p180-188
30.薫、宇治を訪れて弁の尼に対面する
〈p140 薫の君は、宇治の山荘を、〉
①K25年9月20余日 薫、宇治を訪れる。
いとどしく風のみ吹き払ひて、心すごく荒ましげなる水の音のみ宿守にて、人影もことに見えず。
→晩秋、寂しげな宇治の様子
②宇治に残り尼修行をしている弁と語り合う。
→中の君が宇治から二条院に移ったのがK25年2月。それから7ヶ月経っている。
③弁「げにかの嘆かせたまふめりしもしるき世の中の御ありさまを、ほのかにうけたまはるも、さまざまになん」
→幸せになって欲しいと念じて中の君を送り出した尼。匂宮と六の君の結婚話を聞き「やっぱりそうか」と後悔の気持ちであったろう。
31.薫、阿闍梨と寝殿の改築のことを相談する
〈p142 薫の君は、阿闍梨をお呼びになって、〉
①阿闍梨、良きにつけ悪しきにつけ登場する。
②薫の計画
宇治八の宮山荘の寝殿を解体しその材木を阿闍梨の山寺に持って行き新しくお堂を作る。
お堂を寄進することで八の宮・大君の供養とする考え。
→阿闍梨にとって異存のある訳はない。
③八の宮山荘の領地は今は中の君の所有になっており、中の君は匂宮の妻になっているから領地は匂宮の領地と言える(p184脚注22)
→そういう理屈になるのかなあ。。。
④暦の博士はからひ申してはべらむ日をうけたまはりて、、、、
→何ごとにつけても吉日・忌日がある。ややこしい時代である。
32.薫、弁の尼を召して昔話を語らせる
〈p144 このお邸もこれで見納めかとお思いになり、〉
①夜も近く臥せて、昔物語などせさせたまふ。故権大納言の君の御ありさまも、聞く人なきに心やすくて、いとこまやかに聞こゆ。
→聞く方も話す方も何度も何度も繰り返し同じ話だろうが飽きることはなかったろう。
②弁「めづらしくおはしますらん御ありさまをいぶかしきものに思ひきこえさせたまふめりし御気色などの思ひたまへ出でらるるに、、」
→脚注10 まあ子どもを見たいと柏木が言うのは当然であろう。
→薫にはじ~んときた言葉であったろう。
③弁と語り合うにつけ亡き大君のこと今の中の君のことが頭をよぎる。
、、、、など、心の中に思ひくらべたまふ。
→大君・中の君の比較が語られ異母妹浮舟へと話が転じられる(脚注12)
久しぶりの宇治訪問、薫も弁も懐かしかったことでしょう。
様々に語りあっていますね。
八の宮の寝殿の改築、どこまでも後見の責任を果たす薫の本質はやはり真面目で優しいのですね。
弁の尼との昔がたりは薫にとっても感慨深いものがあったでしょう。
見知らぬ父、柏木のこと亡き大君のこと、今夜限りの邸と思えば名残りも尽きず夜の更けるまで語り合ったのでしょうね。
読者もちょっとしんみりです。
ありがとうございます。
久しぶりの薫の宇治行き、目的は宇治八の宮山荘の解体・改築を相談することだったのでしょうが、着いて弁の顔を見ると途端にこれまでのことが全て頭をよぎったことでしょう。自分の顔を見たいと言いながら死んでいった父柏木。改めて思い知る出生の秘密。そして宇治での日々、八の宮との交誼、大君を失った衝撃。
薫は今京で抱えている問題(中の君をどうするか)から離れリフレッシュするつもりで宇治を訪れたのかも知れませんが、来てみるとますます悩みは深まるばかりといった所かもしれません。