p26 – 36
8.勅使ゆげひ命婦、母君を訪れ、共に故人を偲ぶ
〈p21 野分めいた荒々しい風が吹きすぎた後、〉
この段は桐壷の中で異色。単なる説明でなく心情の叙述がある。「野分の段」とか「壺前栽」とも呼ばれる。後で挿入されたとの説もある。
①長いし登場人物も折り重なっており整理して読まないとややこしい。
場所は二条院(宮中から近い)
桐壷帝が命婦を母君に派遣する。その前に典侍も派遣しており命婦の母君への話には桐壷帝の言葉と内侍の言葉が引用されている。これがややこしい。
②「闇にくれて臥ししづみたまへるほどに」
藤原兼輔「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」
親子の描写になると必ずこの歌が引用される。数えたことないが20か所はあるのでないか。この段の後にも2か所出てきている。
③荒れた屋敷を形容する言葉として「八重葎」「蓬生」「浅茅生」が出てくる。
④帝が母君に手紙を届けている。極めて異例ではなかろうか。
よほど源氏を早く宮中に連れ戻したかったのであろう。
⑤母君の語る故大納言(桐壷更衣の父)の遺言が重要
「この人の宮仕の本意、かならず遂げさせたてまつれ。我亡くなりぬとて、口惜しう思ひくづほるな」
娘を宮中に差し出して一族の栄達を図りたいとの強い意思が表れている。
母君の言葉を借りて桐壷更衣の出仕の訳を語る場面ととらえておくのでよいと思います。
この場面、心に迫り泣かせますね。
更衣を偲ぶ母の心、若君を思う帝の心。
双方の思いと相まって「八重葎」「蓬生」「浅茅生」が一層侘しく感じられ母上の心情に胸の痛む思いです。
いつの世も親が子を思う気持ち、形はどうあれ変わらないのですね。
たとえ父君の遺言が一族の栄誉目的であったとしても娘を思う気持ちに嘘はなかったと信じたいですね。
ここでは母と父の愛情の相違が感じられます。
登場人物(ここに出てこない人も含め)言葉が複雑にからみあっていますがじっくり読めば何とか理解できました。
ありがとうございます。
①この段の冒頭「野分だちて、にはかに肌寒き夕暮のほど」、、、今の季節の様相ですね。先週~今週の台風、まさしく野分と言うに相応しいと思いました。すすきの茂る草原は風に揺らいでいます。
②なるほど、母と父の愛情には違いがありますかね。母の方は盲目的、父は将来を見据えた戦略的な想いという感じでしょうか。
父の想いというと先ずこの桐壷更衣の父大納言の遺言、次に明石入道の強烈な想いそして宇治十帖八の宮の優柔不断な想いが思い浮かびます。