p128-134
40.翌朝、薫、浮舟を伴って隠れ家を出る
〈p283 秋の夜は間もなく明けたらしく、〉
①ほどもなう明けぬる心地するに、、
→秋の夜長、薫には短く浮舟には長い夜だったのだろうか。
②大路近き所に、おぼとれたる声して、いかんとか聞きも知らぬ名のりをして、、
かやうの朝ぼらけに見れば、物戴きたる者の鬼のやうなるぞかし、、
→三条隠れ家、庶民的な街の朝の様子。夕顔の宿の朝の様子とそっくりである(夕顔10p220)
→夕顔の宿は五条で下町というのは分かるがここは三条、二条院にも近いし三条大路を挟んで左大臣三条邸も近い。公家屋敷街だと思うのだが。
③かき抱きて乗せたまひつ。、、、、
「人一人やはべるべき」とのたまへば、この君に添ひたる侍従と乗りぬ。乳母、尼君の供なりし童などもおくれて、いとあやしき心地してゐたり。
→女君を連れ出す場面
・夕顔をなにがしの院に連れ出す場面(夕顔p227)
・紫の上を二条院へ拉致していく場面(若紫p94)
→乳母でなく若い侍従がついていく。身分が乳母より上だったということだろうか。
④誰も誰も、あやしう、あへなきことを思ひ騒ぎて、、、
→一夜のことは省筆されているが乳母はどうしてたのだろうか。性急にも薫と契ったと聞いてどう思ったのだろうか。(ここはスンナリ流しましょう)
⑤弁「宮の上聞こしめさむこともあるに、、、」
中の君にはどう言えばいいのか、、そんなこと後でいい。
→薫も大分はっきりしてきましたね。
41.宇治への道中、薫、弁の尼共に大君を思う
〈p284 近所へ行くのかと思ったら、〉
①近きほどにやと思へば、宇治へおはするなりけり。牛などひきかふべき心まうけしたまへりけり。
→宇治に連れて行く。勿論薫の計画通りである。
②若き人はいとほのかに見たてまつりて、めできこえて、すずろに恋ひたてまつるに、
→侍従は薫に恋こがれてボォ~っとしている。さもありなん。
③君ぞ、いとあさましきにものもおぼえで、うつぶし臥したるを、「石高きわたりは苦しきものを」とて、抱きたまへり。
→浮舟にとっては初夜。ショックで震えていたことだろう。道はガタガタの石ころ道。薫がヒシと抱きしめる。
④山深く入るままにも、霧たちわたる心地したまふ、、
川霧に濡れて、御衣の紅なるに、、、
→山霧と川霧。道行きの描写であります。
⑤長い道中、浮舟を労わる薫
をかしきほどにさし隠して、つつましげに見出だしたるまみなどは、いとよく思ひ出でらるれど、おいらかにあまりおほどき過ぎたるぞ、心もとなかめる。
→浮舟の様子は控えめで大人しくて薫も気に入ったのでは。勝気じゃ困りますもんね。
三条にもこのような庶民的な場所があったのですね 。
かき抱きて乗せたまひつ。
薫、いつになく積極的ですね。この調子でいきましょう!!
行く先は当然宇治でしょう。
薫にとってあくまでも浮舟は大君の形代なのでしょうか?
宇治までの長い道中の様子がそれぞれの心境と共に描写されています。
弁の気持ちも亡き大君を偲んで複雑ですね。
事情を知らない侍従だけが何とも納得ゆかぬ思いのようです。
頼りなげな浮舟を思いやって労わるも心の内は大君への追慕で満たされない。
これでは浮舟も浮かばれませんね~
さて宇治では何が待っているのやら・・・
ありがとうございます。
薫は前夜忍んで来る時から浮舟を宇治に連れ出し匿おうと計画していたのでしょう。ただ浮舟がどんな女性なのか一抹の不安はあった。ところが契ってみると容貌も大君にそっくり、人柄やしぐさも控えめで可愛らしい。宇治に匿って時々通い大君を偲ぶよすが(形代)としよう。宇治には弁の尼もいるし新しく建てた屋敷に住まわせ法の友だった八の宮のこと、ついに心を通わすことがなかった大君のことを思い出すようにしよう。そうすればいつも心の休まらない都の表の世界(正妻女二の宮とのこと忙しい公務)の気苦労からも癒されるのではないか、、、、。薫はそう考えたのではないでしょうか。
(浮舟の身分だからこそ思うがままに振舞えたのでしょう)