人物談義(7) 葵の上・六条御息所

「葵」「賢木」は重厚で読み応えがありました。

【葵の上】
 ①葵の上=評価:並 好き嫌い度:嫌い
  →やっぱり素直に心を開いてくれない女性は好きになれません。

  葵の上 歌なし!!
  →何と歌が詠まれていない。紫式部の意図だと思うのですがなんぼなんでもそれは可哀そうに思います。

  物の怪が葵の上の口を借りて詠んだ歌:
   なげきわび空に乱るるわが魂を結びとどめよしたがひのつま(葵)

 ②葵の上は源氏より4才年上、源氏12才葵の上16才の時添い臥しのような形で夫婦になる。桐壷帝と左大臣による政略結婚でした。
  →夫婦になったと言っても形だけのものだったのだろうか。全く心が通っていない。
  →やはり日々歌を詠み合いお互いが打ち解けるべく努力しないとラブラブ夫婦になれない。
  →源氏も源氏なら葵の上も葵の上という感じ。一旦歯車が狂うと修復が難しい。

 ④疎遠な仲が続く内に源氏が二条院に姫君(紫の上)を引き取ったとの噂が耳に入る。
  →葵の上にはつらかったろう。勝手にしてよ(自分も勝手だが)と思ったのでは。

 ⑤結婚9年目葵の上23才の時初めて身籠り夕霧を出産。
  →六条御息所との車争い~物の怪に取り殺されるシーンは圧巻だった。
  →妊娠~出産と源氏との心の交流が通い始めたのだが、、、、遅かった。。

【六条御息所】
 ①六条御息所=評価:良 好き嫌い度:普通
  →すごい設定の女性。好きか嫌いかと言われると葵の上同様苦手な方です。

  六条御息所 歌11首 代表
   袖ぬるるこひぢとかつは知りながら下り立つ田子のみづからぞうき(葵)
   →誇り高き六条御息所が陥った恋の泥沼、、、。切実な歌です。

 ②前東宮の未亡人、世が世なら中宮にもなろうという身分だった六条御息所。源氏とわりなき仲になるがその恋は成就しない。
   →身分が全てを決する平安貴族社会、然も美貌も教養も抜群、六条御息所は最高の女性だったのでしょう。
   →その誇り高いところが却って源氏との仲の妨げになる。難しいものであります。

 ③「もし六条御息所がいなかったら源氏物語はもっと薄っぺらなものになっていたでしょう」(寂聴さん)
  ・葵の上との車争い
  ・物の怪になって出産近い葵の上を苦しめる場面
  ・源氏との野宮の別れ
  ・娘(秋好中宮)には手を出してくれるなと訴える死に際の場面
  ・死しても霊となって紫の上に憑りつき苦しめる場面
  →確かに源氏との腐れ縁はこれでもかと言う程すごいものがありました。

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7 Responses to 人物談義(7) 葵の上・六条御息所

  1. 青玉 のコメント:

    葵の上(並 普通)
    嫡妻でありながら源氏に心から愛されなかった可哀想な女性ですね。
    葵にも原因があるとは言え子どもを出産してからもう少し長生きしておれば又彼女も変わったかも知れません。
    和歌も詠んでいないので感情が余り見えてきません。
    出産の場面は印象に残る場面でした。
    これは紫式部だからこそ書けたのでしょうね。

    六条御息所(良、嫌い)
    源氏物語の女性の中で屈指の誇り高き女性ですね。
    何となく苦手なタイプです。
    出自、美貌、教養共に優れていたのでしょうね。
    そんな女性でも死に際の娘を思う訴えはやはり母の愛情を感じます。
    車争い、物の怪の場面が大きく印象に残っています。
    女の執念みたいなものを感じ何だか怖い女性のイメージがつきまといます。

    倉本一宏氏の講義
    ちょっと慌てん坊のおっちょこちょいで親しみやす感じの先生でした。
    紫式部の生涯を90分で語るのは所詮無理、15分も延長してなお終わらず次の教室が控えているため慌てて教室を飛び出していかれました。
    したがって話しかける事も出来ずでした。
    [日本が外国に誇れるものは「冨士山」と「源氏物語」だと思っている]が冒頭の言葉でした。

    源氏物語を完読するだけで紫式部の本質に迫ることはやはり片手落ちかなと思いました。
    以前式部さんも触れていらしたように源氏物語をより深く理解するにはやはり「紫式部日記」と「紫式部集」を読む必要があるようです。
    それと彼女の家系と生い立ち、父母の出自、時代背景、父親とのかかわり、晩婚と夫との早い死別、中宮彰子への出仕、親王の誕生それらを総合して紫式部の源氏物語中の男性観に影響を及ぼした経緯を考える事が一つの手掛かりになるように思いました。
    膨大な資料が用意されこれから読むところです。
    後二回で「紫式部と平安の都」をどれだけ理解できるかはわかりませんが気楽に聴いてみます。
    60席満席の中に健礼門院右京大夫集の同僚が三人も参加しておりました。
    その方たちは倉本氏の「御堂関白記」と「壬申の乱」から継続しているそうです。

