宿木のまとめです。
和歌
97.また人に馴れける袖の移り香をわが身にしめてうらみつるかな
(匂宮) 匂宮・中の君・薫 トライアングル
98.やどり木と思ひいでずは木のもとの旅寝もいかにさびしからまし
(薫) 弁の尼と宇治の昔をしのんで
名場面
99.寄りゐたまへる柱のもとの簾の下より、やをらおよびて御袖をとらへつ
(p139 薫、人妻中の君に迫る)
100. かの人の御移り香のいと深くしみたまへるが、、、あやしと咎め出でたまひて
(p150 匂宮「う~ん、匂うぞ!」)
101. 腕をさし出でたるが、まろらかにをかしげるなるほども、、まことにあてなり
(p236 薫、宇治で浮舟をかいま見)
[宿木を終えてのブログ作成者の感想]
宿木を終えました。長かったですねぇ。お疲れさまでした。
(総角の時も全く同じこと書いています)
二条院に迎え入れられた中の君を挟んでの匂宮と薫。三人の心の動きが長々と書かれています。匂宮は夫であるが中の君の身の廻りのこと(経済的後見)には気が回らない。正式に結婚した六の君の六条院にも通わなければならない。薫は後見人は自分しかいないとの強烈な思い(偏執的)から頻繁に二条院に出入りし中の君にさまざまに絡んでいく。当然匂宮は薫を疑い警戒しだす。
薫が中の君に迫るものの腹帯を目にして思いとどまる場面(23・24段)は凄かった。薫の心理・行動については不可解、納得できないなど否定的なご意見が多かったですね。(さすがの青玉さんも「ほとほと嫌になります」とおっしゃってるし私も「男として失格」などと口走らざるを得ない感じでした)
この重っ苦しい状況を一転させるべく登場するのが浮舟ということでその語り出しには期待十分なものがあったと思います。
一つ「宿木」で感じたのは宇治十帖はつくづく裏のお話なんだなあということでした。宿木で匂宮と六の君及び薫と女二の宮の婚儀のことが語られていますがこちらが匂宮にとっても薫にとっても表の世界であり、宇治の姫たちとの話は裏の世界なのだと思いました。匂宮が宇治から没落親王の遺した娘を連れてくる或いは薫が宇治の姫に懸想をしてたらしいなんてことは帝や中宮はじめ京の殿上人からすればどうでもいいことだったのでしょう。でも匂宮も薫も裏の世界(宇治の姫たちとのこと)の方が心の重要部分を占めている。人間には表に見えない裏の世界があるということかと思います。
もう一つ、匂宮と薫の宇治の姫たち(今後の浮舟との話も含め)との恋愛劇は「あやにくな恋」なのでしょうがこの恋は表の世界には影響しないあくまで匂宮・薫の内面での話だと思います。それに引き換え源氏の「あやにくな恋」は藤壷との不義といい(冷泉帝が生まれる)、受領の娘明石の君との結婚といい(姫君が生まれやがて国母となる)表の世界に直接つながって行く話でした。源氏物語正編&宇治十帖、それぞれに違った観点から興味深いものだと思いました。
(今週末から金曜日まで新潟・富山・金沢・福井に行ってきます。奥の細道の終盤部分です。予定投稿はしてありますが返信は遅れるかと思います。ご容赦ください)
この上ない最高の栄誉に欲しながらも満たされない、しかも今のわが身の栄誉を自負する薫の性格の複雑さ。
匂宮と中の君そして薫、三人三様の心の動き。
これでもかと思うほど執拗に描かれた宿木でした。
表舞台の裏にはこのような物語が繰り拡げられていたのですね。
光と影とでも言えましょうか。
影があってこそ光も浮かんでくるように影には深いものがありそうです。
そこへもって今か今かと待ちわびた浮舟の登場。
物語の局面が一気に変化して読者も興味津々。
かいま見る薫の息遣いが伝わってくるような細やかな観察です。
この運命的な出会いはなるほど若紫、玉蔓を想像させますね。
さて新婚の薫、この後の物語の行方が気になるところです。
深山木に宿る蔦の葉朽ちもせず
宇治の山里色褪せずして
ありがとうございます。
本当にお疲れさまでした。宿木を終えこれでやっと私たち読者も八の宮の呪縛&大君の呪縛から解き放たれるのではないでしょうか。だらだらと続く山道を登って来てやっと視界の開けるトレッキングコースに出たって感じでしょうか。薫の逡巡はまだまだ続きそうですが何せ浮舟が登場しますからねぇ。楽しくなると思います。
そしていよいよ第四コーナー、気合いを入れて読み進めたいと思っています。物語が激しく展開します。どうぞ思う存分コメントしてください。
宿木の歌、お見事です。蔦が宇治の姫たちの象徴というのは言い得て妙だと思います。誰かに縋ってしか生きていけない薄幸の女性。中の君そして浮舟には何とか幸せになって欲しいものです。
宿木読み終えることができました。
清々爺と青玉さんのやり取り、いつも興味深く楽しく拝見しています。また今回の青玉さんの締めの歌もいいですね。
薫が、大君と中の君ともに対しはっきりとした行動に出れずイライラさせられ続けた分は、これからの浮舟に対する薫の暴発的攻勢への伏線であると期待し(チト無理かな)、東屋以降を読んでいきたいと思います。
もうひとつ、女二ノ宮が薫をどう思いどう受け止めているのか、これから何らかの描写があることに期待しています(これも表の世界はあまり出てきそうにないようで無理かな)。
歌では
今朝のまの色にやめでんおく露の消えぬにかかる花と見る見る
(P84 薫)
と
消えぬまに枯れぬる花のはかなさにおくるる露はなほぞまされる
(P90 中の君)
がよかったです。
清々爺へ
このペースで行くと7月末からお盆あたりで、最後まで読めそうですが、そんな感じですか?
