p212-224
20.僧都立ち寄る 浮舟懇願して遂に出家する
〈p296 ようやくのことで、鶏の鳴き声を聞いて、〉
①いびきの人はいととく起きて、粥などむつかしきことどもをもてはやして、、、、
→母尼、老尼たち老醜をさらした姿ではあるが浮舟には親身に世話している。
②僧都、今日下りさせたまふべし
→比叡山から僧都が京へ下りるのは余程のこと。女一の宮が病気になったためである。
③いと多くて、六尺ばかりなる末などぞうつくしかりける。筋なども、いとこまかにうつくしげなり。
→髪を下ろす前の浮舟の髪の描写。長く見事な黒髪である。
④母尼→僧都「、、、忌むことうけたてまつらんとのたまひつる」
→浮舟に頼まれたことを忘れずに僧都に伝える。母尼も呆けてない、えらい。
⑤浮舟「尼になさせたまひてよ。世の中にはべるとも、例の人にて、ながらふべくもはべらぬ身になむ」
→浮舟の必死の訴え。
⑥僧都「思ひたちて、心を起したまふほどは強く思せど、年月経れば、女の御身といふもの、いとたいだいしきものになん」
→諌める僧都。僧都は浮舟の第一発見者であり、常に浮舟のことが心にかかっていたのであろう。キチンと浮舟に向き合って相談に乗ってやっている。
⑦僧都は考えた末浮舟に受戒させるべく合意する。然もその日の内に。
→物語のアヤとは言え何ともあわただしい。
⑧尼削ぎの場面
鋏とりて、櫛の箱の蓋さし出でたれば、、、、
几帳の帷子の綻びより、御髪をかき出だしたまへるが、いとあたらしくをかしげなるになむ、しばし鋏をもてやすらひける。
→経験者寂聴さんはこの場面を「はじめて紫式部は、出家の儀式を具体的にリアルに書き残した」と絶賛している(寂聴訳巻十 源氏のしおりp391)
→髪を切るのも几帳を隔ててというところが凄いですね。
⑨僧都「親の御方拝みたてまつりたまへ」「流転三界中」
→出家、世を捨てる。親との俗縁も切るということになるのであろうか。
⑩老尼、女房たち
「残り多かる御世の末を、いかにせさせたまはんとするぞ。老い衰へたる人だに、今は限りと思ひはてられて、いと悲しきわざにはべる」
→中将が浮舟の所へ通って来る賑やかな事態を期待していた人たちにもショックだったことだろう。
⑪浮舟 なほ、ただ今は、心やすくうれし。世に経べきものとは思ひかけずなりぬるこそはいとめでたきことなれと、胸のあきたる心地したまひける。
→出家を果たしてホッとする浮舟。分からないではないが何だか空しい感じがする。
心のおもむく先はやはり出家への道。
僧都が山を下りたのを機に必死に訴える浮舟。
妹尼の留守のうちが心乱れることなくかえって良い・・
読者とてこの場面、見事な黒髪を想像して「えっ!もったいない」と思わずにはいられません。
決意は固かったのでしょうか?
それよりほかに生きる道はなかったのでしょうか・・・
当時の女が髪を切ると言うのは身を切られるに等しい事ではないのでしょうか。
そこまでしなくても・・・と読者も思い乱れるところです。
僧都「親の御方拝みたてまつりたまへ」
浮舟の思い、いかばかりか・・・
出家の本望を遂げた浮舟の末尾の言葉。
なほ、ただ今は、心やすくうれし。世に経べきものとは思ひかけずなりぬるこそはいとめでたきことなれと、胸のあきたる心地したまひける。
読者もただただ痛々しい!!
ありがとうございます。重大な場面ですねぇ。
きっと中将の攻勢が浮舟の出家を決心させたのでしょう。浮舟もそっとしておいてくれればもう少しわが身の行く末を考える間もあったのでしょうが。
僧都の即決はいかがなものでしょう。私にはチト性急な気がするのですが。僧都は浮舟の第一の庇護者である妹尼に一言の相談もなく(中将が通っていること、妹尼が浮舟との結婚を願っていることなど全く知らずに)浮舟の言い分だけを聞いて出家させてしまった。
→読者としてすんなり納得しがたい感じです。
この段、読者は浮舟に何とか幸せになれる道をさがして欲しいとアレコレ考えヤキモキしてる所ですが出家を実行してしまった浮舟は「もう俗世は過去のこと」と達観している。
→寂聴さんの言われる「源氏物語で女は出家するとみな強くなる」ってことでしょうか。