[右欄の源氏百首・名場面集・青玉和歌集、「浮舟」まで更新しました。万葉さん、ありがとうございました]
p16-24
2.匂宮、浮舟の死を知り、時方を宇治に派遣
〈p134 匂宮のほうでも、いつもとはひどく様子の違った〉
①浮舟から匂宮への返歌(浮舟p282)
からをだにうき世の中にとどめずはいづこをはかと君もうらみむ
→この返歌をもらった匂宮は驚いたことだろう。正に辞世の歌である。
②匂宮 「ほかへ行き隠れんとにやあらむ」
→匂宮は自殺など思いつかないので誰かが隠した、或いは自ら隠れたかと考える。
→おそらく薫がやったのだろうとピンと来たのではなかろうか。
③使いをやると浮舟は急死したとの返事、匂宮はそんなバカなとて時方を遣わす。
ややこしいので渋る時方、行ってまいれと鼓舞する匂宮
例の、心知れる侍従などにあひて、いかなることをかく言ふぞと案内せよ
→「侍従はお前といい仲なんだろう、聞きだしてまいれ!」
④「今宵、やがて、をさめたてまつるなり」
→即刻火葬する。貴族は時間をおいて行う。時方は不審に思う。
⑤侍従は浮舟が匂宮といっしょになればと思っていた。その想いから時方に言いよどみながらも無下に隠しおおすことはできない。そこへ乳母の声が聞こえる。
「あが君や、いづ方にかおはしましぬる。帰りたまへ。むなしき骸をだに見たてまつらぬが、かひなく悲しくもあるかな。、、、」
→亡くなったのではない、いなくなったのだ、、時方は真相に気づく。
→「わが君を返して下さい!」乳母の必死の叫びが痛々しい。
⑥侍従「、、、、かの殿の、わづらはしげに、ほのめかし聞こえたまふことなどもありき。、、、、この御事をば、人知れぬさまにのみ、かたじけなくあはれと思ひきこえさせたまへりしに、御心乱れけるなるべし。あさましう、心と身を亡くなしたまへるやうなれば、、」
→薫からプレッシャーがかかり浮舟は悩みついには自ら死を選んだ。
→侍従は匂宮サイドに立って事の経緯をそれとなく語る。
⑦侍従「忍びたまひしことなれば、また漏らさせたまはでやませたまはむなん、御心ざしにはべるべき」
→匂宮とのことは誰も知らないこととして葬り去りたい。侍従(右近も)の気持ちであろう。
誰よりも先に動いたのは匂宮。浮舟への想いの順番を作者が明示しているのであろう。
万葉さん、いつもありがとうございます。
後、三首入魂の思いで頑張ります。よろしくお願いいたします。
当時の貴族社会では自死という観念はなかったのでしょうか。
誰かに隠されたのではと疑う匂の宮は宇治へ事情の詳しいへ時方を使いに出す。
やはり宮の動きは一早いですね。
あが君や・・・以下。
事情を知らない乳母のただひたすら悲痛な叫が胸を打ちます。
今日まで慈しみお育て申しその幸せを願いその日を待っていたのにどうして、どうして?
そんな思いでしょうか。
慌てふためく宇治邸の様子が目に見えるようです。
ありがとうございます。
1.改めて51首読ませていただきました。これだけ並ぶと圧巻ですね。たちまちにして各帖がよみがえります。すんなりと詠めたのもあればご苦労されたのもあると思います。偉業達成まであと3首、どうぞ頑張ってください。クールダウンでは皆さんのお気に入りベスト5、なんてのもやってみたいと思います。苦心談なども色々聞かせてください。
2.貴族たちには自死などやってはならないという規範みたいなものがあったのでしょうね。「後一週間もすれば迎えに行かねばならない、あの厳重警戒網をかいくぐるにはどうすればいいか、、、」匂宮は必死に浮舟引き取り作戦に思いを巡らせていたのでしょう。そんな中辞世のような返歌が届く。居てもたってもいられなくなったと思います。いち早く随身の時方を遣わす。さすがです。そして時方の報告を受けての匂宮のリアクションは省筆されてます。これも意図的なんでしょう。
3.この乳母、いい乳母ですよね。浮舟は母・乳母・女房(右近・侍従)と浮舟のことを慮ってくれる人たちに恵まれていると思います。そうなのに独り悩んで入水にまで至ってしまう。それだけ二人の貴公子に挟まれての悩みは深刻だったということでしょうか。