奥の細道を訪ねての越後・北陸の旅いいですね、酒よし、お湯よし、魚もうまいところ、ゆっくり楽しんできてください。
ありがとうございます。ややこしい宿木もキチンと読まれたようで素晴らしいです。
ハッチー撰で取り上げられてる二つの歌、いいですねぇ。
はかない朝顔に大君を偲び、大君を介して薫と中の君が心を近づけ合う。そんな感じでしょうか。匂宮の登場がなかったら薫と中の君は案外うまく行ってたのかもしれませんね(大君が亡くなっての話ですが)。
女二の宮が薫をどう受けとめるのか(六の君と匂宮も同様)、表の世界も書いて欲しいですよね。まあ源氏時代の波乱万丈は無理でしょうが。
今後の予定については上の固定ページにある進捗予定表を見ておいてください。これまでしんどかったですが6,7,8月はページ数も少なくランラン気分で読んでください。9月はちょっと多いです。何れにせよ予定通り9月末で読み終えたいと思っています。
→勿論余裕ある時にドンドン進んで読まれたらいいと思いますよ。
◆この帖は、色々文句(?)も言いたいし、批判も投げつけたくなる。
構成的にも繰り返しが多いし、叙述も過説明。
でも、これは源氏物語の第二部、或いは後編と割り切れば
STORYの展開は激しく、文章も、とても丁寧な物語に
なっていると思います。
STORY、それは清々爺のコメントに尽きる気がします。
こんなに上手く言い表す清々爺の才能に感服です。
QTE
薫は臣下だが将来を一番嘱望された貴公子
(一世代前の夕霧に匹敵しよう)。その貴公子には
帝の寵愛する第二の姫君との縁談が進む。
一方匂宮は次の次の天皇を嘱望される第三皇子。
その匂宮には当代権勢第一の夕霧の六の君
(姫たちの内美貌も才覚も頭抜けていたのであろう)との
縁談が決定する。
表の世界の何と華々しいことでしょう。
こんな世界に住む匂宮と薫が 何故没落した宇治の姫たちに
異常なまでの恋心を抱くのか、、、それが宇治十帖でしょう。”
◆この帖で最も”ドキドキ”したのは
中の君が薫を招く一幕でした。
人妻が、こうして男を招くと言う行為の詳述は、
源氏で初めての気がしますが?
『とのたまふ声の、「いみじくらうたげなるかな」と、
常よりも 昔思ひ出でらるるに、えつつみあへで、
寄りゐたまへる 柱もとの簾の下より、
やをらおよびて、御袖をとらへつ。』
そして、この場に女房が二人近くに控えていた事、
中の君が妊娠の帯をしていた事が語られる。
こんな生々しいシーンも初めてではないでしょうか!
で、この時、結局薫は”やっちゃった”のだろうか?
そのあと、匂宮がやって来た時、
『さるは、単衣の御衣なども、脱ぎ替へたまひてけれど、
あやしく心より外にぞ身にしみにける』
とあるので やっぱりやっちゃっていたのだろうな?!
◆余談ですが。「 花心におはする宮(匂宮)なれば」と
言う文章が出てきましたが、この時代に、既に「花心」は
浮気な性質を意味していたことを知ってビックリしました。
と言うのは、20年前北京駐在の時、大流行したのが周華健の
「花心」、これは喜納昌吉さんの「花〜すべての人の心に花を〜」の
カバー曲ですが、いやぁ~、この歌でカラオケの小姐に
どれだけもてたか!
中国語の歌、是非、聴いてやって下さい。
↓
http://chinabe.blog.so-net.ne.jp/2009-08-30-2
こんな調子だから、2カ月以上も遅れるんですね。トホホ・・。
宿木、長かったでしょう。くどかったでしょう。お疲れさまでした。でも読み終えられてよかったじゃないですか。コメントありがとうございます。
1.宿木前半で椎本~総角からの宇治の大君・中の君との物語が行き詰まり、新しい物語をどう展開させるのか紫式部も悩んだのでしょう。女二の宮、六の君を全面に出して表の世界に持って行くか、、、でもそれでは面白くない。そうだ、もう一人宇治に絡んだ女性を登場させよう、、、。それが浮舟だと思います。期待して読み進めてください。
2.中の君が手紙で「さりぬべくは、みづからも」(p131)と薫を誘うところすごいですねぇ。私もびっくりしました。多分他にはないと思います。
誘いを受け飛んで行った薫、でも残念ながらここでは中の君との実事はありませんでした。省筆ではありません。「いと恥づかしと思したりつる腰のしるしに、多くは心苦しくおぼえてやみぬるかな」(p143)と不本意ながらやれなかった、、、と薫が悔しそうに述懐していますから。
匂宮が薫の移り香を怪しむ所は、「やってないのに寄り臥しただけで薫の香が移り下着を変えてもそれがとれなかった=薫の芳香はかくもすごいものなんだ」という意味です。
3.周華健の「花心」、聴かせてもらいました。いいですねぇ。私も覚えればよかった。日本語歌詞に比べ(内容は勿論だが)言葉が多くテンポも早くちょっと違った感じですね。でもこれもいい。北京の夜が思い浮かびます。