p164-169
6.匂宮、宇治行きの計画を大内記に相談
〈p24 そう思うとひたすらそのことばかりをこの頃は〉
①賭弓、内宴など過ぐして心のどかなるに、
→賭弓は正月十八日、内宴は二十日過ぎ。匂宮が浮舟のことを聞きだした正月早々から3週間ほど経っている。この間匂宮は色々と考えていたのだろう。
②この内記は、望むことありて、夜昼、いかで御心に入らむと思ふころ、、
→大内記、昇進を願って匂宮に気に入られようと必死。
③匂宮「いと難きことなりとも、わが言はんことはたばかりてむや」
「かの宇治に住むらむ人は、はやうほのかに見し人の行く方も知らずなりにしが、、」
→難しい仰せごとの方が点数を稼げる。大内記は畏まって承る。この辺巧み。
④かへすがへすあるまじきことにわが御心にも思せど、かうまでうち出でたまへれば、え思ひとどめたまはず。
→やり過ぎだとの自覚はあるもののもうやめられない。これぞ色好みの衝動ならん。
7.匂宮、大内記の案内により宇治に赴く
〈p26 お供には、以前中の君に通った時もお供をして行って、〉
①お供は気心の知れた陪臣のみ。大内記がリーダー。
さては御乳母子の蔵人よりかうぶり得たる若き人
→これがこれから活躍する時方。五位になったばかり若い張り切りボーイ。
②出で立ちたまふにつけても、いにしへを思し出づ。
→「そう言えば薫と計らって中の君の所へ押しかけたなあ」2年半前になる。
③法性寺のほどまでは御車にて、それよりぞ御馬には奉りける。
→京の町中は牛車でそれから馬に乗り換える。
④急ぎて、宵過ぐるほどにおはしましぬ。
→宵は午後10時まで。6時に出たとして4時間ほどか。それにしても遠い。
浮舟を求めて居ても立ってもおられない匂宮。この情熱には恐れ入り奉ります。。
即、行動と思いきやしばらくの間あれやこれやと作戦を練っていたのでしょうか。
思い立ったら矢も楯もたまらない、まんざら知らない土地でもないし、ここは進むしかない、匂宮らしいですね。
ここでの大内記、内心の煩わしさを隠しては張りきったことでしょうね。
頼む宮と大内記の駆け引き、上手いですね。
さて準備万端の宇治行。
牛車から馬に乗り換え、野越え山越え御苦労な事です・・・
道中さまざまな思いが去来しているようですが女への好奇心が勝っている。
もう逢うしかない
寝殿の南面にぞ灯ほの暗う見えて、そよそよとする音する。
いよいよです、宮もドキドキ心ときめき高揚していることでしょう。
読者にも緊張感が伝わります。
ありがとうございます。
何のかんの言っても京から宇治へは遠い道のり。匂宮は世にときめく有名人、今回の宇治行きは誰にも知られてはならない。今までの宇治行きはいつも薫が絡み、同行したりアレンジしたり万事薫の協力で事が進んでいる。今回は薫に知られることは絶対避けねばならない。全てお忍びで近習のものたちだけで成し遂げなければならない。
→こういうのを「ミッション・インポッシブル」と言うのでしょうか。
これまでの匂宮の宇治行を振り返ってみました。
①K23年2月 初瀬参りの帰途、夕霧の宇治山荘に中宿り、八の宮山荘と歌を贈答(椎本1)
②K24年8月 薫の手引で宇治へ。中の君と契る。その後3日続けて中の君の所へ通う(総角10~)
③K24年9月10日 薫と同道し宇治へ(総角19)
④K24年10月 紅葉狩りと称し宇治へ、中の君と逢えず(総角22)
⑤K24年12月 大君の死後雪の中を弔問、中の君逢わず(総角40)
⑥K27年1月 今回です。2年数ヶ月ぶりになります。