浮舟(18) 匂宮、浮舟 川向うでの二日間

p218-224
18.匂宮、隠れ家で浮舟を耽溺の二日を過す
 〈p70 日がさし昇って軒のつららに陽の光が当たりきらめきますと、〉

 この段は源氏物語中でも一番のエロチックな場面ではないでしょうか。読んでいて「いいなあ」と顔が火照ってくる感じがします。

 ①宮も、ところせき道のほどに、軽らかなるべきほどの御衣どもなり、女も、脱ぎすべさせたまひてしかば、細やかなる姿つきいとをかしげなり。
  →紫式部にしては珍しい官能的叙述である。浮舟の身体の線が浮かび上がる。

 ②なつかしきほどなる白きかぎりを五つばかり、袖口、裾のほどまでなまめかしく、色々にあまた重ねたらんよりもをかしう着なしたり。
  →コメントは不要でしょう。

 ③この場に居合わせる随身は侍従と時方のみ。
  時方「いと恐ろしく占ひたる物忌により、京の内をさへ避りてつつしむなり。外の人寄すな」
  →とにかく匂宮と浮舟に愛の語らいの場所を確保しなければならない。時方の働きどころである。

 ④人目も絶えて、心やすく語らひ暮らしたまふ。
  →もう水入らず二人は思いのままに愛を交し合う。

 ⑤匂宮→時方「いみじくかしづかるめる客人の主、さてな見えそや」
  →外向きにはこの一行の主は匂宮でなく時方。匂宮が冷かして軽口をたたく。

 ⑥侍従、色めかしき若人の心地に、いとをかしと思ひて、この大夫とぞ物語して暮らしける
  →脚注20 侍従と時方は主人の面倒を見るかたわらちゃっかりお楽しみに及ぶ。
  →夕顔が取り殺された大事な時に惟光は屋敷から離れどこかにしけ込んでいた。

 ⑦匂宮 峰の雪みぎはの氷踏みわけて君にぞまどふ道はまどはず
  浮舟 降りみだれみぎはにこほる雪よりも中空にてぞわれは消ぬべき
  →先の薫と浮舟の歌は白々しかったがこの歌の贈答は深刻である。

 ⑧「中空」をとがめたまふ
  →確かに浮舟の心は宙に舞っている。
   (身も心も匂宮に傾いているがそれでは薫に義理が立たない)

 ⑨その裳をとりたまひて、君に着せたまひて、御手水まゐらせたまふ。姫宮にこれを奉りたらば、いみじきものにしたまひてむかし、いとやむごとなき際の人多かれど、かばかりのさましたるは難くやと見たまふ。
  →匂宮の浮舟の扱い。やはり召人でしかないのであろうか。

 ⑩かたはなるまで遊び戯れつつ暮らしたまふ。
  匂宮の行動過程
  2月某日 夜さりに宇治来訪浮舟と夜を明かす
   翌日  朝、舟で川向うの隠れ家へ移り終日情痴にふける
   翌日  昼を隠れ家で過し深更になって宇治へ連れ帰る
       そのまま匂宮は京へと帰る。
  →誠に強行軍である。さぞお疲れのことでしょう。

 ⑪そのほど、かの人に見えたらばと、いみじきことどもを誓はせたまへば、、、
  「いみじく思すめる人はかうはよもあらじよ。見知りたまひたりや」

  →匂宮の薫への対抗心は凄まじい。浮舟は窮するしかない。   

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2 Responses to 浮舟(18) 匂宮、浮舟 川向うでの二日間

  1. 青玉 のコメント:

    やはり浮舟。
    女も、脱ぎすべさせたまひてしかば、細やかなる姿つきいとをかしげなり。
    そうでしょうとも、でなければお姫様抱っこなんてできないわよね。
    源氏物語中、屈指の官能的表現で例の配役表、匂宮(木村拓哉)、浮舟(蒼井優)を当てはめてみました。
    素晴らしい映像が出来上がりました。

    以下寂聴さんの解説です。
    夜も昼もなくとめどない愛戯の痴態に女はもう男の言うままにどんな要求にも応じている。浮舟にとってははじめて知った官能の悦楽であった・・・
    何をか言わんやですね。

    なるほどこの場面、脚注にもある通り夕顔の源氏と惟光の主従関係を思い起こさせますね。

    浮舟の返歌 「中空」
    この中空、微妙ですね。浮舟の正直な心境が現れています。
    忘我の胸中と中空での彷徨い。

    方や匂宮、浮舟はただの召人扱いの存在でしかあり得ない・・・
    昔も今も変わらない究極の男のエゴですね。
    さて、次なるは?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      この官能場面、男女あるいは個人個人で感じ方が違うのかもと思ってましたが寂聴さんも青玉さんもお気に入りのようでホッとしました。

      私は匂宮が浮舟を自分の心に正直に心を込めて大事に扱っている、その優しさに心を打たれました。匂宮の情熱に応えて言うままにどんな要求にも応じてくれる(別に性的な意味だけでなく)浮舟の可愛さ、いいですねぇ。男にとってこんな女性こそ理想的であります(現実離れしているとご批判あるでしょうが)。

      匂宮が浮舟を女一の宮の女房に入れて召人にしようかと考えている、、、。確かに自分に都合のよいエゴかも知れませんが徹底的な身分社会であったこの時代、いくら匂宮が浮舟を愛していても正妻は勿論お方様として処遇することも土台無理だったのだと思います。むしろ華やかな女一の宮の女房にして自分の手元におき召人として精一杯情けをかける、、、これこそ浮舟への愛の証しではないでしょうか。

      でもその前に浮舟は薫の情人、、簡単には行きません。

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