p274-280
31.匂宮、厳戒下の宇治に赴くが浮舟に逢えず
〈p118 匂宮は、「こんなふうに、いつまでも承知する様子もなく、〉
匂宮が宇治へ!緊迫の場面です。
①匂宮の所へ浮舟からの返書が来ない、、、どうしたのだろう?匂宮は不安になる。
、、、あひ見ぬとだえに、人々の言ひ知らする方に寄るならむかし、、
→思い続ける内によからぬ方へと考えてしまう。自然である。
②むなしき空に満ちぬる心地したまへば、例の、いみじく思したちておはしましぬ。
→宇治へ行く!いつもながら匂宮のすごい行動力。皇子の身ですぞ!
③心知りの男を入れたれば、それをさへ問ふ。
→厳重警戒下の宇治山荘。(近頃の官庁・会社のセキュリテイチェックも困ったものだが)
④匂宮「まづ時方入りて、侍従にあひて、さるべきさまにたばかれ」
→時方と侍従とはデキている。役得のお返しをするところである。
⑤薫の手の者で警固されており今宵はダメと言う侍従
時方「さらば、いざたまへ。ともにくはしく聞こえさせたまへ」
侍従「いとわりなからむ」
→「お前もいっしょに行こう」「そんなの無理よ」緊迫感ある会話である。
⑥里びたる声したる犬どもの出で来てののしるもいと恐ろしく、
→犬の声も田舎じみている。さぞ京の犬はおしとやかなんでしょう。
→源氏物語で犬が出てくるのはこの場面だけ(猫は重大場面に登場しますけどね)。
⑦この侍従を率て参る。髪、脇より掻い越して、様体いとをかしき人なり。
→長い髪を身体の前に回して抱える。大変なことです。
⑧山がつの垣根のおどろ葎の蔭に、障泥といふものを敷きて下ろしたてまつる。
→源氏も結構ひどい所に行っているが(末摘花の荒れた屋敷とか)匂宮にとっては初めての体験だったろう。
⑨匂宮「いかなれば、今さらにかかるぞ。なほ人々の言ひなしたるやうにあるべし」
→浮舟は心変りしたのではないか。匂宮にとってはその一点がポイントである。
⑩「火危し」など言ふも、いと心あわたたしければ、帰りたまふほど言へばさらなり。
→弓を引き鳴らし火の用心を唱えて夜回りする。武士の世界である。
⑪匂宮 いづくにか身をば棄てむと白雲のかからぬ山もなくなくぞ行く
→さすがの匂宮もなす術もない。悔しい気持ちでいっぱいだったろう。
皇子と言うやんごとなき身分にありながらいつも匂の宮の行動力はすごいですね。
浮舟恋しさ。思い立ったが吉日、とばかりです。
しかし以前とは打って変わった宇治の厳重警戒になす術もない匂の宮側。
野犬の遠吠えも一層不気味で恐ろしげである。
従者、侍従の献身的な働きも空しく泣き泣帰らざるを得ない。
浮舟の懸念がまさに現実となり薫側の警護の厳重さは相当なものだったようですね。
ありがとうございます。
匂宮の行動力、いいですねぇ。男はこうでなきゃあって思います。所が前回、前々回は容易く入り込め浮舟と逢うことができたのに厳重警戒で逢えない。匂宮は「何だこれは!」と思ったのでしょうか。
この時点で匂宮は薫が秘密を知ってしまったこと、それで厳重警戒を敷いていることを事前情報として持っていたのか、それともまだ薫が気づいているとは思っていなかったのか。。。浮舟から返書が来ず何かおかしいなとは思ったもののまだ薫にばれたとは思っていなかったのかもしれません。
とにもかくにも匂宮は薫側の厳重体制を目の当たりに見た。28日に迎え取る予定だが具体的にどうするつもりなのか。浮舟に「大丈夫だ、心配するな、オレに任せておけ!」と心強いメッセージを送り、浮舟略奪プロジェクトをどう遂行するか綿密な計画を立てる。。。行動する皇子=匂宮にできるのでしょうか。
ここは描写が細かくてリアルで読者がその場にいるように感じさせますね。
侍従の長い髪の扱い様もていねいに描写されていて、緊急の場合、女性はこのようにしたのだと、理解できました。
時方の侍従に対する扱いも優しくていいですね。「わが沓をはかせて、みずからは供なる人のあやしきものをはきたり」 こうでなくてはね!
匂宮にとっては生まれて初めての恐怖を感じたことでしょう。
読者にとっても緊迫感のある部分です。
ありがとうございます。
本当に細かく書かれた緊迫感のある場面でいいですねぇ。
時方はいやがる侍従をなだめたりすかしたりすねたり甘えたり。やっとのことで侍従を連れ出し匂宮の所へ連れて行く。甲斐甲斐しく付き添って連れて行く様が微笑ましいですね。
髪のこと(女房たちの髪もお姫さま同様長いのですね。洗髪も大変でしたでしょうに)、沓のこともよく分かりましたね。