【末摘花】
①末摘花=人物評価:劣 好き嫌い度:嫌い
→紫式部の筆に乗せられた感じですがどう考えても人物的について行けません。
末摘花 歌6首 代表
からころも君が心のつらければたもとはかくぞそぼちつつのみ(末摘花)
→「からころも」ばかりに閉口した源氏の歌が面白かった。
唐衣またからころもからころもかへすがへすもからころもなる(行幸)
②没落皇族(と言っても父常陸の宮が亡くなっただけのようだが)の娘、これも雨夜の品定めで「中の品の女」と品定めされた範疇。荒れたる屋敷にひっそりと住む女性、そういうのに素晴らしい女性がいる! そう聞かされてきた源氏には乳母子大輔命婦の持ちこんだ話に有頂天になったのではないか。
→大輔命婦と源氏のやりとりが滑稽で面白かった。
③頭中将との恋のさやあてはお愛敬。
→ライバル同士には女性そのものもさることながら、ライバルに勝つことが目的になる傾向あり。宇治の姫たちをめぐる薫と匂宮も同様。
④それにしても屋敷の荒れよう、末摘花の容貌・仕草・態度、女房の質の悪さ、性悪叔母の登場、役立たずの兄(醍醐の阿闍梨)。よくぞここまで醜悪に書いてくれました。
、、、あなかたはと見ゆるものは鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物とおぼゆ
→この一文は忘れられない、源氏物語に違った意味での彩を添えていると思います。
⑤末摘花、いくらなんでもお粗末なお人ですね。そんな女性でも何度か通った女性は面倒を見る。蓬生で源氏が夜露を振り払いながら末摘花を訪れるシーンは感動的でした。そして二条東院で末永く庇護する。これも読者サービス、源氏はえらい!と思わせてくれます。
【源典侍】
①源典侍=評価:劣 好き嫌い度:嫌い
→面白いのですがこういう目立ちたがり屋、嫌いというより敬遠申し上げたくなります。
源典侍 歌6首 代表
君し来ば手なれの駒に刈り飼はむさかり過ぎたる下葉なりとも(紅葉賀)
→この時おん年57~8才、熟女と言おうか老女と言おうか。
②源氏との濡れ場に頭中が踏み込む場面には唖然としました。
「ふるふふるふ」と「あが君、あが君」は頭に焼き付いています。
→読者の女房たちも声をあげて笑ったのではないでしょうか。
③この源典侍、琵琶をよくし漢籍にも通じ美声で催馬楽を口ずさみ源氏と丁々発止やりあう。実は教養ある優れた宮廷女官だったのでしょう。モデルは紫式部の義理の姉、源明子と言われてますがどうなんでしょう。
④紫式部、どういう訳か源典侍をお気に入りで葵祭りの時(葵)に再登場しさらに70才で朝顔の巻に出て来たときにはギョッとしました。
→これも読者サービスかも知れません。「源典侍は今!」なんてね。
末摘花、源典侍共に劣、普通ですがこの物語を盛り上げてくれた役者としてはなくてはならないい人物ではないでしょうか。
末摘花
からころも、からころもは特に面白かったしその容姿にもめげず源氏を待つ女心にはいじらしいものがあります。
又、頭中との恋の先争いも楽しめました。
こう言う人物も恋の標的になるところが良いですね。
和歌の訂正お願いします。
陸奥(みちのく)の末より摘みし花人ぞその紅(くれない)のあやにくかりき
陸奥(みちのく)の末より摘みし花ありきその紅(くれない)のあやにくかりき
源典侍
年増女のお色気っぷりには笑ってしまいました。
この物語の愛敬でしたね。
紫式部の描く女性像は誠に多彩な顔ぶれです。
70歳まで物語に登場したのはお見事です。
もしかしてこの女性、容貌はともかく自分の才能に自信たっぷりだったのかもしれませんね。
愛すべき女性たちです。
近親結婚が多かった時代です。宮家や貴族の家にどうしようもない子供たちが生まれ成長していったことは予想されます。
大鏡や栄花物語にも実例がありますが、周囲がいくら繕っても特に男子の場合はバレてしまいます。
村上帝の女御芳子の生んだ八宮(永平親王)は「御心きはめたる白物(しれもの)」と記されています。
深窓の姫君の場合、外部にそれが漏れることは少ないでしょうが、この末摘花の場合のように、男が通ってきてはじめてその実態がわかるということもあったのでしょうね。
末摘花を気の毒と感じるとともに、ひたすら源氏を待ち続けた一途なところ(たとえそれしかできなかったにしても)は評価したいです。
