p258-262
26.右近、東国の悲話を語る 侍従匂宮を勧む
〈p106 直接ではないけれども、匂宮のことを〉
①右近「殿の御文は、などて返したてまつらせたまひつるぞ。ゆゆしく忌みはべるなるものを」
あやしと見ければ、道にて開けて見けるなりけり。よからずの右近がさまやな。
→右近は薫よりの文を盗み見。さすが右近ではないか。
②右近の言葉で浮舟は匂宮とのことが薫のみならず周りの者も皆知っているのではないかと考える。
→右近・侍従だけの秘密ならまだしも周囲に知れては身の処し所がない。
③右近が東国(常陸)で姉が二夫にまみえとんでもない事態に陥ったことを話す。
→後で侍従も言っているがこんな恐ろしい話を浮舟に聞かせるのはいかがなものか。
そして、「一方に思し定めてよ」(どちらかにお決めあそばせ)
→これは正論であろう。
④右近「宮も御心ざしまさりて、まめやかにだに聞こえさせたまはば、そなたざまにもなびかせたまひて、ものないたく嘆かせたまひそ」
→浮舟の心が匂宮にあることを感じている右近。匂宮の移り気を心配しつつ、それなら匂宮にしたらと勧める。
⑤侍従 「御心の中に、すこし思しなびかむ方を、さるべきに思しならせたまへ。、、、
しばし隠ろへても、御思ひのまさらせたまはむに寄らせたまひね」
→侍従は浮舟と匂宮の川向うでの情痴のさまを見知っている。浮舟の心が匂宮にあることを確信している。また自分も匂宮のフアンである。匂宮につくべしと熱心に浮舟を説得する。
⑥右近・侍従の言葉は尤もであるが所詮女房の意見である。母は介の元へ帰ってしまい今や信頼できる後見人のいない浮舟。切羽詰まった状況であります。
右近が薫の手紙を盗み見るのは女君を心配するあまりとはいえマナー違反ですよね。
東国の姉の例を話すのも心外、余計なことのように思えます。
又悩める浮舟の気持ちも察せず「一方に思し定めてよ」とはあまりにお気楽で無責任ではないかしら?
物を決めるのではないのですもの・・・
右近も侍従もそれなりに浮舟を慮ってのことでしょうが、他人事とまではいかないまでも心底浮舟に寄り添っているとは思えません。
ではどうすればいいか、冷たいようですがこれは自身で決めるより他ないように思います。
追い詰められますます孤立無援、孤独感を深める浮舟。窮地を救える道はありやなしや・・・
ありがとうございます。ハラハラするところですよね。
右近が薫からの手紙を盗み見する、確かにマナー違反でしょうね。語り手も「よからずの右近がさまやな」と野次を飛ばしています。でもこの時代姫君たちにとって女房は情報源であり相談相手であり生活の万事を面倒みてくれる存在だったのだと思います。よきアドバイザーであるには主人の心の内まで入らなければならない。即ち現実的には姫たちと女房との間にはプライバシーなどなかった(あってはならなかった)と言うことでしょうか。
私には右近と侍従は結構浮舟の心に添って事態を分析し進むべき方向を考え必死になって自分たちの意見を述べている(相談に乗っている)と思えるのですがいかがでしょう。
「一方に思し定めてよ」、、、普通に考えればまともなアドバイスだと思うのですが、これらがプレッシャーとなって浮舟が死まで考えるに至るとは右近も侍従も思いもよらなかったと言うことでしょうか。