p160-164
5.匂宮、大内記から薫の隠し女のことを聞く
〈p20 匂宮は、御自分の部屋にお帰りになりますと、〉
①匂宮「あやしうもあるかな、、、かやうの人隠しおきたまへるなるべし」
→匂宮はさっき見た手紙で全てを察したのであろう。
・あの時の女は中の君に連なる女性であろう。
・中の君は薫にあの女を斡旋し薫は隠し女として宇治に匿っているのであろう。
→この瞬間匂宮は「それは捨ておけない。何としても我が物にしよう!」と決心したのではないか。薫への対抗心が大きいか。
②匂宮は部下の大内記を召し寄せ宇治の女のことを聞きだす。
大内記(式部少輔道定)= 匂宮の部下。漢籍の専門家で匂宮のアドバイザー。昇進を望み匂宮命と考えている。嫁さんの父親(仲信)が三条宮(薫邸)の家司、従って薫邸のこと・薫の動静はこのルートで全て匂宮に入って来る。
→匂宮は世間知らずの皇子ではない。なかなか大した男である。
→大内記のような人物を登場させるのが何とも上手である。
③匂宮が大内記に色々しゃべらせて核心を聞きだしていく手順が素晴らしい。読者も大内記の言葉(宇治の現場にいる下人たちの言葉として)で薫の浮舟の扱いの様子を知らされる仕組みになっている。
女をなむ隠し据ゑさせたまへる、けしうはあらず思す人なるべし
京よりもいと忍びて、さるべきことなど問はせたまふ
→いとうれしくも聞きつるかな 匂宮はしてやったりと思ったことだろう。
④匂宮の心中
「いかにしてこの人を見し人かとも見定めむ、かの君の、さばかりにて据ゑたるは、なべてのよろし人にはあらじ、このわたりには、いかで疎からぬにかはあらむ、心をかはして隠したまへりける」も、いとねたうおぼゆ。
→脚注14は重要
「薫め、中の君と計らってあの女を宇治に隠しおったな。仏道修行に忙しいなどと紳士面しおって。中の君もオレが目をつけた女と知りながら薫の肩を持つとは何たることだ。ひょっとして薫と通じているのではないか、あの子も本当にオレの子かわからんぞ。ええい、忌々しい、このままではすまされまいぞ!」
→妬み、羨みよりも怒りが一番大きかったのではなかろうか。
匂宮の憶測が憶測を呼び疑いは果てしなく続くようです。
部下の大内記の証言や周辺の事情から確信を得たことでしょう。
巧妙な探り方など情報収集に長けていますよね。
こう言う性格の男、どこかで多分小説か歴史的人物?でも巡り合っているような気がするのですが思い出せません。
こんな人物に皆さん心当たりありませんこと?
探偵か戦国の密偵向けじゃないかしら?
なにかにつけ薫には負けられない競争心がよけい煽られたことでしょう。
この薫への対抗心が匂宮の行動原理のすべてあるような気がします。
いとねたうおぼゆ
匂宮、ほぼ事実が解明された安堵とその一方、薫と中の君に裏切られたと言う怒りでいっぱいだったでしょうね。
さてその怒りの矛先は?
ありがとうございます。
1.謎を解いていく手法、正しくミステリー小説タッチだと思います。世界最古の長編小説の中で既にこのようなタッチが用いられていることに驚嘆します。薫邸のことなら何でも知れる立場にある大内記。匂宮には強い味方ですが薫はそのこと(自分の家司の娘婿が匂宮に仕える大内記)を知らなかったのでしょうか。
→まさか匂宮が浮舟を狙っているとは思ってなかったのでそこまで考えてなかったのかも知れません。
2.大内記「通ひたまふことは、去年の秋ごろよりは、ありしよりもしばしばものしたまふなり」
浮舟1.2のコメントで薫は「9月以来一度も宇治へは行ってないのかも」と書きましたがそうでもないようですね。むしろ頻繁に通っているような感じです。それなら薫が悠長に構えていたとの批判は当たらないし、浮舟との愛の高まりも昂じていたと思うのですが。。
→まあ一度も行ってないと言うのは極端でしょうが頻繁に行ってたと言うのは誇張で、その中間くらいだったのでしょうか。