p246-252
24.薫、随身の探索によりはじめて秘密を知る
〈p95 薫の君からのお手紙は今日もありました。〉
ここからはミステリータッチの叙述が続きます。
①浮舟の元へ薫からと匂宮から連日のように文が届けられる。
薫の文 匂宮のことを知らないので淡々と行けなくて申し訳ないが待ってて欲しいと事務的な内容だったのだろう。
匀宮の文 風のなびかむ方もうしろめたくなむ
くどくどと浮舟への恋情が書きつづられていたのであろう。
②雨降りし日、来あひたりし御使どもぞ、今日も来たりける。
→毎日のように来てれば鉢合せすることもある。
③薫の使い=随身 匂宮の使い=大内記の家の下使い
→薫の使いの方が身分も才覚も匂宮の使いより勝っている。
随身「まうとは、何しにここにはたびたび参るぞ」
使「私にとぶらふべき人のもとに参で来るなり」
→以下二人の会話が簡潔で小気味よくストーリーが進んでいく。
④随身の機転で使いは匂宮邸の大内記からだとつきとめ薫にご注進に及ぶ。
殿もしか見知りたまひて出でたまひぬ。
→薫は何かあるなとピンと来て詳しくは後で聞こうと一旦立ち去る。
このあたり久しぶりに舞台は六条院春の町(明石中宮の里邸)である。
⑤この御文も奉るを、宮、台盤所におはしまして、戸口に召し寄せて取りたまふを、大将、御前の方より立ち出でたまふ側目に見通したまひて、切にも思すべかめる文のけしきかなと、をかしさに立ちとまりたまへり。
→浮舟からの返書を読む匂宮。それを眺める薫。絵になる場面ではなかろうか。
⑥紅の薄様にこまやかに書きたるべしと見ゆ。
→紅色の手紙、これがキーワードである。
⑦随身が薫に一部始終を報告。
どんな手紙だったか? 随身「赤き色紙のいときよらなる、、」
→匂宮は浮舟からの返書を読んでいる。即ち匂宮は浮舟と何か怪しい関係にある。
→薫は鋭い勘でそう確信したことであろう。
→正月には宇治からの手紙を見て匂宮が勘を働かせた。今度は薫。
→二人の貴公子の勘ぐり合戦が続く。
⑧この段久しぶりに六条院で明石の中宮、夕霧が登場。
明石の中宮 46才 夕霧 55才
(明石の君は生きていれば65才になる。既に亡くなっていたのであろうか)
双方の使者がとうとう鉢合わせ。
事態は緊迫の様子を帯びてきましたね。
来るべきものが来たということでしょうか。
この場面のやりとり、面白いですね。
何とかごまかそうとの匂宮側に対しこれは怪しいと探る薫側。
浮舟の返書を食い入るように読む宮を見る薫の推測。
紅色の色紙が特別艶めかしく効いていますね。
随身との会話から辻褄が合う、さてはさては・・・
この辺、息もつかせぬ展開です。
源氏物語では手紙の場面が多いですね。
その手紙がもたらす物語の効果は抜群です。
読者にとっても手紙の印象は強烈に残ります。
そう言えば明石の君には触れられていませんね。
すでに亡き人ということでしょうかね。
ありがとうございます。
匂宮が宇治に侵入し浮舟と関係を持った。この重大事をまだ薫は知らない。いつどのように薫が知ることになるのか、そしてその時薫はどのように反応するのか。。。これが読者の一番の関心事であった訳ですが実に見事にストーリーを運んでいますね。またしてもきっかけは手紙、登場人物の動きが必要かつ十分に(冗長にならず簡潔明瞭に)説明されておりテンポよく読むことができます。
薫にとって寝耳に水。驚いたでしょうね。「えっ、まさか、信じられない、あり得るかも、しまった、、、」色んな気持ちが交錯したことでしょう。詳しくは明日になります。
この箇所のテンポいいですね。どんどん先が読みたくなります。
男の召使いや女房たちの機転、勘の良さ、気働きなどを主人側はしっかりとつかんで要所、要所をおさえるべきですね。
身分は低くても皆貴族、使われる者はまた使うものでもあったわけで、絞込みは難しいけれど、一応主たる登場人物に仕えるものに限定して、54帖の中で、男の召使いベスト3、女房ベスト3 も考えてみませんか?
読者にもいろいろ好みがあって面白いと思うのですが、どうでしょう?
ありがとうございます。
1.召使いや女房たちの機転、極めて重要だと思います。本段も別に薫の指示で随身が動いた訳でなく随身が自らの機転と才覚で怪しいと思ったことを探り主人(薫)にご注進しているのですね。「宇治から赤色の手紙(返書)を持った使いが匂宮邸の大内記にそれを渡しました」身分柄それ以上の出しゃばったことはできない。でも家臣としては十分お役目を果たしたということでしょう。当然主人に目をかけてもらいたいが一心でしょう。信賞必罰・成果主義、徹底していたことでしょうね。
2.面白いご提案ありがとうございます。10-12月の3カ月はクールダウンとしてそういうランキングなどもご一緒に考えようと思ってリストアップし始めたところです。テーマ・項目などドンドン提案してください。
女房ベスト3、、、二人の右近は入ってくるでしょうね。