p238-244
49.薫、弁の尼と対面 浮舟の容姿に感動する
〈p184 尼君は、こちらの薫の君にも、〉
①弁が浮舟の所へ行って女房と話をする。その様子を薫は垣間見続けている。
まことにいとよしあるまみのほど、髪ざしのわたり、かれをも、くはしくつくづくとしも見たまはざりし御顔なれど、これを見るにつけて、ただそれと思ひ出でらるるに、、
→見れば見るほど大君にそっくり。声の気配は中の君にも似ている。
→浮舟が大君に似ていることがこれでもかと語られる。
②浮舟を見ての薫の心内、心情が語られるこの場面は極めて重要。
薫が今後浮舟に持ち続ける想いが集約されている。
あわれなりける人かな
かばかり通ひきこえたらん人
→大君(&中の君)にそっくり。何とも懐かしい人よ!
知られたてまつらざりけれど、まことに故宮の御子にこそはありけれ
→認知はされてないが尊敬する法の友八の宮さまの血を引く御子!
この人に契りのおはしけるにやあらむ
→この人との出会いは宿命的だ!!
薫の胸はドキドキ、息も止まらんばかりに興奮したのではなかろうか。
③源氏物語の三大女主人公登場の場面は何れも素晴らしい。(p242段末脚注)
1.北山での紫の上の登場 (若紫p22)
2.椿市での玉鬘の登場 (玉鬘p192)
3.宇治山荘での浮舟の登場 (宿木p231)
50.薫、弁の尼に浮舟との仲立ちを依頼する
〈p187 日も次第に暮れてきましたので、〉
①弁の語る浮舟とのこと。
2月の初瀬詣での時、薫のことを母に伝えた。母は満更でもなかった。
今回(4月下旬)は母は来ていない。
→頻繁に初瀬に来ている。しかも今回は母もおらず浮舟だけ。
→薫は「このオレに逢うために来たのだろう!」と胸がじ~んと熱くなったのではないか。
②薫「かく契り深くてなん参り来あひたる、、」
弁「うちつけに、いつのほどなる御契りにかは」
→弁は軽くいなしているが薫は真剣そのものであったろう。
③薫 かほ鳥の声も聞きしにかよふやとしげみを分けて今日ぞ尋ぬる
→薫の独詠、つぶやき。しみじみ「今日はいい日だなあ」と思ったのでは。
④段末脚注
薫が弁に自分の意中を浮舟に伝えるよう依頼したところでぷっつり切れている。
→「次帖に続く」「To be continued」早く次が読みたい、読者はみなそう思ったろう。
これで宿木は終わり東屋へと続き浮舟物語が本格的に展開します。お楽しみに。。
そうですよね。源氏物語の主たる女主人公たちは、北山、明石、椿市(初瀬)、宇治など都の中心から離れた場所での登場ですよね。出会いの場所というのは大切なのですね。
物語を進めていく上で、都の中心かつ寝殿造りの中だけというのでは、どうしてもお話に閉塞感があり、広がりも幅も少ないでしょうからね。
紫式部が都の外を書くときの筆は、より一層さえてきて面白くなるように感じます。
宮廷貴族たちの世界は限られているので、源氏物語では恋の行方だけでなく、知らない世界という設定にも読者の女房たちは心ときめいたことでしょう。
現代の私たちが知らない土地を旅する時のときめきも一緒ですよね。
なにはともあれ、薫のこの恋がうまくいくといいですね!
ありがとうございます。
ホント紫式部は舞台設定が上手いですよね。
山の女(北山の紫の上)vs海の女(明石の浦の明石の君)がメインストーリーの女主人公でサイドストーリーの主人公玉鬘は九州育ちで椿市で発見される。そして宇治十帖の浮舟は東国筑波育ち。。。。当時としては地方色これに極まれりってとこだったでしょうね。読者を喜ばせる筆使い、天性のストーリーテラーですね。