【藤壷】
①藤壷=評価:良 好き嫌い度:普通
藤壷 歌12首 代表
世がたりに人や伝へんたぐひなくうき身を醒めぬ夢になしても (若紫)
→密通後の源氏の贈歌(見てもまた、、)への返歌。大変なことをしてしまった!
②「紫のゆかり」「もののまぎれ」、源氏物語第一部のトップストーリーでしょう。桐壷更衣が亡くなった後その更衣にそっくりな人として藤壷が登場するのだが先帝の四の宮なら桐壷帝も先刻ご承知だった筈。チト不思議に思い勘ぐってみました。
→気の強い弘徽殿女御にちょっと嫌気がさして身分の低い桐壷更衣に癒しを求めた桐壷帝。その更衣が亡くなり回りを見渡したところ、いましたいました、先帝の四の宮が。これで弘徽殿女御・右大臣家の勢いを削ぎ親政ができる、、、桐壷帝は政治的にそう考えたのではないでしょうか。
③藤壷との密通場面(若紫13)は凄かったですねぇ。病気で里下がりしてきている藤壷の寝所に手なづけた女房(王命婦)の手引で侵入する。省筆ながら行間を読むにちょっと考えられない異常な官能場面だったと言えましょう。
④生まれた皇子を挟んでの桐壷帝-藤壷-源氏の三角関係は見どころでした。ともあれ桐壷帝は皇子を生んだ藤壷を中宮にして皇子を次の次の天皇にする手筈を整え譲位する。そして藤壷と皇子の後見を源氏に託す。見事な「賜姓源氏の物語」の進め方だと思いました。
⑤藤壷は皇妃それも中宮なのであまり露骨な人物描写は控えられていますが皇女でありながら「強い人」「しっかりした人」だと思います。しっかり桐壷帝に寵愛され中宮の地位を獲得し源氏の恋慕を巧みに交しつつ(溺れてしまっては終わり)源氏の庇護を得て国母になる。
→姪であり朱雀帝の皇女だった「女三の宮」の頼りなさとは大違いですねぇ。
⑥藤壷の身体描写(容貌・顔立ち・身体つきなど)は遠慮してか書かれていません。賢木で源氏が迫る場面で脱ぎすべらした御衣ともども黒髪をとられて抱き寄せられる場面、エロっぽい所ですがそれ以上の描写はありません。
⑦「かかやく日の宮」と称された藤壷、源氏は藤壷のどこに一番魅せられたのでしょう。
・母似だった(と言われてた)から
・帝の妃だから
・父の妻(義母)だから
→よく分かりませんが普通に考えて帝妃という身分ステイタスじゃないでしょうか。母に似てるからとかましてや義母だからなんて近親相姦嗜好などはなかったと思います。
何れにせよ私には別世界で好き嫌いを言えるお人じゃありませんが、苦手というかちょっとゴメンなさいというタイプかと思っています。
藤壺 (良) (普通)
「かかやく日の宮」と称され、光源氏と共にスポットライトを浴びる藤壺、容姿共に政治性も長けていたように思います。
例えば後に六条御息所の娘(前斎宮)を源氏と共に冷泉帝の女御に入内させるなど女性としてはかなりしっかりした人物で優れていたように思います。
ここで清々爺さんが書かれている桐壺帝を読んでいてなるほどと思いました。
式部さんもおっしやっていたようにバランス感覚に優れた人物だと改めて思いました
私は人物評価を並にしましたが優に近い良に訂正します。
女性に対するバランス感覚はなかったのかも知れません。
藤壺
源氏と過ちを犯したものの(レイプに近い)後は源氏がいくら言い寄っても二度と過ちを犯さなかったのは意思が強いと思います。
源氏が藤壺に魅せられたのは私はやはり母への追慕の念が根底にあったと思います。
幼くして母と別れた源氏にとって母は永遠、その面影を求めたのではないでしょうか?
男の子にとって母は永遠と言いますがいかがでしょう?