    倉本先生と三田村雅子先生が今月28日新宿の朝日カルチャーセンターで対談されるそうですがどんお話になるのでしょうね。
    それと京都御所の隣、仙洞御所は是非訪れてくださいとのことでしたが今度の旅のコースには予定されているのでしょうか?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.六条御息所は怖い女性ですか。なるほどピッタリですね。
       空蝉・夕顔・末摘花といった中の品の女性との話、藤壷・紫の上とのむらさきのゆかりの話、それに奔放な女性朧月夜との話、、、と恋する青年光源氏のイケイケドンドンのお話が続いてきましたが「葵」と「賢木」ではガラリとトーンが変りました。

       車争い~物の怪と葵の上・六条御息所のガチンコの三角関係を読んで源氏にも苦労はあるんだ、源氏物語って何て奥が深いんだろう、ってちょっと恐ろしい感じがしたものです。葵の上と六条御息所は忘れることができません。

      2.いいお話きかれましたね。日本が世界に誇れるもの、富士山と源氏物語。全くその通りだと思います。さすが倉本先生いいことおっしゃいますねぇ。どうぞまた続きを聞かせてください。

      仙洞御所はまた別に予約せねばならず(同日の場合午前と午後)今回はちょっと無理だと思います。外から眺めることで我慢してください。

      • 青玉 のコメント:

        ありがとうございます。
        やはり御所関係は申し込みが必要なんですね。
        なんでも簡単に考えてしまってごめんなさい。
        外からお庭の雰囲気眺めるだけで充分です。

  2. 式部 のコメント:

     亡くなる直前にようやく一瞬心の通い合う夫婦なんて淋しすぎますね。
     年若い源氏にはまだまだ葵上の女心を深く思いやる余裕もなく、葵上も積極的に馴染もうとしない、これではうまくいきようがありませんね。
     上流の姫君もやはり素直が一番です。
     好きも嫌いもなく、こういう人もいるな、という感じです。

     源氏が亡くなるまで六条御息所の愛執は消えないようで、とても情けの濃い女性なんですよね。どれほど身分高く教養豊かであろうと、自制できないものもこの世にはあるのでしょうね。
     この人が物の怪となって長く登場することで確かに物語に深みやメリハリが出て、読者に迫ってくる感じがしました。
     この人のサロンには憧れを感じますし、その中心にいる六条御息所は素晴らしい女性なのでしょうが、やっぱり生理的に怖いです。恐ろしいと感じてしまいます。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      六条御息所は「ある大臣の娘」とありますがどの大臣かは分かりません。ひょっとすると左大臣とは政敵関係にあったのかも知れません。何れにせよ葵の上と六条御息所は出自も性格も似てる感じがします。それだけに互いにライバル意識もあったのでしょうか(車争いの所では家来同士が敵対心むき出しで対峙しています)。

      死んでも尚物語に登場する六条御息所に比べ一首の歌も詠ませてもらえず心内も殆ど述べられないまま亡くなった葵の上がいささか哀れです。源氏の正妻であり夕霧の母である葵の上のことをもう少し書いてあげて欲しかったなあと思います。

  3. 青黄の宮 のコメント:

    葵の上は、小生も「並」&「嫌い」です。でも、なぜ葵の上が源氏に心を開かなかったのか。寂聴さんは「葵の上は身分が高いだけにプライドが高く、しかも源氏より年上というコンプレックスがあったため」と解説していますが、いまいち納得できません。単に年下で皆の憧れであるハンサムボーイと仲良くすれば良いだけだったのに…。

    六条御息所は「良」&「苦手+怖い=嫌い」です。本来は素晴らしい女性なのに、源氏を好きになったばかりに恋に苦しむ可哀想な女性ですが、とにもかくにも、生き霊となって夕顔や葵の上に取り付くというのは嫉妬心が強過ぎて、恐ろしく感じます。こういう粘着質の女性は苦手だし、好きになれません。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。誠に真っ当なご意見だと思います。

      葵の上と六条御息所、この二人何となく感じが似ていますよね。隙がないと言うかしゃちほこばっていると言うか、、。人目もはばからず昼寝をしてた雲居雁とかほろ酔い機嫌で鼻歌を歌って登場した朧月夜とかとは全く違う感じ、窮屈な感じがします。おそらく回りに笑い声がおこることなどなかったのじゃないでしょうか。それじゃいけませんよね。

      源氏を好きになれなかった唯一の女性が葵の上で源氏が好きになれなかった唯一の女性が六条御息所かもしれません。

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