p157-165
26.薫、執心を抑えて、中の君をよく後見する
〈p122 薫の君は、こうして匂宮が二条の院に〉
①匂宮が二日も中の君の所に居続けている。
中納言の君は、かく、宮の籠りおはするを聞くにも、心やましくおぼゆれど、
→脚注16「籠り」の語感に注意。=四六時中ぴったり寄り添っている感じか。
②薫、二条院の人々の衣服が古くなっているので母に頼んで誂えてもらう。
→面倒見のいい薫。
③薫 むすびける契りことなる下紐をただひとすぢにうらみやはする
→未練がましい。嫉妬がましい。匂宮と中の君の閨房を想像して詠んだのだろうか。
④誰かは、何ごとをも後見かしづききこゆる人のあらむ。
→中の君を経済的に後見する人は薫しかいない。
→匂宮には財産はないのか。源氏は臣下に下ったので財をなすことができたのか。
⑤匂宮 限りもなく人にのみかしづかれてならはせたまへれば、世の中うちあはずさびしきこと、いかなるものとも知りたまはぬ、ことわりなり。艶に、そぞろ寒く花の露をもてあそびて世は過ぐすべきものと思したる、、
→皇子の有り様の記述。楽と言おうかつまらないと言おうか。でも現実であろう。
⑥中の君には二人の男が必要である。一人は夫としての匂宮。もう一人は経済的後見人としての薫。この後見人が後見人だけに止まらなくなるとゴタゴタが起る。
→当然である。
→匂宮・中の君は薫に助けられているが薫は二人から何のお返しも受けていない。一方的な貢献だけでは薫も辛かろう。
⑦この君しもぞ、宮に劣りきこえたまはず、さまことにかしづきたてられて、、、
故親王の御山住みを見そめたまひしよりぞ、さびしき所のあはれさはさまことなりけりと心苦しく思されて、、、、
→匂宮に劣らぬ高貴人だった薫も八の宮の感化で気配りの人間になった。
→宇治十帖は八の宮の影を引きずっての物語である。
27.中の君、薫の態度に悩みわずらう
〈p127 こうして薫の君は、やはり何とかして〉
①御文などを、ありしよりはこまやかにて、ともすれば、忍びあまりたる気色見せつつ聞こえたまふを、女君、いとわびしきことそひにたる身と思し嘆かる。
→文による薫の攻勢はエスカレートしたのだろう。
→でも和歌も省筆されている。所詮詮無いことである。
②(前述の通り)中の君には二人の男が必要である。
夫匂宮はなかなか来てくれない(夜離れが続く)。
経済的後見人薫はそれだけに止まらず何かと言い寄ってくる。
→中の君の悩みは尽きない。
薫の後見人ぶりは女性のような細やかさでよく気がつくと言うか完璧ですね。
薫を疎ましく思いながらも頼らざるを得ない中の君、難しい立場です。
誰をも傷つけずにやり過ごすことなんて到底無理でしょう。
薫も後見を引き受けた以上ここは代償を求めない無償の愛に徹すべきです。
愛すればこそ身を引くことは今の世間でもよくあることじゃないですか。
後見の見返りを求めるなんて男らしくないです。
それができないのなら最初から八の宮と約束などしないことです。
随分冷たい言い方ですが男ならそこまで考えて行動してもらいたいです。
今の薫は愛する中の君を苦しめている存在にすぎません。
ありがとうございます。
薫の未練たらしい振舞にご立腹のご様子、ご尤もです。弁護人の私もここは叱られても仕方ない所かと思います。
一つよく分からないのは、中の君には後見人がいない(薫はさておいて)と言っても住んでいるのは夫匂宮の二条院であって通い婚ではないですからねぇ。中の君付きの女房や女童の衣裳が古くなってるから新しいのを薫が調達していますがどうもその辺よく分かりません。夫の所へお嫁に行っても自分及び自分の女房やら配下のものの経済的面倒は夫でなく自分が全て見なくてはならないということなんでしょうか。二条院を維持している匂宮に経済力が全くないわけはないでしょうし。
→源氏が左大臣邸の葵の上の所へ通ったような通い婚なら全て左大臣サイドが面倒みるのは分かるんですが、、、。
匂宮は生まれながらの高貴な身分上、おそらく生活上の細々したことには気がつかないのだと思います。
生きることのすべてを周りがおぜん立てする暮らしを生まれて以来ずっと続けているわけですから仕方ないでしょうね。
そこで薫の役割が必要になってくるのでしょうか。
薫のマメさ、中君への生活上の細かい心配りは立派だと思います。
後見人の役割は十分に果たしていますよね。
実務家の薫ですが恋心(亡き大君、中君への)をすっかり拭い去ることはできないのですよね。やはり煩悩の中で生きていくのが人間なのでしょうか?
匂宮の無頓着さは源氏にはないものですね。その辺が皇子と臣下に下った者との違いでしょうか。源氏の女君たちへの心遣いには改めて感心してしまいます。
こういう点では匂宮は蛍兵部卿宮に似ているのかもしれませんね。