そんな単純なものではないかも知れませんが・・・
ありがとうございます。
1.桐壷帝の評価、良へ訂正しておきます。聖代を築いた賢帝ですもんね、確かにそうかもしれません。
2.藤壷の皇女らしからぬしたたかな政治力が発揮されてるのはおっしゃる通り前斎宮(後の秋好中宮)を冷泉帝に入内させ中宮にまでしたところだと思います。頭中の娘弘徽殿女御との後宮争いでしたね(絵合)。これで頭中側の権力を制限し、冷泉帝・秋好中宮ともにがっちり源氏が後見するという態勢ができた訳ですから。藤壷も源氏への愛に溺れることはなかったものの源氏が好きで頼りにしていたと言えましょう。
3.母への追慕の念ですか、、なるほどそうかもしれません。少なくとも最初近づいて(恐らく5才年上の藤壷に子ども、或いは弟のように)可愛がってもらったのでしょう。
源氏物語は母なし子の物語だとも言われています。
光源氏、夕霧、紫の上、玉鬘、宇治の大君・中の君
(実母から引き離された)明石の姫君
源氏は藤壷に母の面影を求めたのかも知れませんがそれが昂じて密通にまで至ったというのとはちょっと違うような気がしています。まあミックスでしょうかね。
藤壺は皇女で美しい上に、聡明で思慮深く決断力も有する申し分のない女性です。私見では、生れ・容貌・教養・性格・能力などあらゆる角度から総合的に評価して、源氏物語に登場する女性の中で最高の女性であると思います。
よって、彼女に対する小生の人物評価は「優」です。但し、好き嫌い度については、藤壺自身の心情について記述が少なく、プライドが高くて少し近寄りがたい気もするので、「普通」に留めておきます。
藤壺のように上の品の生まれでもなんでもないのですが、小生が藤壺について抱くイメージはモナコのグレース・ケリー公妃。明るさとセクシーさを売り物としたマリリン・モンローとは対照的に、彼女は気品に満ちた美しさで「クール・ビューテイ」と賛美されました。近々、彼女をモデルとした映画が公開されるので、楽しみです。
ありがとうございます。
なるほど、藤壷は登場する女性の中で最高の女性ですか。その通りでしょうね。紫式部の創作意図も読者にそう思わせたかったのでしょう。その最高の女性と密通するというところが醍醐味なんでしょうが、逆に一度ならず二度まで源氏の侵入を許し子まで成してしまった、、、ガードの甘さというか心の隙間というかその辺が気になるところです。手引きした王命婦に不快感を示す場面がありましたが結果として大変な罪を得ることになりそのため成仏できず源氏の夢に現れるところは哀れでありました(朝顔)。
→まあ神ならぬ人間誰しも完璧ではあり得ないという設定なんでしょうかね。
グレース・ケリーとマリリン・モンローですか。淑女をベースに「時には娼婦を」良しとする青黄の宮さんらしいですね。映画、私も見に行くことにします。
ニコール・キッドマン演じるグレースケリー、どこまで本人に迫れるか興味ありますね。
藤壺とグレースケリー、共通はやはり気品のある近寄りがたい美しさでしょうか。
私は「裏窓」の頃のグレースケリーが好きです。
それとモナコ公妃の頃は輝くばかりの美しさでしたね。
「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」来週末公開、楽しみです。
藤壺、私は好きですねえ。
奈良時代だったら女帝になって、申し分なく力を発揮できたタイプの女性だと思います。
藤壺の心内は想像するだけですが、源氏への恋心は心の奥深くにずっとあったと思いますよ。
その時々に何をなすべきか、冷静に判断できる女性だったのでしょうね。
教養や政治力や美しさだけでなく、恋する心(忍ぶ恋)を併せ持った素晴らしい人で、私にとってはいい女なのです。藤壺中宮は。
ありがとうございます。
そうか、藤壷は源氏への「忍ぶ恋」に生きた女性だったのですね。何としても密事はバレてはならない、、、。ともすると源氏は甘えて身の破滅をも省みず迫ってくる。紅葉賀の青海波の場面、賢木の源氏が已む無く塗籠に隠れる場面、、、。藤壷には「年下の可愛いツバメ」的な源氏が危なっかしくてたまらなかったのでしょう。源氏の「あやにくな恋」に対する絶対バレてはならない「忍ぶ恋」、そんな恋に生きた女性だった。式部さんが好きになるの納得です。
長大な源氏物語のお話は、思えば、
この藤壺との“ビックバン”が凡ての始まり。
亡き母の面影を慕い、愛を求め、子まで宿させた男(源氏)を
巧妙に操り、その不義の子を帝にする為、男を後見として指名・・・。
凄い女性ですね。
代表歌も、よく読めば凄い。
源氏が「見てもまた 逢う夜まれなる 夢のうちに
やがて紛るるわが身ともがな」と、
やっとの逢瀬も夢の様、私はこの夢の中で消えてしましたい
と言うと、
藤壺は「世がたりに 人や伝へん たぐひなく
うき身を醒めぬ 夢になしても」 私の不幸な身体を
この夢の中に消してしまっても、後世まで噂にされないかしら。
この藤壺への好き嫌い具合で、その人の人柄が
分かってしまいそうです。
進乃君
ありがとうございます。さすが本質を鋭くついていますねぇ。
藤壷との密通は「ビッグバン」ですか。なるほど。もう一つ例えて言うと空蝉・夕顔は単なる予震で、藤壷との密通が超極大地震、その後の諸々のラブアフェアは全てその余震に過ぎない、、、と言えましょうか。世間を揺るがすインパクトの度合いは天と地ほども違うと思います。
私も「空蝉」・「夕顔」の内は「すげえなあ~~」と思いながら読んでいたのですが「若紫」で「藤壷との密通」と「紫の上の連れ去り」を読んだ時は「こりゃあヤバイんじゃない!」というのが正直な感想でした。話の異常さにちょっと引けた感じもしました。
それを救ったのがやはり源氏というキャラクター。人間を超えた神がかり的なスーパーヒーロー源氏であったからこそこの物語は進んで行けたのではないかと思っています。
密通後の藤壷と源氏、表面的には藤壷の方が上位に立って源氏を牛耳っているように見えますが(そう書いてありますが)読者の心は源氏を上と見て上から目線で藤壷を見下しているように思うのですがいかがでしょう。