手習(3・4・5) 浮舟、小野山荘へ

p142-150
3.妹尼、女を預り介抱するが、意識不明
 〈p236 母尼君たちの一行が到着して、〉

 ①僧都の妹尼の登場。この人が浮舟に寄り添っていく。
  「おのが寺にて見し夢ありき。いかやうなる人ぞ。まづそのさま見ん」
  →妹尼 50才ばかり 未亡人で中将に嫁いだ娘を失くし傷心している。娘の身代わりでも得たいものと長谷寺にお詣りしてきた。その願いが叶うのかも知れない。

 ②いと若ううつくしげなる女の、白き綾の衣一襲、紅の袴ぞ着たる、香はいみじうかうばしくて、あてなるけはひ限りなし。
  →妹尼は一目見てこれは高貴な女君だとピンと来たことだろう。

 ③妹尼「もののたまへや。いかなる人か。かくてはものしたまへる」
  →やさしくいたわりながら声をかける妹尼。こんな人に見つけられてよかった!

 ④尼君は、親のわづらひたまふよりも、この人を生けはてて見まほしう惜しみて、うちつけに添ひゐたり。
  →そうだ、母尼が重病だったのだ。母親をほっぱらかして女を介抱する妹尼。何と慈悲深い人であろう。

 ⑤問いかける妹尼に女(浮舟)が答える。
  「生き出でたりとも、あやしき不用の人なり。人に見せで、夜、この川に落とし入れたまひてよ」
  →第一声がこんな言葉。何と哀しいことを言うのでしょう!

4.下人来て、八の宮の姫君葬送のことを語る
 〈p214 一行は二日ばかり、そこに滞在します。〉

 ①宇治の里の下人どもが僧都に先ごろの出来事をご注進する。
  「故八の宮の御むすめ、右大将殿の通ひたまひし、ことになやみたまふこともなくてにはかに隠れたまへりとて、騒ぎはべる。、、、」
  →「浮舟」巻末とストーリーが繋がる。
  →ここまで聞いても僧都は見つけた女が浮舟とは思いつかない。もう少しの所だったのに、、、。

 ②妹尼の女房たち
  「大将殿は宮の御むすめもちたまへりしは亡せたまひて年ごろになりぬるものを、誰を言ふにかあらん。姫宮をおきたてまつりたまひて、よに異心おはせじ」
  →薫が宇治の大君に通っていたことは噂になっていたが、浮舟のことは秘密裡に進めていたので噂になっていない。
  →帝の女二の宮を娶って世にときめく薫が宇治に身分の低い女を匿ってるなどとは世間では思いもつかない。当然である。

5.母尼回復し僧都ら女を連れて小野へ帰る
 〈p242 母の尼君は、御病気がよくなられました。〉

 ①尼君、よろしくなりたまひぬ。
  →よくなってよかった。この尼君の病気のお蔭で浮舟が発見されたのです。

 ②比叡坂本に、小野といふ所にぞ住みたまひける、
  →舞台は宇治から離れ小野に移ります。以後宇治は物語の舞台からは消えることになります。
  →浮舟小野山荘
    かの夕霧の御息所のおはせし山里よりはいま少し入りて、山に片かけたる家なれば、、(手習11p166)とあり横川の手前になる。
  (夕霧小野山荘は今の修学院離宮あたりと想定されている)

 ③宇治から小野まで山道を約25KM
  僧都は親をあつかひ、むすめの尼君は、この知らぬ人をはぐくみて、みな抱きおろしつつ休む。
  →ちょっと現実離れした宗教心に厚い慈悲深い人たちである。

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2 Responses to 手習(3・4・5) 浮舟、小野山荘へ

  1. 青玉 のコメント:

    瀕死の状態でかろうじて助けられた浮舟。
    妹尼の亡き娘の身代わりとばかりに手厚い介抱を受けるも蘇生には程遠い。

    宇治の里の下人たちの世間話。
    そして浮舟は僧都らに小野の山荘へ連れて行かれる。
    小野の山荘の位置関係よく解りました。ありがとうございます。

    浮舟はあのまま誰にも発見されず宇治院に打ち捨てられてもおかしくなかったのに慈悲深い一族に助けられている。
    やはり初瀬詣はご利益が大きいのでしょうか。
    玉蔓と言い浮舟と言い運命を左右する出逢いが設定されておりそう思わずにはいられません。
    ここで「浮舟」最後と「手習」冒頭の部分が繋がりなるほどと納得させられます。
     浮舟の新しい環境、小野での運命はどのように開けていくのかとても楽しみです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      1.玉鬘と浮舟、源氏物語で重要な役割を果たす二人の中の品の女性。田舎育ち、教養あり、賢い、、、共通点ありますね。そして二人とも初瀬長谷観音のご利益を得ている。面白いと思います。これも紫式部お得意のシンメトリーなんでしょうか。

      2.浮舟には雨がついて回ってますね。
        ・薫と三条隠れ家で初めて契った時が雨(東屋39)
        ・匂宮に対岸へ連れ出された時、これは雪(浮舟17)
        ・匂宮との秘密が露呈し始めるのが雨降り続く時(浮舟20)
        ・そして失踪、発見されたのが雨の中(手習2)

       「浮舟と言えば雨」のイメージですがいかがでしょう。

       宇治十帖浮舟の愛読みすすむいつしか夜中の雨になりたり(磯村千鶴子)
        [「光源氏の人間関係」(島内景二)からの孫引き]

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