源典侍は当時の読者層(女房)にけっこう受けていたのかもね。今読んでも「えー、こんな人いたの?」という感じで、やっぱり面白いですものね。
モデルにされた人の逆鱗に触れたようですから、源明子にはそういう部分があったのかもね。だからよけい読者に受けた?(週刊誌の記事みたいに)
源氏物語中で一番か二番の型破り人物で面白いのですが、こんな人が身近にいたら困りますねえ。
しかしながら、末摘花も源典侍も嫌いにはなれません。お近付きにはなりたくないだけです。
いろいろな人がいるから、この世は面白いのですもの。
青玉さん、式部さん ありがとうございます。
お二人の温かい評価とコメントに俎上に載せられた二人も胸をなでおろしていることでしょう。
1.確かに先天的に問題のある人も多かったのでしょうがある程度は教育でカバーできたのではないでしょうか。末摘花も唐衣一本とは言え歌は詠んでいるし古歌や古物語を読んだりもしています。源氏も少し気のきいた家庭教師でも派遣して教育してあげればよかったのに、、、と思います。
2.源典侍、考えるほどに面白いですねぇ。源氏が宮中の源典侍に忍んで行った頃源典侍には修理大夫というれっきとした通い人がいた、すごくリアルで多分実際にあった出来事をモデルにしているんでしょうね。エッチな催馬楽「山城」が下敷きにされ、蜘蛛のふるまひはしるかりつらむものを=「男の来訪に先立って蜘蛛がその前兆として巣を張るものだという俗信」が引用されていたり、紫式部の大サービス振りが感じられます。
藤壷との重っ苦しい話が中心の「紅葉賀」、源典侍の登場で読者もニンマリしたのじゃないでしょうか。世の中、奔放に明るく行かなくっちゃ!!
小生は面食いだから、末摘花は苦手です。容貌が悪くても、それを補う美点があれば好きになる余地もありますが、彼女の場合、非常識な態度や行動、荒れた屋敷を気にしない無神経さなど欠点ばかりが目立ち、救いようがない感じです。よって、小生も「劣」および「嫌い」に同意します。
源典侍については、彼女が物語に登場した時に色気たっぷりな熟女というので、小生は何となく「五月みどり」や「デビ夫人」を頭に思い浮かべてしましました。小生はこの二人は必ずしも悪くないと感じています(趣味が悪いでしょうか)。その上、源典侍は陽気で面白い女性です。小生はこうしたタイプの人物は世の中を明るくするので、好ましいと思っています。ということで、小生の彼女に対する人物評価は「並」、好き嫌い度は「好きに近い普通」です。
{身辺雑記}
二週連続の台風襲来でやるべき事が溜まりつつあり忙しい週となりそうである。
皆さん台風は大丈夫でしたか?
先ず手始めが今月からの三カ月、月一回の講座で今日が第一回目。
紫式部と平安の都
講師 国際日本文化研究センター教授 倉本一宏氏
① 紫式部の生涯
② 源氏物語の謎・紫式部の故地
③ 源氏物語の故地
以上三回の講座で、今回の源氏の旅にうってつけと思い申し込みました。
講師の略歴を見たら1958年三重県津市生まれとあり高校は皆さんの後輩、大学も清々爺さん、青黄の宮さんの後輩です。
人気講師のようで「御堂関白記」の講座の時は満席で諦め今回は何とか残席一名に間にあいました。
先ずは見聞してからのお楽しみで詳しくは明日にでも・・・
それは素晴らしい、是非後で感想など聞かせてください。
倉本氏って売れてますよね。私も道長に関する新書何冊か読んだことがあります。津市とは知ってましたが同じ高校とは知りませんでした。機会あれば話かけておいてください。
ありがとうございます。
面食いでありながらそれだけで評価せず全体を公平に見渡した優しいコメントにフィードバックされた末摘花も納得じゃないでしょうか。
→そう言えばフィードバック制なんてアホな人事評価システムもありました。
源典侍、なるほどそうですねぇ。好き嫌いと言っても自分とどんな関係としてなのかで違いますもんね。ただ知ってるだけで関わりのない人としてか、友人・知人としてか、深い関係のパートナーとしてか。
源典侍は「好きに近い普通」ですか。よく分かりました。
「おひまなら来てよね」程度ならいいけど「一週間に十日来い」と言われたら「こまっちゃうな」と言うことですかね。