p48-57
6.匂宮、時方をやり、侍従を呼び実情を聞く
〈p159 中の君は、今度の宇治での出来事については〉
①女君、このことのけしきは、みな見知りたまひてけり。
→中の君は匂宮と浮舟の一部始終について全て承知していた。
→匂宮が目をつけた最初の経緯、探し回っていて正月の手紙で宇治に居ると知ったこと。その後、宇治に通い深い仲になったこと、そしてその浮舟が突如亡くなってしまったことまで。
→これぞ女の鋭い勘であろう。匂宮の様子を見てれば全てが分かったのであろう。
②匂宮「隠したまひしがつらかりし」
→匂宮も中の君には心を許すことができる。
→「何で浮舟の素性を言ってくれなかったのか、貴女同様然るべくお世話したのに、、」
匂宮の本音であろう。
③時方と道定、匂宮の使いとして宇治へ
ここに来ては、おはしましし夜な夜なのありさま、抱かれたてまつりたまひて舟に乗りたまひしけはひのあてにうつくしかりしことなどを思ひ出づるに、
→匂宮と浮舟のラブシーンを思い出す。読者にも改めて小舟で宇治川を渡る場面が甦る。
④右近「、、参りても、はかばかしく聞こしめしあきらむばかりもの聞こえさすべき心地もしはべらず、、」
→右近は匂宮のためにも隠し通してきたのだし、今さらお話しすることもないと断る。
⑤時方「右近さんがダメなら侍従さん、来て下さい」
侍従ぞ、ありし御さまもいと恋しう思ひきこゆるに、いかならむ世にかは見たてまつらむ、かかるをりにと思ひなして、参りける。
→侍従は匂宮見たさに参上する。若い侍従の正直な気持ちであろう。
⑥侍従は匂宮に全てを包み隠さず報告する。
、、夢にも、かく心強きさまに思しかくらむとは思ひたまへずなむはべりし、、
御文を焼き失ひたまひしなどに、などて目を立てはべらざりけん
→匂宮の前で浮舟の様子を語る侍従、さぞ胸がつまったことだろう。
⑦匂宮「わがもとにあれかし。あなたももて離るべくやは」
→浮舟の様子を正直に話す侍従に匂宮はいじらしさを感じたのであろう。色好みの匂宮である。
⑧暁に帰るに、かの御料にとてまうけさせたまひける櫛の箱一具、衣箱一具贈物にせさせたまふ。
→とにかく使いの者には褒美(お土産)を持たせる。大変な習慣があったもの。さぞ物入りだったことだろう。
こうやってここまで読み進めてくると匂宮って正直で可愛い男とも思えてきます。
大胆不敵な面もあれば何でも自分の思い通りにしないと気が済まない我儘な幼児性、これらは薫に比べてとても解りやすいです。
又、中の君は聡明で大人の女ですね。
浮舟の巻、宇治での屈指の名場面が読者にもありありと思い出されます。
右近の代わりに侍従がお召し。
匂宮と京へのあこがれもあったでしょう。
一部始終を打ち明ける若い侍従の健気さにこの上ないご褒美のお土産を贈る。
想像もできないほど浮世離れした世界なのですね~
ありがとうございます。
1.匂宮の幼児性、その通りですねぇ。まあ皇子たる者そんなものなんでしょうか。それにしても匂宮、よく病気になりますね。浮舟と最初に契り翌日も居続け京に帰って病気、対岸で耽溺の二日を過した後も帰って病気(これは房事過多か)そして今回浮舟が死んだと聞いて悲嘆のあまり病気。純真無垢なのかも知れませんがちょっと弱いですねぇ。
そう言えば源氏も若い時よく病気してました。夕顔を失って帰邸後重病になってるし翌年春もわらわ病にかかってそれで北山に行っています。
その点薫は強い。いや強すぎますね。感受性が弱いからでしょうか。
2.侍従は憧れの匂宮の前で浮舟が如何に匂宮に身も心も惹かれていたか、いささかの脚色も交えて伝えたのでしょう。匂宮はそれを聞きつくづく浮舟を哀れと思い側仕えの侍従をも愛おしく思ったのでしょう。
「、、、何故もっと早く浮舟を救いだしてやれなかったのか、、、」
居ても立ってもおれなかったことでしょう。病気になるのも分かるような気がします。