手習(1・2) 横川の僧都 宇治院で怪しきもの発見 浮舟か!

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式部さんの朗読、夢浮橋まで完了、全てアップさせていただきました。ざっとカウントして65時間に及ぶ大偉業です。これだけ並ぶと壮観です。ご苦労談などは追々伺うとして先ずは完読いただいたことに対しお礼とお祝いを申し上げます。ありがとうございました。

手習 ほど近き法の御山をたのみたる女郎花かと見ゆるかりけれ 与謝野晶子

蜻蛉の巻は浮舟が失踪したK27年3月末から始まり浮舟の四十九日が終り夏が過ぎ秋になって蜻蛉のはかなげに飛び交う場面で終わっていました。手習の巻は浮舟が失踪したK27年3月末まで遡って始まります。

横川の僧都と妹尼が助演男女優として登場、宇治から小野の山里へと舞台が移ります。新しい最後の物語の始まりです。

p132-142
1.横川の僧都の母尼、初瀬詣での帰途発病す
 〈寂聴訳巻十 p228 その頃、比叡山の横川に、某の僧都とかいって、〉

 ①p133挿絵比叡山周辺図参照 横川は根本中堂の北方山間
  なにがし僧都=源信(恵心僧都)がモデル
  →当時誰しも知る高僧 物語が現実味を帯びる。

 ②僧都 60ほど 母尼 80あまり 妹尼 50ばかり
  母想いの僧都 妹尼も母・兄と睦ましい関係にある。

 ③古き願ありて、初瀬に詣でたりけり。
  →初瀬長谷観音参りが物語を作っていく。

 ④母尼が初瀬からの帰途宇治で病気になり僧都が横川からかけつける。
  限りのさまなる親の道の空にて亡くやならむと驚きて、急ぎものしたまへり。 
  →親孝行の僧都、徳の高い僧であることを印象づける。

 ⑤故朱雀院の御領にて宇治院といひし所、このわたりならむと思ひ出でて、
  →朱雀院が出てくる。ああ、あの源氏の兄で女三の宮の父の朱雀院だ、、、。

2.僧都、宇治院に赴き怪しき物を発見
 〈p230 まず、僧都がさきにお出かけになります。〉

 ①いといたく荒れて、恐ろしげなる所かなと見たまひて、「大徳たち、経読め」などのたまふ。
  →荒れたところには妖怪変化が棲む。経を読んで追い払う。当時の常識だったのだろう。

 ②森かと見ゆる木の下を疎ましげのわたりやと見入れたるに、白き物のひろごりたるぞ見ゆる。
  →白い物、狐か妖怪か、、、。読者はよかった浮舟が出て来た、、、とピンと来る。

 ③頭の髪あらば太りぬべき心地するに、、、
  →坊主頭では髪の毛が逆立つこともない。ユーモア表現に読者もホッとする。

 ④僧都「これは人なり。さらに非常のけしからぬ物にあらず。寄りて問へ。亡くなりたる人にはあらぬにこそあめれ。もし死にたる人を棄てたりけるが、蘇りたるか」
  →さすが僧都、冷静である。当時は人をさらって棄てるなんてこともあったのだろうか。恐ろしい世の中である。

 ⑤宿守「狐は、さこそは人はおびやかせど、事にもあらぬ奴」と言ふさま、いと馴れたり。
  →狐や妖怪など何とも思ってないような荒くれ者の宿守。頼もしい限りである。

 ⑥僧「雨いたく降りぬべし。かくおいたらば、死にはてはべりぬべし。垣の下にこそ出ださめ」
 僧都「まことの人のかたちなり。その命絶えぬを見る見る棄てんこといみじきことなり。池に泳ぐ魚、山になく鹿をだに、、、、、」
  →雨が降り続いている。
  →注12 常識的現実的な僧と聖職者たる僧都の対比。この僧都なら浮舟を何とかしてくれるだろう。紫式部の思いのままにストーリーは進行して行きます。

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3 Responses to 手習(1・2) 横川の僧都 宇治院で怪しきもの発見 浮舟か!

  1. 青玉 のコメント:

    式部さん完読ありがとうございます。
    65時間とはすごい、素晴らしい大偉業ですね。
    この貴重な朗読、CDにならないでしょうか?

    都の表舞台の裏で浮舟は運よく助けられていたのですね。
    小野の山里は一条御息所の小野の山荘と同じ場所でしょうか?
    この地図を見ると修学院離宮があるのでどうも近辺のような気がしますが・・・

    ここでも初瀬参りが物語のきっかけになり物語最後の新しい三人の人物の登場ですね。
    都からがらりと舞台が一新され新たな展開にほっとします。

    故朱雀院の宇治院近くで浮舟が発見されるのも何らかの縁でしょうか?
    浮舟発見の様子が狐騒動、妖怪変化を織り交ぜながら詳しく語られていてとにもかくにも読者は浮舟が生きていて安堵の思いです。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      京での宮の方やら小宰相の君やらの話にはウンザリしていましたからねぇ。ホッとします。

      浮舟が行く小野山荘と一条御息所の小野山荘の位置関係については明日の手習5.でコメントしましたのでご参照ください。一条御息所の小野山荘(夕霧小野山荘)は地図で修学院離宮付近。浮舟小野山荘はそこから少し奥に行ったあたり(地図で修学院離宮と横川の中間くらい)の感じでしょうか。

      宇治での浮舟の見つかり方、うまく書けてますねぇ。妖怪や憑物など当時科学であった現象を取り混ぜ宗教的権威も動員して一旦死んだ浮舟が生き戻ってきた様子が活き活きとユーモアも交え語られています。何やら功徳のありそうな僧都の登場にも期待が持てそうです。

    • 式部 のコメント:

       源氏物語の朗読、最後まで終えることができ、ほっとしています。とりあえず54帖読み通すことが目標でしたので達成感があります。
       みなさまのお蔭だと感謝しています。
       青玉さんの和歌もあと2首ですね。よくぞここまでと感心しています。
       完読記念旅行で、いろいろ語り合いましょうね。
       大いに楽しみにしています。

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