宿木(28・29) 浮舟の語り出し

p166-180
28.薫、中の君と対面、思いを抑えて語り合う
 〈p129 薫の君も、どうしても恋心をこらえられず、〉

 ①薫、またしても二条院中の君の所へ
  中の君「いとなやましきほどにてなん、え聞こえさせぬ」
  →薫のことが煩わしい。気分が悪いというのは口実

 ②いとほのかに、時々もののたまふ御けはひの、昔の人のなやみそめたまへりころまづ思ひ出でらるる
  →中の君の立居振舞何につけても大君のことが偲ばれる。

 ③気分が悪い、胸が痛い、、薫を避けようとする中の君
  そんな訳ないでしょう、子どもみたいにだだをこねないでと切り返す薫
  →薫はどこまで本気だったのか。薫の優柔不断さからすれば中の君を匂宮から奪い取るような大胆な行動はできっこないでしょうに。

 ④ただかばかりのほどにて、時々思ふことをも聞こえさせうけたまはりなどして、隔てなくのたまひ通はむと、誰かは咎め出づべき。
  →相変わらずの中途半端。男らしくない。後見だけならそっとしておけばよかろうに。

29.薫、中の君から異母妹浮舟のことを聞く
 〈p133 外のほうを愁いありげに御覧になりますと、〉
 
 浮舟のことが語り出される重要な段である。
 ①薫「かの山里のわたりに、わざと寺などはなくとも、昔おぼゆる人形をも作り、絵にも描きとりて、行ひはべらむとなん思うたまへなりにたる」
  →大君のことが忘れられない。宇治の山里に大君の像(木像か石像か)でも建てようとするのだろうか。

 ②死んだ人を絵や像にして供養し自らの心をも慰める。そんな習慣があったのであろう。
  →絵師に賄賂を贈らなかった王昭君の話は悲惨である。

 ③中の君「人形のついでに、いとあやしく、思ひよるまじきことをこそ思ひ出ではべれ」
  →薫が人形を持ち出したに乗じて浮舟のことを語り出す。絶妙の手順である。

 ④中の君「年ごろは世にやあらむとも知らざりつる人の、この夏ごろ、遠き所よりものして尋ね出でたりしを、、、、、」
  薫 夢物語かとまで聞く
  →薫は「え、えっっ!」と思わず膝を乗り出したことだろう。
  →読者も「よっしゃ、これは面白いことになるぞ!」と目を輝かしたことだろう。

 ⑤中の君「また、あいなきことをさへうちそへて、人も聞きつたへんこそ、いといとほしかるべけれ」
  →中の君は浮舟の出現を煩わしいこと、迷惑なことと思っている。

 ⑥宮の忍びてものなどのたまひけん人の忍ぶ草摘みおきたりけるなるべしと見知りぬ。
  →薫は真相を知った。八の宮がひそかに契った女との間にできた忘れ形見。これぞ人形の出来である。

 ⑦中の君、薫の求めに言葉少なにあらましを語る。
  「いと遠き所に年ごろ経にけるを、母なる人の愁はしきことに思ひて、、、、何ごとも思ひしほどよりは見苦しからずなん見えし、これをいかさまにもてなさむと嘆くめりしに、、、」
  →浮舟の母の登場、この母は重要である。
  →田舎に下っていたがそんなに田舎じみてはいない。

 ⑧中の君への想いは募るばかりだが突破口は見いだせない。そんな折り新しい女君の存在が耳に入る。
  →さあ、薫中納言、どうするのでしょうか。

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4 Responses to 宿木(28・29) 浮舟の語り出し

  1. 青玉 のコメント:

    言い訳、口実がまたもや延々と語られる、ほとほと嫌になります。
    匂宮から奪うなら奪う、あきらめるならきっぱりとあきらめる。
    態度をはっきりなさいませ。

    薫の気持ちを他に逸らせようと中の君の苦慮がうかがわれます。
    人形に事寄せて物語が新しい方向に転じますね。

    年ごろは世にやあらむとも知らざりつる人の、この夏ごろ、遠き所よりものして尋ね出でたりしを・・・いよいよ浮舟の登場。
    上手い進め方ですね、新しい最後の女君、どんな女性でしょう。
    中の君、苦肉の策ともいえますが薫や読者にとっても一瞬、エッ!!なにごと?という感じで新鮮です。
    もういい加減薫には飽き飽き、嫌気がさしていますもの。
    薫の今後が楽しみです。
    今までの薫を脱皮して変身できるのでしょうか?

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      読者にこれでもかとばかり薫への不快感や敵意を煽り立てる。これも紫式部のワナ(小説手法)かも知れません。もうここまで来たらあとは這い上がるしかありますまい。

      いよいよ浮舟の登場ですが中の君から浮舟のことを聞いた薫が先ず思ったのは、
        「似たりとのたまひつる人も、いかでかはまことかとは見るべき、さばかりの際なれば、思ひよらんに難くはあらずとも、人の、本意にもあらずは、うるさくこそあるべけれ」

       相変わらずあれやこれや詮索するばかりでスカッとしたところがありません。「よっしゃー! すぐにも逢ってみよう!」って目を輝かさなくっちゃ、、ねぇ。。 

  2. 式部 のコメント:

     匂宮は思ったことを後先考えず、すぐ行動に移せるタイプです。少し軽くて人間の深みまでは感じ取れません。純粋だとはいえますね。
     薫は色々ぐずぐず考えて自分のなかではベストと思われるところまで動かない。ただ相手にはその心の経過がわからないから、なんかちぐはぐで困ったことになってしまうのです。
     人間の性格は様々だからこの世は面白いし、読者も色々な反応をしながら、この物語に引き込まれてしまうのでしょうねえ。

    • 清々爺 のコメント:

      ありがとうございます。

      匂宮と薫の性格の違いおっしゃる通りです。それにしても年が経ち経験を積んでも薫は変わりませんねぇ。こういう性格の人はますますその傾向(ぐず・中途半端・優柔不断)が強くなるのかもしれません。

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