浮舟(8・9) 匂宮、浮舟と契る

p170-179
8.匂宮、浮舟と女房たちをのぞき見る
 〈p27 匂宮は足音をしのばせて縁側へ上がり、〉

 ①浮舟が匿われている宇治山荘(新築なったばかり)
  新しうきよげに造りたれど、さすがに荒々しくて隙ありけるを、誰かは来て見むともうちとけて、穴も塞がず、几帳の帷子うち懸けて押しやりたり。
  →薫が新築した山荘。無防備で丸見え。京の豪邸とは異なる。

 ②匂宮は浮舟をバッチリ覗き見る。
  君は腕を枕にて、灯をながめるまみ、髪のこぼれかかりたる額つきいとあてやかになまめきて、対の御方にいとようおぼえたり。
  →上品で優美、中の君にも似ている。匂宮の胸はときめく(palpitationかな)。

 ③右近登場。この右近は東屋で出てくる中の君付きの女房(匂宮が浮舟を押さえつけた時に居合わせた)とは別人。この右近が今後大活躍する、
  →夕顔の右近(玉鬘を捜し出す)も重要人物であった。右近右近でややこしい。
  →この右近はガマの様相の乳母の娘である。

 ④右近と侍従(向かひたる人)、他の女房たちとの会話を盗み聞き匂宮は今浮舟が何をしようとしているのかを察知する。
  ・どこかに物詣に行こうとしている。
  ・乳母は浮舟の母の所へ行ったらしい(あのガマ女は不在である!)
  ・薫は来月の初めには来るようである。
  →これだけ聞けば匂宮には十分だったろう。

 ⑤女房「殿だに、まめやかに思ひきこえたまふこと変らずは、、、、」
  →殿は薫。女房たちも薫を浮舟の亭主(浮舟が薫のものであること)と自覚している。

 ⑥まして隈もなく見たまふに、いかでかこれをわがものにはなすべきと、心もそらになりたまひて、なほまもりたまへば、
  →浮舟をすっかり垣間見て腑抜けになった匂宮。I cannot stop loving you!!

9.匂宮、薫をよそおい浮舟の寝所に入り契る
 〈p32 眠たいと右近は言っていたので、〉 

 この段は解説不要か。匂宮になったつもりで一気に読む方が分かり易い。
 ①匂宮侵入
  右近「誰そ
  匂宮「まづ。これ開けよ
  右近「あやしう。おぼえなきほどにもはべるかな。、、」
  匂宮「ものへ渡りたまふべかなりと仲信が言ひつれば、、、まづ開けよ
  →右近は匂宮を薫と思いこむ。決めては仲信(薫の家司)の名前が出たこと。
  →匂宮は上の空になりながら機転もきく。さすが単なるスケベ男ではない。
  →匂宮は薫のふりをして中の君の寝所に侵入したことがあった(総角p156)

 ②女君は、あらぬ人なりけりと思ふに、あさましういみじけれど、声をだにせさせたまはず、、、
  いかが言ふかひもあるべきを、夢の心地するに、やうやう、そのをりのつらかりし、年月ごろ思ひわたるさまのたまふに、この宮と知りぬ。

  →夢が情交を暗示。例によってあっけない書き振りである。
  →匂宮はコトの最中も事後も浮舟に甘い言葉をかけ続けたのであろう。マメですなあ。

 ③p179脚注に「光源氏の色好みには、つねに何かの救いがあったが、匂宮には、それがない」とあるがそうだろうか。ちょっとよく分かりません。 

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4 Responses to 浮舟(8・9) 匂宮、浮舟と契る

  1. 青玉 のコメント:

    宇治の山荘は意外と安普請の造作のようですね。

    垣間見る匂宮の目から見た浮舟の容貌、また部屋の様子の一部始終が仕える女房たちの会話から察することができます。
    覗き見る宮にはこの家の事情からこれはチャンス到来と!!
    薫の夜離、あの憎らしいガマの様相の乳母は不在・・
    匂宮にとってはまたとない絶好のチャンス。

    薫になりすまして寝所に侵入とは大胆不敵ですね。
    右近もすっかり騙されたようで思い込みの怖さを感じます。
    事の最中に浮舟は全く気付かなかったのでしょうか?
    匂う宮の手練手管にすっかり 夢中になってしまったのでしょうか?
    想いを遂げた匂宮と人違いとはいえ受け入れてしまった浮舟。
    何と言うことでしょう。こんな事って有り?何だか信じられない。
    さて、その先が大いに気になるところですが・・・

    • 清々爺 のコメント:

      (月曜日から俳句仲間=式部さん、青黄の宮さんも=と2泊3日で中津川市加子母&渡合温泉に行ってました。返信遅れてすみません)

      ありがとうございます。

      思い立ち居ても立ってもいられなくなった匂宮がやっと宇治に辿り着き早速行動に移す。その一部始終が細かく描写されていて素晴らしい段だと思います。

      何故いとも簡単に右近は騙されてしまったのか。おっしゃる通り「思い込みの怖さ」だと思います。薫の夜離れが続き浮舟も女房たちも(取分け右近などは)「薫さま、どうぞ早くいらしてください!」との期待で頭がいっぱいだった。そんな時香しい貴公子の来訪。「あら、嬉し、薫さまがいらした」右近は嬉しさで疑うどころか早く浮舟の所へ案内しようと躍起になったことでしょう。人間見たいと思っているものを見るとそう思い込んでしまう。無理ないと思います。

      右近が導き入れて来た男を浮舟が薫と思いこみ恥ずかしながら受け入れたのはこれも当然でしょう。ところが男は薫ではなかった。浮舟の驚きと困惑が伝わってきます。
       →先が大いに気になるところです。

  2. 青玉 のコメント:

    中津川の加子母と言えば確かS先生のふるさとではなかったでしょうか?

    私も加子母には思い出があります。
    その昔、幼い子ども二人ととキャンプに出かけました。
    当時はまだ村、温泉の記憶はないのですが渡合キャンプ場の粗末な小屋に泊りました。
    満天の星は我がふるさとに劣らない素晴らしさでした。

    皆さん、さぞ良い句が浮かんだことでしょう!!

    • 清々爺 のコメント:

      そうなんです。俳句仲間の伝手で訪れたのですが奇しくも先生の故郷でびっくりしました。地区のコミュニテイセンターには先生の立派な絵も飾られていました。

      梅雨の最中でしたが奇跡的に行動している間は雨も降らず3日間ワイルドな生活を堪能して帰ってきました。

      温泉宿の手前に渡合キャンプ場があり散策してきました。ホントいい所ですね。今年も東北から小学生を招き林間学習をしてもらうのだとのことでした。

      蛍も見てきました。お世話になった方に案内してもらいややシーズン終わりかけということで蛍の乱舞とは言えなかったですがけっこう楽しむことができました。ちょっと蛍を持ち帰り宿で蛍の巻を再現しました。光源氏・蛍兵部卿・玉鬘とキャステイングにやや無理がありました面白かったですよ。

      皆あまりにはしゃぎ過ぎて俳句のできはどうだったのでしょう。でも強烈な印象を持ち帰ってきましたから作句は今からでしょうかね。

       渡合温泉 http://www.doaionsen.jp/

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