p95-101
29.浮舟、中の君に対面して慰められる
〈p254 こちらの妹君は、ほんとうに御気分がお悪く〉
①中の君からの招きに躊躇する浮舟。乳母がチアーアップして参上させる。
乳母「御前にて慰めきこえさせたまへとてなん。過ちもおはせぬ身を、、、」
→乳母は自分が浮舟の純潔を守り通したとの自負がある。
②浮舟の描写
いとやはらかにおほどき過ぎたまへる君にて、、、
上をたぐひなく見たてまつるに、け劣るとも見えず、あてにをかし。
→従順で鷹揚。中の君に劣らず気高く美しい。
③中の君付きの女房のささやき
「これに思しつきなば、めざましげなることはありなんかし」
匂宮に目を付けられたらもう最後、宮は放っておかない。
→何とも恐ろしい話である。
④中の君「いとよく思ひよそへられたまふ御さまを見れば、慰む心地してあはれになむ」
→亡き大君に瓜二つの浮舟を見て中の君も懐かしい思いがしたであろう。
⑤浮舟「年ごろ、いと遥かにのみ思ひきこえさせしに、かう見たてまつりはべるは、何ごとも慰む心地しはべりてなん」
→従順な浮舟、高貴な姉に慰められて嬉しかったことだろう。
30.中の君、浮舟を哀れむ 女房たちの推測
〈p257 中の君は女房に物語絵などを持ち出させ、〉
国宝源氏物語絵巻 東屋(一)の場面
①絵など取り出でさせて、右近に詞読ませて見たまふに、向ひてもの恥ぢもえしあへたまはず。
→右近が詞書を朗読する。中の君と浮舟が向かい合って物語絵を眺めている。
これが当時絵物語を読むスタイルであったのだろう。
②見るほどに大君に似ている浮舟。中の君は絵よりも浮舟の顔に見入る。
→大君と浮舟が父(八の宮)似、中の君は母似
③中の君の目から見た大君と浮舟の比較
大君 かれは、限りなくあてに気高きものから、なつかしうなよよかに、かたはなるまで、なよなよとたわみたるさまのしたまへりし
浮舟 これは、まだ、もてなしのうひうひしげに、よろづのことをつつましうのみ思ひたるけにや、見どころ多かるなまめかしさぞ劣りたる、ゆゑゆゑしきけはひだにもてつけたらば、、
→まだ貫録の点で大君が勝るが重々しささえつけば薫とでも不似合ではなかろう。
誉め言葉である。
④口さがない女房たち、まだ匂宮との昨日のことを詮索している。
「かひあるべきことかは。いとほし」
「事あり顔には見えたまはざりしを」
→女三人で姦しいとはよく言ったものである(失礼!)
躊躇する浮舟、乳母の励ましで中の君と対面。
姉の夫に言い寄られた身としては何もなくても肩身の狭い思いだったでしょうね。
浮舟の様子が右近や女房の目を通して美しく描かれていますね。
そんな妹を目の当たりして中の君も亡き父宮や大君を思い出して懐かしくまたいじらしくも思えたでしょうね。
中の君から見た浮舟の様子もしみじみと好意をもって描写されています。
ここは母こそ違え血のつながりを感じさせる場面ですね。
「逢ひても逢はぬやうなる心ばへにこそうちうそぶき口ずさびたまひしか」
詮索好きな女房たちのひそひそ話。
いつの世も女の噂話は口さがないですね。
ありがとうございます。
匂宮と浮舟との事の次第(強姦未遂)を知った中の君はどんな思いだったのでしょうねぇ。当時の考えからすれば自分の夫とはいえ何ごとも許される皇子が異腹の妹に手を出した、、、そんなことでは騒げないし怒っても仕方がない。でも宮はこのまま収まる筈はないし薫が知ることになったら一悶着あるだろう、、、。浮舟には幸せになって欲しいけど厄介なことになりそうだ、、。という感じでしょうか。
中の君の性格かも知れませんが匂宮に対しても浮舟に対しても嫉妬心などはあまり感じられません。