p57-69
7.薫、右近から事情を聞き、嘆きつつ帰京す
〈p168 薫の大将もやはり、浮舟の君の死が気がかりなので、〉
①大将殿も、なほ、いとおぼつかなきに、思しあまりておはしたり。
→何やかやと躊躇していた薫もさすがに居ても立ってもいられなくなったか宇治を訪れる。
→自分の情人ではないか。すぐにも訪れるのが普通と思うのだが。
②薫が問い質すのに右近はありのまま真相を話す(匂宮とのことは伏せて)
かねてと言はむかく言はむとまうけし言葉をも忘れ、わづらはしうおぼえければ、ありしさまのことどもを聞こえつ。
→右近は薫の情人浮舟の女房。浮舟を守りお世話する立場にある。右近は薫の顔をまともに見れなかったのではないか。
③薫 あさましう、思しかけぬ筋なるに、ものもとばかりのたまはず。
→入水したなど、薫は何が何かさっぱり分からず困惑したことだろう。
④薫 いかなるさまに、この人々、もてなして言ふにかあらむ、、
→薫は匂宮がどこかに隠していると心底から思っていたのだろう。無理もない。
⑤右近 「、、、心得ぬ御消息はべりけるに、、」
薫が出し、浮舟が人違いとして返してきた手紙
波こゆるころとも知らず末の松待つらむとのみ思ひけるかな
人に笑はせたまふな
→やはりこれは浮舟をぐさりと突き刺すに十分な手紙であった。
⑥右近は薫が中々来てくれなかったこと、薫に不信を持たれているようで浮舟が精神的にまいってしまってた様子などを語るが匂宮とのことには触れることができない。
⑦薫は右近に匂宮のことを詰問する。
また人の聞かばこそあらめ、宮の御事よ、いつよりありそめけん。
、、なほ言へ。我には、さらにな隠しそ
→今頃になって躍起になっても「事遅し」ですぞ、薫の大将!
⑧右近は自分の失態の負い目も感じつつ薫に浮舟と匂宮のことを語る。
但し、それよりほかのことは見たまへず。
→密通があったこと、その有様などは言い出すことができない。当然であろう。
⑨右近の話を聞いての薫の心内
、、、わがここにさし放ち据ゑざらましかば、いみじくうき世に経とも、いかがかかならず深き谷をも求め出でまし、といみじううき水の契りかなと、この川の疎ましう思さるることいと深し。
→色々あった宇治の里、結局宇治川は恐ろしかった!
⑩薫 われもまたうきふる里を荒れはてばたれやどり木のかげをしのばむ
→もうこれで宇治との縁も切れるのか。薫の感慨。
⑪骸をだに尋ねず、あさましくてもやみぬるかな、いかなるさまにて、いづれの底のうつせにまじりにけむなど、やる方なく思す。
→浮舟は亡くなってしまった。やはり私には心を通わす女人との恋は似合わなかったのか、、、薫は仏道への思いを新たにしたのだろうか。
そりゃそうでしょうよ、真っ先に訪れるのが筋ではないでしょうか?
女房右近、多少なりともやましさを感じ虚実織り交ぜてそれとなく薫を非難しながらも 弁解がましく薫に 事の成り行きを説明。
宇治との縁もこれで尽きるのだろうか・・・
八の宮、宇治の姫君たちに宇治川を重ね薫の感慨は深いものがあったのではないでしょうか。
薫は一体何を求め何処へ行こうとしているのかその心内は・・・?
ありがとうございます。
薫は浮舟が亡くなったと聞いても信じられず「きっと匂宮がどこかに隠したのだろう」と一面白けた気持ちも持って宇治を訪れたのでしょうか。
→後10日も経てば匂宮が連れ去ってたかもしれないので薫の推測は当たってなくはない。
右近の話を聞くに(右近は匂宮と浮舟が契っていたとは言わなかったが)匂宮が浮舟にアタックしてたことは確認できた。浮舟は自分からのプッシュもあり行き詰って身を投げたことも事実らしい。
そこで薫の推測:
宮をめづらしくあはれと思ひきこえても、わが方をさすがにおろかに思はざりけるほどに、いとあきらむるところなく、はかなげなりし心にて、この水の近きをたよりにて、思ひ寄るなりけんかし、わがここにさし放ち据ゑざらましかば、いみじくうき世に経とも、いかでかかならず深き谷をも求め出でまし、、
→この推測は浮舟の心(匂宮に心を惹かれるも薫を裏切ることはできない)をドンピシャリ言い当てている。
→さすが怜悧な薫、その通りだが事件が起こってからでは遅すぎる。あの手紙を送る時点で板挟みに悩む浮舟に気づいてやって欲しかった。
右大将の薫、公務には忙しいし母女三の宮の病気のこともある。中々浮舟にまで心が及ばなかったのが正直な所かも知れません。