそ、よそ」がいい。

 ④覗き見、この時代男性はなんとか覗こうとする、女性は覗かれまいとする。覗き見そのものは特に咎められることでもなかったようです(勿論やり方に限度はあったと思うが)。

 ⑤空蝉と軒端荻の様子の描写が対照的で面白い。紫式部はシンメトリックな描写が得意だがその最たるもの。

  空蝉:小顔・小柄・痩せ痩せ・まぶた腫れ・鼻筋通らず・不器量に近い
  軒端荻:大柄・太め・背高い・愛嬌あり・派手な顔立ち

 この日は梅雨明けでものすごく暑かったのでしょう。軒端荻が胸も露わにして、、、(最近のキャサリン妃のスキャンダルが思い浮かびます)。
   →この場面好きな人、多いんじゃないでしょうか。

 ⑥源氏の回りは藤壷・六条御息所・葵の上・朝顔と緊張感なしには付き合えない人ばかり。気軽な中の品の女性を見て解放感いっぱい。さあ、行くぞ! 

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空蝉(1) 空蝉の冒頭

「空蝉」うつせみのわがうすごろも風流男(みやびお)に馴れてぬるやとあぢきなきころ(与謝野晶子)

p164 – 166

1.源氏、空蝉を断念せず、小君を責める
 〈寂聴訳巻一 p132 お眠りになれないので、〉

 ①この段は帚木の巻末に直接続いている。帚木を雨夜の品定めのところで終えて方違えに行くところから「空蝉」の巻にした方がすっきりすると思うのだが、どうして巻を分割したのだろうか。

 ②帚木巻末に続く小君との場面。この描写はどう見ても男色の場面だと思うんですが。。。
  古来、注釈書には男色のことは書かれていないし、国文学者もここは男色場面だとはよう言わないらしい。

 ③「女も並々ならずかたはらいたしと思ふに、、、」
  空蝉の心内が書かれている。極めてまとまな考え方と思う。それに引き換え源氏の異常さが際立つ。

 

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