宿木(17・18・19) 匂宮・六の君 三日夜の儀

p120-127
17.匂宮と六の君の三日夜の儀盛大に催される
 〈p93 宵を少し過ぎた頃、〉

 ①三日夜 「夜いたう更けぬ」と女房してそそのかし申したまへど、いとあざれて、とみにも出でたまはず。
  →匂宮は六の君といちゃついている。やはり気に入ったのであろう。

 ②三日夜の盛儀の様子が詳しく語られる。
  →源氏物語中、この場面だけではなかろうか。
   源氏が女三の宮を迎えた時はどうだったのだろう。盛儀であるべきだが、、紫の上に遠慮したのだろうか。

 ③夕霧のとてつもない財力のほどが示されている。

18.薫、匂宮の婚儀につけて、わが心を省みる
 〈p95 薫の君の前駆の人々の中に、〉

 ①薫の従者「わが殿の、などか、おいらかに、この殿の御婿にうちならせたまふまじき。あぢきなき御独り住みなりや」
  →こういう人物を登場させて世間の人たちがどのように思っていたのかを読者に伝える手法、素晴らしいです。
  →自分たちもいい目を見たいとの正直な気持ちが表れている。

 ②薫は匂宮に比較しての我が身のことをあれこれ考える。
  →「匂宮は格別だが自分も捨てたものじゃない筈。帝の女二の宮をいただくこと余り気が進まなかったのだが、、まあ考えてみるか、大君に似てるかもしれないし、、」
  →大君のことを完全に忘れ去ることはできない。

19.薫按察の君に情けをかける 女たち薫を慕う
 〈p97 例によって、なかなか寝つかれませんので、〉

 ①召人按察の君との様子が挿まれている。
  明け過ぎたらむを、人の咎むべきにもあらぬに、、
  →ずっといっしょに寝ていても誰も咎めない。公認の仲である。

 ②あながちに、世を背きたまへる宮の御方に、縁を尋ねつつ参り集まりてさぶらふも、あはれなることほどほどにつけつつ多かるべし。
  →女三の宮の三条邸に薫目当ての女房たちが伝を頼って集まってくる。
  →薫の絶大なる人気のほどを語っている。

 ③薫に召人は何人もいて決して性に疎い(晩生)訳ではない。逆に性に飢えているわけでも決してない。
  →恋愛とセックスは別ものということだろうが、これだけ女性とのセックスに通じていた薫が何故大君にはコトに及べなかったのか。
  →薫は仏道修行に心を奪われていた筈。昼は仏道修行、夜は召人とベッドインなんてありですかね!!

  この段、私には色々分からないことが多いです。

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3 Responses to 宿木(17・18・19) 匂宮・六の君 三日夜の儀

  1. 青玉 のコメント:

    三日夜の儀式が事細かく描写されています。
    それでも語り手によれば「めづらしからぬこと書きおくこそ憎けれ」と略していますね。

    匂宮のいとあざれて、脚注にしどけないさま、六の君にうつつを抜かしている体をよそおう。とあるのは夕霧に対しての見せかけのように理解できますがここは本当にうつつを抜かしていたのではないでしょうか?
    六の君の魅力に心底参ってしまったのだと思いたいです。

    薫の従者「わが殿の・・・」は最もでしょう、何が不足で我が殿はと恨めしくも思いたいでしょうよ。
    薫の自負も相当なものです。
    薫、まんざら女嫌いの奥手ではないわけですね。

    脚注には召人との交情は結婚のようには出家の絆にはならないとありますがこれも何だか胡散臭いですね。
    とにかく薫という人物、ますます解らないですね。
    やはり薫は果てしない闇を心に抱えているとしか思えません。
    その深層はやはり出生にかかわると言うことでしょうか?

  2. 式部 のコメント:

    召人との交情は結婚のようには出家のさまたげにならないとは、男にとって都合のよい身勝手な理屈を作り出すものですね。
    薫は身分ある女性との正式な結婚生活に入ることにためらいがあるように感じます。
    自身の出生からか女性(人間)に対する不安、不信感が強くて、おそらく相手が誰であっても、心の底から愛することなんてできない性格なのでしょう。それは薫の内面の問題ですが、とても不幸なことですよね。
     大君は亡くなったから、いまだに執着し、より理想化されているだけで、もし大君が生存していて男女の間柄になっていたとしても、薫の性格は変わらず、大君を幸せにはできなかったでしょう。もちろん薫自身も心が解放されることはなかったと思います。こういう性格は人生を楽しむことができないでしょうね。
     身分なき従者は正直に生きられていいですね。なんだかほっとします。

  3. 清々爺 のコメント:

    青玉さん、式部さん、ポイントをついたコメントありがとうございます。

    1.三日夜の儀、関係者を招いての露顕(披露宴)これがあって世間には正式な結婚と認められる。源氏の場合葵の上&女三の宮との結婚に際しては盛大な儀式が執り行われたのでしょう(省筆されているが)。ところが紫の上の時はごく内輪で餅を食べて祝っただけ。以後なし崩し的に事実が積み重ねられ実質的な正妻にはなっていくものの紫の上にとっては正式披露宴がなされていないということが最後まで汚点として残ったのだと思います。明石の君の場合は京から離れた明石でいっしょになっただけ。京の公家社会からは「源氏が地方で手をつけた女」としてしか見られてなかったのではないでしょうか。
     →匂宮と六の君との三日夜の儀は王道を行っているものと思います。

    2.19段、召人按察の君との場面には色々考えさせられますね。こんな段なくてもよさそうなのに紫式部は敢えて本段を挟んでいるのだと思います。

     本段を読んでつくづくと薫って狡い男だなあと思いました。出生のややこしさがあって真っ直ぐには生きられないのでしょうが複雑極まりない男ですねぇ。

     表の顔は(世間的には)将来の政界を背負っていく最有望な臣下。帝の信頼厚く女二の宮との婚儀が進む。薫は女二の宮を恋愛の対象としては気が進まないが世間の羨望を受け満更でもない。「オレは世間が羨むエライ男なのだ」との強烈な心おごりがある。

     裏の顔は出生に係る内心の闇から女性との真実の心の触れ合いを求めて大君・中の君&浮舟へと心を動かす。ところが相手に嫌われることを恐れて中途半端にしか振る舞えず自縄自縛に陥らざるを得ない。
     (恋愛は先ず愛することから始まるのに相手に嫌われることを恐れて心の底から愛することができない=式部さんのおっしゃる通りです)

     そして束の間の性欲処理は当たり障りのない(拒まれる心配もないし心を通わす必要もない)召人ですます。

     勿論日々の公務は忙しく仏道修行にも励まなくてはならない。

     いやはやとんでもないややこしさです。もっとシンプルに生きなくっちゃ。

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