p188-196
33.薫、浮舟について聞き知り弁に仲介を頼む
〈p146 さて、話のついでに、〉
①弁から浮舟の事が詳しく語られる。キチンと頭に入れておきたい。
弁「京に、このごろ、はべらんとはえ知りはべらず。、、、、、かの君の年は二十ばかりにはなりたまひぬらんかし。いとうつくしく生ひ出でたまふがかなしきなどこそ、中ごろは、文にさへ書きつづけてはべめりしか」
1.八の宮が北の方を亡くした直後中将の君という女房(上臈)に手をつけた。
2.女の子誕生。八の宮は煩わしくて中将の君を以後一切近づけず。子どもも認知せず。
3.庶子誕生に懲りた八の宮はその後仏道修行に入る。
4.中将の君は陸奥守の妻となりその後夫の転勤で常陸に移り近頃京に戻った。
5.浮舟は現在二十ばかり、いとうつくしく生ひ出でたまふ
→八の宮には改めてがっかり。怒りを感じます。
あいなくわづらはしくものしきやうに思しなりて、またとも御覧じ入るることもなかりけり。
例え認知はしないまでも何かせにゃあ。やりっ放し放ったらかしは許せません。
→浮舟は誕生後すぐ地方暮らし、陸奥・京・常陸と渡り歩き今や20才。玉鬘が3才~21才まで九州で育ったことを思い出させる。
②弁「母君は、故北の方の御姪なり。弁も離れぬ仲らひにはべるべきを、、」
→中将の君は北の方の姪。藤壷と紫の上の関係と同じ。八の宮が手をつけたのもそのゆかりか。
→弁と北の方は従姉妹。従って中将の君・浮舟とも血縁にあたる。
34.薫、宇治の人々をいたわる 弁の尼との唱和
〈p149 夜が明けると薫の君は京へお帰りになりますので、〉
①晩秋の宇治 薫と弁、歌を交し合う。
いとけしきある深山木にやどりたる蔦の色ぞまだ残りたる。
薫 やどり木と思ひいでずは木のもとの旅寝もいかにさびしからまし 代表歌
弁 荒れはつる朽木のもとをやどり木と思ひおきけるほどの悲しさ
→薫は八の宮や弁といった老人と話が合う。いや合い過ぎではなかろうか。
35.薫、宇治の邸の件で中の君と消息を交す
〈p151 中の君に蔦紅葉をお贈りなさいますと、〉
①宮に紅葉奉れたまへれば、男宮おはしましけるほどなりけり。
→「宮」は中の君。「男宮」が匂宮。ややこしい。
②薫から中の君へ蔦紅葉と共に文が届けられる。
→匂宮が疑うのも、中の君がドキッとするのも無理なからん。
③匂宮「よくもつれなく書きたまへる文かな。まろありとぞ聞きつらむ」
「返り事書きたまへ。見じや」
かく憎き気色もなき御睦びなめりと見たまひながら、わが御心ならひに、ただならじと思すが安からぬなるべし。
→中の君を挟んでの匂宮と薫の気持ち。私にはよく分かりません。
ここで浮舟の出自が詳しく語られ物語の新たな展開の始まりですね。
八の宮の無責任で冷たい仕打ちはまた男を下げています。
弁との唱和で初めてやどり木が出てきましたね。
宿木の意味がやっとわかり何とか私の歌も方向が決まりました。
薫からの宇治の土産の蔦紅葉と文。
一応あたりさわりなく書かれていたとは言え匂宮の性格からして疑心暗鬼にかられたことでしょう。
薫も匂宮の存在を意識しての文なのでしょうか?
何だか屈折したその心理が今いちよく解らないですね。
ありがとうございます。
1.本帖の名前「宿木」はなかなかのものですねぇ。深山木にまとわりつく蔦紅葉、何となく中の君を挟んでの匂宮と薫とのこんがらがった関係を象徴しているように思えます。和歌、楽しみにしています。
2.ここに来て浮舟が登場し出自の説明がありますがp179脚注*及びp189脚注16では橋姫執筆時には紫式部の物語構成に浮舟はなかったのではないか、ここに来て構想を変えたのではないかとされています。確かに総角や宿木は長すぎるし物語的に行き詰っている感じがします。ともあれ新しいヒロインの登場を俟って物語が面白く展開してくれればと期待する所です。